学校長より
洲本高等学校 学校長
越田 佳孝
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今日は9月1日。今日から2学期が始まります。45日間の夏休み元気で過ごしましたか。7月15日の生活体験発表会でみなさんにお話ししてから、16日の進路講演会が中止になり、17日の1学期終業式が台風の接近による警報の発令で休校になりました。みなさんの前で話すのはそれ以来です。ほんとうに懐かしく感じます。
9月1日は「防災の日」です。1923(大正12)年9月1日に発生した関東大震災にちなんだものです。この地震はマグニチュード7.9、震度6の規模で、死者・不明者14万2,807名といわれています。海岸部では津波も発生した地震です。この日に「防災の日」が定められたのは、「災害への備えを怠らないように」との戒めも込めてのものでしょう。しかし、その後、私たちは20年前の阪神淡路大震災、そして4年と少し前に、東日本大震災に遭遇しました。「天災は忘れた頃にやって来る」は科学者の寺田寅彦の言葉だそうです。私は、こういう節目の時に「災害」について思いを新たにするのは、「想定外」などという責任逃れの「言い訳」を二度と聞きたくないためには有益でないかと思っています。
そういう予期せぬ事態に遭遇したときこそ、普段からの心構えが問われます。みなさんは、あの東日本大震災の中でおきた「釜石の奇跡」という話を聴いたことがあるでしょう。釜石市内の小中学生、ほぼ全員が津波の難を逃れたという事実です。多くの人たちはこれを「奇跡」と呼んでいます。しかし、そうではなくて、普段の教育の中で子どもたちが身につけた対応力が「想定外」を乗り越えさせたのです。それは「率先避難者になれ」という教えです。要は、「まわりにあわすな!」「まわりに惑わされるな!」ということです。
危機的な状況になるとある種の動物は、地面に穴を掘り、頭をそこに突っ込むといいます。確かに、頭を穴の中に突っ込めば周りの危機的な状況は見えなくなります。見えなくなったからと行って危機的な状況が去ったわけではないのです。私たちはこの動物を笑う立場にはありません。私たち自身が、自己の防衛本能としてこういう心理的傾向を備えているからです。根拠のない希望的観測にすがって、決断をする時間をずるずると先延ばしにしてしまう。こういうことはいつの時代でもよくあるのです。
精神科医で神戸大学医学部の名誉教授、「兵庫県こころのケアセンター」の初代所長の中井久夫さんは、「災害においては柔らかい頭はますます柔らかく、硬い頭はますます硬くなる」といっています。普段からのいかに「柔軟なものの考え方」、つまり、自分で判断し、行動する姿勢を普段から養っていくことです。それを養うのが高等学校です。
ですから、私たちは、まず学校に来ること、次に授業を受けて学ぶこと、そして学んだ成果を活かして、自らの将来の進路実現へと道筋をつけていくことが大切になるのです。本校の定時制の生徒たちは、他のどの学校の定時制の生徒よりも、あいさつをしてくれますし、学校行事では校歌・応援歌を大きな声で歌います。学校に対してそれだけ愛着を持ってくれているのでしょう。また、生活体験発表校内大会で話したように、生活体験発表会は定時制で学ぶ生徒の成長の物語です。自分のことを作文に書くことだけでも大変な作業です。それができたということは大きな成長なのです。そして、クラス大会、校内大会であれ、人前で話すとなるとなおさらです。みなさんは、洲本高校定時制で確実に成長しています。人間として、大人として成長しているのです。教えるものとしてこれ以上のうれしいことはありません。洲本高校の定時制での「学び」は、皆さんがこれから一生たくましく生きていく上での「資本」となります。2学期、さまざまな行事を経験して一回り大きく成長していきましょう。
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