学校長より
洲本高等学校 学校長
越田 佳孝
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1月14日(木)、洲本市選挙管理委員会の協力を得て、洲本高校定時制「選挙に関する学習会」を実施しました。洲本市選挙管理委員会の濱田委員長、嵯峨事務局長はじめ、淡路市・南あわじ市の選挙管理委員会の方も来ていただきました。淡路市・南あわじ市の選挙管理委員会の方は、今後、島内各高校で実施する学習会のために来たそうです。淡路島内では本校定時制が最初の試みでした。
「選挙に関する学習会」では濱田委員長のあいさつの後、嵯峨事務局長から「選挙について」パワーポイントを使った講義がありました。講義では、適宜「何ページに書いています」と、当日配付した『私たちが拓く日本の未来』(総務省・文部科学省)にも触れていただき、中身が濃くなりました。特に、投票率の低下の話では、20歳代の投票率は60歳代の投票率の数の約二分の一だが、有権者数に世代別投票率をかけてみると、20歳代の投票者数は60歳代の投票者数の約三分の一になる。政治家は投票所に足を向け、一票を投じてくれる人のための政策を立てる傾向があるから、自然と若い人向けの政策が疎かになる可能性もある(資料p.24~27)、という具体的な話をしてくれました。よくわかりました。
次に模擬投票です。説明の後、架空の「淡路島市」の市長選を想定して、3人の候補者(教師)の選挙公報に基づいて、候補者演説(3分間)、選挙人名簿による確認後投票用紙を受けとり、投票記載台(本物)で記載し、投票箱(これも本物)に投じます。立会人は生徒。開票は選挙管理委員会の職員が、実際の開票要領に基づいて行います。これには私たちも興味津々でした。実際の開票作業など見たことがなかったからです。結果は洲本たかお氏の当選です。しかし、無効票が2票ありました。この無効票も教材となります。「なぜ無効なのか」説明していただきました。一つは白票(白紙)で何も書かれていません。そして、もう一つは「他事記載」です。「他事記載」とは候補者の名前以外を書いていることをいいます。実際の投票用紙には「TAKAO♡」と書かれていました。「TAKAO」だけなら「洲本たかお氏」への投票と分かり有効となります。しかし、「♡」があるため無効になったのです。勉強になりました。
選挙に関する学習会では、生徒だけではなく、私たち教師もたくさん学ぶところがありました。私は、先日の学習会で、私たち教師も生徒たちとともに、大きく二つの「学び」を経験したと思っています。一つは「未知の体験」や「未知の知識」を得ることです。それまで体験したことがなかったり(未体験)、知らなかったこと(未知)を、体験し、知ることです。先日の学習会(模擬投票)でいえば、実際に投票し開票作業を見ることによって、「無効票」について学びました。「白票」や「他事記載」で無効になった票を投じた人だけでなく、それ以外の人も、模擬投票という未知の体験を通じて選挙で投票するという意味が、具体的な体験をとおして自分のものになったことでしょう。これが一つ目の「学び」です。
二つ目の「学び」は、既知の知識や体験をもとに、自分で考え、それを批判的に再構成することによって身に付く「深く、高度な学び」です。先日は紹介できませんでしたが、2年の男子生徒の感想に次のようにものがありました。
今回の模擬選挙に参加して思ったことは、「あいまいなマニフェストには注意した方がいい」ということです。「洲本たかお」氏のマニフェストには、「高齢者や子育て世代への給付内容を適正化する」などといったことが書かれていましたが、これでは給付を上げるのか下げるのか分かりません。こういった言葉のワナに国民一人一人が注意することで、日本という国はもう少しよくなるのではないでしょうか。
元東京大学総長で政治学者の佐々木毅さんは、「学び」には四段階あると言っています(『学ぶとはどういうことか』講談社2012)。「知る」「理解する」「疑う」「超える」です。この「知る」から「理解する」を経て、「疑い」から「超える」段階に至るにつれて、「学び」が深まり、「学び」の質が高度になります。佐々木さんは、「学び」には作法がある、単に情報を「知る」段階から、「理解する」「疑う」「超える」という段階を経て、はじめて「勉強」は「学び」に発展するといいます。そして、通常、人は「知る」「理解する」段階で学んだと思って自己満足してしまいます。これは生徒だけではなく、教師もそうかも知れません。授業を、単に知識を伝える場にしていないか、「深く、高度な学び」がある場にしているだろうか ということです。「深く、高度な学び」は、それが「深く、高度な学び」であることを知っている教師によって誘(いざな)われます。それの「学び」に気付いてあげることができる教師がそばにいて、生徒は「学び」の醍醐味を自らのものにします。現在、課題の発見と解決に向けて主体的・協働的に学ぶ学習(アクティブ・ラーニング)を取り入れましょうといわれている所以(ゆえん)です。
生徒の感想から
・今日はじめてきちんと選挙について話を聞いた気がします。18歳から選挙権があるみたいですが、自分はあまりよいとは思えませんでした。しかし、今日の話は実にためになる話で聞けてよかったと思っています。実際に体験もしてみて、これから実際の選挙に行くことになっても安心していけるなと思いました。(4年女子)
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