学校長より
洲本高等学校 学校長
越田 佳孝
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今から百と十六年前、明治30年、1897年、一つの学舎、学校が、淡路島の地、まだ洲本市ですらなかった津名郡の洲本の地に生まれました。その学舎の名こそ、兵庫県洲本尋常中学校、現在の兵庫県立洲本高等学校です。
君たちが学ぶ県立洲本高等学校は、兵庫県下にあまたある他の高等学校とは違う一つの大きな特徴を持っています。それは、「設立された」とか、「創立された」、「作られた」というように「受け身形」で語ることのできない存在であるということです。それは、洲本を中心とした淡路の人々の「教育」や「学ぶこと」に対する凄まじいまでの欲求、学びに対する真摯な渇望、魂の叫びが、学校を作ろうという運動を呼び起こし、その運動の成果が実を結んで、生まれた学校だからです。しかしも、洲本高等学校116年の歴史で、そういう運動は三度もありました。
一つは、明治30年、県下で4番目の旧制中学校として、現在の洲本高等学校の一つの前身に当たる旧制洲本中学校設立の時期に。二つ目が、明治36年、同じく現在の洲本高等学校のもう一つの前身に当たる旧制県立淡路高等女学校が、県下で2番目の県立高等女学校として生まれた時です。
三つ目の運動が、今、皆さんが学ぶ洲本高等学校の定時制の課程設置の運動です。太平洋戦争後の昭和23(1948)年1月、「働く青年のために夜間学校をつくろうという」というポスターが、洲本市内いたるところの電柱や家々に貼り出されました。二十歳にも満たない少年たちの「学ぶこと」に対する真摯でひたむきな魂の叫びの運動です。<BR>
それは「学びたい」、しかし、もろもろの事情で働かなければならない。そういう少年たちの「学び」に対する渇望の声、「学ぶこと」のすばらしさを知る者の真摯な叫びでした。「働き学ぶ少年たちの運動が、定時制高校を創設する原動力となった学校は全国でも他に類がない。本校定時制の誇りである」(『世紀を超えて 洲本中・淡路高女・洲本高100年の軌跡』)という話です。
こうして、君たちが学ぶ県立洲本高等学校定時制の課程は、すべて学ぶことの大切さ、すばらしさとはどういうものかということを、身をもって知っている者自身の、心の奥底から押さえようとして押さえうることができない欲求・衝動で始まったのです。
県立洲本高等学校116年、定時制の課程として65年の歴史と伝統を誇る学校は、生徒だけではなく、これまでの洲本高等学校につらなる幾多の先人、諸先輩方すべての人の大きな努力の上に成り立っていることを忘れてはなりません。この116年、定時制の課程としては65年の歴史は、前途に一点の曇りもない繁栄の時代、平和な時代ばかりでは決してありませんでした。暗雲垂れ込め、戦乱の嵐が猛威をふるう時代、そして社会に閉塞感がみなぎり、混迷、混沌の淵に迷う時代もあったのです。
そういう時代を乗り越えてきたのは、確かにその時代時代の高い見識を持って学校を導いた方々のおかげでもありますが、それ以上に、この学校で教職員として働き、この学校で生徒として学んだ君たちの先輩が、この学校を作り上げてきた人たちの理想や夢に忠実であろうと努力し続け、本校教育の礎となる「至誠」「勤勉」「自治」「親和」を忘れずに来たからであります。
洲本高等学校は創立以来そんな学校であり続けてきました。これからもそんな学校であり続けなければなりません。私たち世代に課せられた使命は、それを受け継ぎ、さらに次の世代にそれを受け渡していくことです。それが、歴史であり、伝統であり、それを守り、伝えていくことが、今を生きる私たちの「誇り」なのです。
今日は、本校の「歴史」と「伝統」、そして「誇り」の一端について話をしました。本校の「歴史」と「伝統」、そして「誇り」について今一度確認する。創立記念日とはそういう日なのです。そして一つ決して忘れてはならないことは、「歴史」と「伝統」、そして「誇り」とは、決して他から与えられるものではないということです。それが、洲本高等学校をして洲本高等学校たらしめているもの。洲高生をして洲高生たらしめているものです。そのことを洲高生らしさ、洲高の流儀という方もいらっしゃいます。
過去を知らずして現在を語ることはできません。そして、未来を語ることは現在を生きることです。今日ここに集う私たち、もちろん先生も生徒も含めて私たちはひとしく洲本高等学校の同窓であります。「同窓」とは、同じ学校で学び、同じ師から教えを受けたことを意味します。その「学び」や「教え」は、今、現在の「学び」や「教え」だけではなく、かつてこの学校で行われていた「学び」や「教え」であり、これからもこの学校で行われるであろう「学び」や「教え」であります。それを体現しているのが校訓の「至誠・勤勉・自治・親和」です。この校訓こそ「洲高」の根底に流れている精神なのです。
私や教職員そして生徒が一丸となって、創立以来営々と築かれてきた本校教育の殿堂に「黄金の釘」を打ち加えていきましょう。応援歌に歌う「築け洲高の定時制」とはそういう意味です。今日は高らかに心を込めて一緒に歌いましょう。
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