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県西随想 ~県西歴史物語~


県西スタインウェイ物語

100年近い歴史を持つ県立西宮高等学校の「宝物」の一つに、1908年(明治41年)にドイツのハンブルクで作られたスタインウェイ社(Steinway & Sons.1859年創業)のピアノがあります。別子銅山など住友財閥の基礎を支えた廣瀬家から県西に寄贈され、同窓会・PTAの資金協力で長い時間をかけて修理し、2012年2月音楽科生徒により、初めてショパンの美しい音色が披露され新聞で話題になりました。
 住友を大財閥に育て日本の近代産業を発展させた廣瀬宰平は同志社の創立者、新島襄・八重夫妻とも親交があり、愛媛県新居浜市の旧廣瀬家は国の重要文化財です。宰平の孫娘・八重子さんが出産祝いに父から贈られた、この高級ピアノは、神戸で阪神大水害も神戸空襲も、そして阪神淡路大震災もくぐり抜け、21世紀の県西へ贈られました。このピアノは日露戦争直後、つまりロシア革命や第一次世界大戦の起こる前に製造され、今年107歳の歴史的なピアノです。
 さて、大阪の楽器総合店「三木楽器」は創業190年を迎え、本社ビルも戦災をくぐりぬけて国登録有形文化財の美しい建物ですが、この老舗は今年4月に「三木楽器史」という本を出版しました。関西の西洋楽器の普及や山田耕筰の西洋音楽講習など、音楽教育に貢献してきた会社ですが、1921年(大正10年)に、スタインウェイ社の日本総代理店になり、多くの学校などにこの「神々の楽器」と称賛される、世界を代表するピアノを納めてきました。今もこの総代理店の木製看板が伝えられています。この社史で各地に納品され現存するスタインウェイ社のピアノが紹介され、大阪市愛日小学校(大正10年)、宇部市新川小学校(大正12年)、親和女子高校(大正13年)、奈良県立桜井高校(大正13年)、滋賀県豊郷小学校(昭和3年)、神戸松蔭女子学院(昭和5年)などの貴重なピアノの存在がわかります。これらはハンブルクから神戸港へ運ばれたものが多いようです。奈良ホテルのピアノも大正期の製造です。これらと比べても県西のスタインウエェイが最古級のピアノだということがわかります。(近くの神戸女学院には1860年製と国内最古のスタインウェイがありますが、これはスクエア型です)。
 関西では1906年に神戸女学院音楽科(音楽部)や大阪女子音楽学校(相愛大学)が設立されるなど西洋音楽の教育が浸透し、翌年には全国のピアノ販売で国産品が輸入品を上回るなど、ピアノやオルガンの需要が大きくなりました。1908年には三木楽器は神戸支店を元町に開設します。このような時代を背景に廣瀬家は、貴重なスタインウェイを入手していたのです。県西の合唱室にあるこのスタインウェイは「音楽家の卵たちの技量を磨くのに役立ててほしい」とのあたたかい思いで寄贈していただきました。合奏室のもう一つのスタインウェイも戦後のアメリカ・ドイツ共同製作の稀少なピアノです。さあ、歴史を感じさせる県西の貴重なスタインウェイの音の響き、楽しんでください。2015年執筆(石戸信也)

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