学校長より
洲本高等学校 学校長
越田 佳孝
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7月7日(日)と13日(土)に、洲本市、南あわじ市、淡路市の3カ所で淡路地区高等学校説明会がありました。以下は、当日の私の「あいさつ」です。
今、淡路では、平成27年度入試からの学区の拡大と選抜制度の変更で、中学生とその保護者の間に「不安」が広がっています。「学区の拡大によって、神戸の高校に通うことができるようになる。その時に、このまま淡路の高校にとどまっていていいのだろうか」という不安です。また、そのような不安を意図して「煽る人」たちもいます。
保護者がいだく「不安」には2種類あります。一つは、学区の拡大と複数志願選抜の導入で、高校入試という制度がどのように変わるのかがわからないことからくる「不安」です。もう一つは、実際に高校で行われている教育がどのようなものか具体的にわからないので、何をもとに「学びたいことが学べる高校選び」をしたらよいのかという「不安」です。
最初の「入試の制度や仕組み」については、しかるべき時期に県教育委員会から詳しく説明していただきます。本日の説明会は、二つ目の「不安」を解消するために、地元の高校での「学び」や「部活動」といった教育の中味を具体的に知っていただくこととして、教育事務所にお願いして開催していただいたものです。
大切なことは、「27年度入試から学区が拡大した時に、これまでと同じように淡路にとどまっていたのでは、神戸や阪神や明石の高校に通っている子どもたちと差がつくのではないか」と不安に思っている生徒や保護者に、淡路島内の高等学校が「地元の子どもは地元の高校がしっかり受け入れ、神戸・阪神・明石の高校生たちに負けない力を生徒につけますよ」という明確な意思と力を示すことです。
今、高校は大きく変わりつつあります。皆さんが高校生であった20年近く前とは大きく様変わりしています。その一つが「授業」です。洲本高校では、先週、「生徒による授業評価週間」がありました。一週間、すべての教科・科目で、生徒による「評価」を行い、その結果に対して、教師が改善方法を提出するのです。よりわかりやすい授業づくりのためです。
保護者にすれば、洲本高校に入学すれば、どのような「学び」があり、どのような高校生活を送り、そして、どのような生徒に育つのかが最大の関心事でしょう。明治30年創立、116年の歴史と県下で4番目の伝統を誇る洲本高校には、「至誠、勤勉、自治、親和」を校訓とし、生徒の自主性を尊重してきた素晴らしい伝統があります。洲本高校では、子どもはどのように育つのか。実際に、洲高の生徒を見ていただくのが本校の教育方針にも合致し、具体的でわかりやすのです。そういう意味では、本日の説明会などは、生徒にしてもらうのが「洲高の流儀」でしょう。あいにく、本日は定期考査中ということもあり、全日制・定時制それぞれの教頭から説明いたします。洲本高校での3年間もしくは4年間の説明をしっかりお聞きいただき、学びたいことを学ぶ高校選びの参考にしていただきますようお願いします。
人が「豊かになる」には三つのことが必要だといいます。
一つは、お金・資産に、道路や鉄道といったインフラストラクチャーも含めたもので、「経済資本」といいます。経済的に「豊か」になれます。二つ目が「文化資本」で、知識や教養、技能、趣味の良さ、振る舞いの適切さ、学歴などを含めたものです。精神的な「豊かさ」を保障します。そして、三つ目が「人間関係」が生み出す力のことで「社会関係資本(socialcapital)」といいます。人と人との関係を「豊か」にします。
「社会関係資本」とは、人と人との間に存在する信頼、つきあいなどの人間関係のことを意味します。それらはなぜ資本なのかというと、私たちは見ず知らずの人に頼むより顔見知りに頼む方が、話がずっとうまくいくということを経験的に知っているからです。単に「顔見知り」であるということだけで、ものごとが格段に進むのです。そういう点から人間関係の「豊かさ」こそ、私たちの社会を豊かなものにする「資本」であると考えるのです(稲葉陽二『ソーシャル・キャピタル入門』中公新書)。
現在は少子高齢化社会。淡路島はどんどん人口が減っています。大学進学等のため、若者が一旦は島外へ出て行くのは仕方がありません。しかし、ここにいるどなたも、いずれは地元に帰って来て欲しいと思っていらっしゃるでしょう。いずれ地元に帰った時にものをいうのが、神戸や明石ではない、「地元の高校」を卒業しているという事実です。「○○高校の卒業です」、「あなたも○○高校ですか」という何気ない会話が、人々をぐっと近づけ、信頼を一気に勝ち取る働きをします。「人脈の力」、「社会関係資本」です。
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