学校長より
洲本高等学校 学校長
越田 佳孝
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4月1日。洲本高等学校定時制では4人の方が転出し、新たに4人の方をお迎えしました。新しい年度のはじめ、職員会議で学校のミッションとビジョンについて話しました。
新しい年度のはじめにあたって、洲本高等学校定時制のミッションとビジョンについて話をします。「どういう生徒を育てるか」という話です。「どういう生徒を育てるか」を話すためには、「今いる生徒はどういう生徒か?」「これまでの生徒と同じなのか違うのか?」「違うならばどういう点が違うのか?」を明らかにしておかなければなりません。
現在、学校の教育は、学校だけで完結するものではありません。保護者や地域社会、そして関係機関との協力なくして成り立ちません。保護者や地域社会、関係機関の協力をえるためには、学校が行っている様々な教育活動について、「何を行うか?」だけではなく、「なぜ、それを行うのか?」も含めて、私たち自身が自分のものにしておかなければなりません。そのためには、学校の使命、存在意義を意味する「ミッション」と、「ミッション」達成のために学校が目指す姿・形を具体化した「ビジョン」、つまり「目指す学校像」「目指す生徒像」「目指す教師像」を常に意識化し、明確に説明していけることが必要になってくるのです。
まず、淡路島の唯一の定時制高等学校である洲本高等学校定時制に与えられたミッションです。本来、定時制は、「働く青少年に高等学校教育を保障するとともに、多くの有為な人材を育成する」という目的で設置されました。定時制発足以来、68年の歴史を刻み、社会環境の変化の中で、過年度卒業者や不登校経験生徒など多様な生徒を受け入れているのが現状です。その結果、社会性や基本的な生活習慣を身につけさせると同時に、社会人として必要な基礎学力を定着させる等、定時制教育が果たす役割も変化してきています。
そういう変化に対応する、洲本高等学校定時制の取り組みをあらわすキーワードが「学び直し」です。洲本高等学校でいう「学び直し」には二つの意味があります。一つは、小学校・中学校で「学び残してきた部分」を、高校生としての発達段階をも配慮して、もう一度学ぶということです。あと一つは、何らかの理由で一度は高校を離れたけれども、やはり「高校で学びたい」「高校卒業の資格をとりたい」と考える人に、再び学ぶ機会を提供するという意味です。毎年、生活体験発表会の県大会出場者の原稿には、洲本高校定時制に出会うまで、自らの居場所、自分自身がしっくりとくる「学びの場」を求めて彷徨っていた小中学校時代の日々を、赤裸々に綴ってくれたものもあります。小中学校時代になかなか学校に行くことができなくて、やっと見つけた自分自身が落ち着いて学べる場、安心して友だちとつながることができる居場所、それが洲本高校定時制だったと語ってくれています。何らかの事情で小中学校時代学校に行くことができなかった人、一旦は高等学校を離れたけれども、やはり「学ぶこと」の大切さに目覚め、もう一度学びたいという人、そういう人にとって、洲本高等学校定時制は「学び直し」を保障する貴重な場であるわけです。そういう貴重な「学びの場」を提供することが、淡路島の唯一の定時制、洲本高等学校定時制に課せられたミッションなのです。
私は、生徒たちに、まず学校に来る、そして授業をしっかり受けて学ぶ、さらには学んだ「成果」をいかし自らの将来への道筋をつける、と機会ある毎に話し続けてきました。そして、洲本高校定時制は、その魅力・特色を「できる」「わかる」「つながる」の3つのコンセプトで説明できます。まず、学校に来れば、小中学校の時に学び残してきたものを学び直すことができる。さらには、一旦は学校を離れてしまったが、もう一度学びたいと思う人は再び学び直すことができるのです。これが「できる」です。学校に来て授業を受ければ、少人数で丁寧な先生の指導により、授業内容がわかるようになります。また、授業以外のホームルーム活動等を通じて、ソーシャルスキルトレーニングを学び、相手の気持ちもわかるようになります。これが「わかる」です。そして、体育祭、文化祭、ボランティア活動、生徒会活動等の様々な学校行事によって、友だち、先輩、先生、さらには地域の人たちとつながっていきます。そしてそういう人たちとのつながることによって視野が広まり、責任感などの意識が深まり、そのことで自らの将来に道筋がつき、自分の未来につながるのです。それが「つながる」です。こういう「できる」「わかる」「つながる」を三つのコンセプトとした教育活動を展開していくことが、「学び直し」という「ミッション」の達成のために、学校が目指す姿や形、教育内容を具体化した「ビジョン」です。
この洲本高等学校定時制のミッションやビジョンは、洲本高等学校定時制誕生のその時から、DNAのように組み込まれていたのです。それは、洲本高等学校定時制の歴史を振り返ればわかります。洲本高校の定時制は、太平洋戦争後の昭和23年10月、新しい高等学校の制度が発足すると同時に生まれました。県下で一番古い定時制です。実は、昭和23年の1月には、「働く青年のために夜間学校をつくろうという」というポスターが、洲本市内いたるところの電柱や家々に貼り巡らされ、市内全域にわたって行われた戸別訪問で集められた約5,000人の署名が洲本市を動かし、その年の6月には洲本市の全面的な支援のもと、洲本市立幼稚園を間借りして「夜間高校準備教育」が始まりました。記録では6月25日から9月25日まで授業を行っていたとあります。まだ正式に定時制が発足する四ヶ月も前の話です。この洲本高校定時制の歴史は、学校のために「学び」があるのではなく、「学び」のために学校がつくられたという、「教育」と「学び」の本質を体現しています。
学校のために「学び」があるのではなく、「学び」のために学校がつくられた。この教育と学びの本質を体現している学校が、県立洲本高等学校定時制です。その教育の原点を忘れることなく、ともに頑張っていきましょう。よろしくお願いします。
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