学校長より
洲本高等学校 学校長
越田 佳孝
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今日から3学期が始まります。新しき年は始まりましたが、あと3月までが今年度です。
お正月はいかがでしたか?私は、石川啄木の「何となく 今年はよいことあるごとし 正月の朝 晴れて風なし」(『悲しき玩具』)という心境でした。実際は風がきつかった(笑)
お正月に人と会えば「おめでとうございます」といいます。さて、なぜめでたいのでしょうか。神話学者の大林太良(国立民族学博物館教授)という方は、日本・中国はじめ東アジアの正月行事をつぶさに検討して、かずある年中行事のうちでも、多くの民族で「断然優位に立ち、中心的な地位を占めているのは正月である」と述べ、こう言っています。
新年はまさに生命が更新され、それによって人間ばかりではなく作物や家畜の豊穣性も確保される機会であり、さらに世界の秩序が回復される機会だということである。これが、新年が他の年中行事とは違う基本的な特徴なのだ。
(大林太良『正月の来た道』小学館1992)
正月は「生命が更新され」「世界の秩序が回復する」時だというのです。少し周りを見ても、12月の冬至の頃には、午後5時になると真っ暗になっていたのに、今では少し明るくなっています。日が少しずつ長くなっているのです。2月の立春の頃、節分の豆まきをする次の日ですね、に入るともっとはっきりします。その日が昔は正月でした。誰の目にもはっきりと日が長くなってきて、暖かくなってきて、生命がよみがえる日です。
また、正月の元旦と言う日は不思議な日です。大晦日から元旦へ、たった一日しか変わりません。たった一日しか変わらないのに、昨日を去年といい、今日を今年というのです。去年という昨日と今年という今日はほとんど変わっているとは見えません。そこに私たちは「すがすがしさ」「清浄感」を感じます。その「すがすがしさ」「清浄感」を感じさせるのは、正月になると暗かった世界が明るくなり、新たに生命の誕生を感じさせるからです。
日本人は、昔からこういう感覚を大事にし、そういう中で居住まいを正し、目を閉じて祈り、決意を新たにしてきました。日本人は「節目の時」が大変好きで、こういう「節目」に襟をただし、大きく成長する機会としてきたのです。その最も大きな節目が「正月」です。生命が更新され、世界の秩序が回復されるのが「正月」です。だから正月はめでたいのです。
さて、4年生にとっては、高校生活もいよいよ残り少なくなってきました。また、3年生で三修制を目指している人もそうです。卒業まであと少しです。「よい年」というのは、自然に「なる」のではなく、「する」のだということを確認して始業式の言葉とします。
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