兵庫県立洲本高等学校定時制
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学校長より

洲本高等学校 校長
 越田 佳孝

入学式式辞


待ち焦がれた桜も咲き誇り、大地に満ちあふれる春の香りと華やぎは、何ものにも替えがたいものがあります。この春のよき日に、育友会・同窓会役員の皆様をはじめご来賓の方々、保護者の皆様のご臨席を賜り、ここに兵庫県立洲本高等学校定時制の課程の入学式を挙行できますことは、私のこの上ない喜びであります。ただいま入学を許可いたしました16名の新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。皆さんを昭和23年、新制高等学校の誕生と同時に開校した歴史と伝統を誇る本校定時制の生徒として迎え入れることを、在校生、教職員一同、本当に嬉しく思います。また、今日まで、新入生の皆さんを支えてこられた保護者の皆様には、心よりお祝い申しあげます。

 

洲本高校の定時制は、太平洋戦争後の昭和2310月、新しい高等学校の制度が発足すると同時に生まれました。県下で一番古い定時制です。実はそれ以前にも歴史があります。昭和23年の月、「働く青年のために夜間学校をつくろうという」というポスターが、洲本市内いたるところの電柱や家々に貼り巡らされた運動です。二十歳にも満たない少年たちの運動でした。市内全域にわたって行われた戸別訪問で集められた約5,000人の署名が洲本市を動かし、その年の月には洲本市の全面的な支援のもと、洲本市立幼稚園を間借りして「夜間高校準備教育」が始まったのです。記録では25日から25日まで授業を行っていたとあります。まだ正式に定時制が発足する四ヶ月も前の話です。

 

こうして正式に高等学校という制度が発足するヶ月も前から、洲本市立幼稚園に間借りして、洲本高等学校定時制の教育が始まりました。洲本市立幼稚園を間借りして始まった「夜間高校準備教育」で学んでも、何らかの試験に受かるわけでもありません。高校卒業資格が得られるわけでもありません。ましてや、他の誰かから賞賛されるわけでもありません。ただただ、純粋に勉強がしたい、学びたい、そういう少年たちが集って作り上げた「学びの場」、それが、今、皆さんが入学してきた洲本高等学校定時制の母体となったのです。まさに学校のために「学び」があるのではなく、「学び」のために学校がつくられた。この教育と学びの本質を体現している学校が、みなさんが入学した県立洲本高等学校定時制なのです。

 

洲本高等学校定時制には、もう一つ母体となった学校があります。それは、1897年、明治30年の創立の旧制洲本中学校です。その洲本中学校が、太平洋戦争後の昭和23年に旧制の淡路高等女学校と統合して現在の洲本高等学校となりました。洲本高等学校の教育は、旧制洲本中学校の創立以来120年間にわたり、保護者や地域の方々の協力と支援のもとに教職員と生徒諸君が互いに切磋琢磨し、営々と営まれてきました。同窓会を中心に、今年の秋には、ドラゴンクエストの生みの親で、現在もゲームクリエーターとしてトップを走られている、本校全日制24期の堀井 雄二さんを記念講演者に迎えての創立120周年記念式典はじめ様々な記念事業が準備されています。しかし、記念事業そのものに意味があるのではありません。120周年という節目の年に記念事業を行うことによって、先人たちの偉業をしのび、その苦難に思いをはせ、今、現在、その成果を享受している私たちが感謝の念を捧げ、先人たちの営みの延長線上に洲本高等学校の未来を描いていく決意を新たにすることにあります。120年の間、洲本中学、淡路高等女学校から洲本高等学校へと連綿と受け継がれてきた精神を自らのものにする営みです。

 

今日、洲本高等学校定時制に入学した皆さんは、そういった素晴らしい先輩たちの歴史に加わりました。そういう先輩たちの姿を心に描き、洲本高等学校定時制での生活を充実したものにしていって下さい。70年前の先輩たちも、まだ見ぬ今の皆さんを心に描き、寒風吹きすさぶ夜の洲本市内の各所にポスターを貼りまわったのでしょう。自分のことだけではなく、自分以外の人のことも、そして、自分に連なるまだ見ぬ人のために行動する。それが成長です。ある人は「成長とは今ある自分を否定して生まれ変わることだ」といっています。果物は、種であることを否定して芽となり、花となり、花であることを否定して初めて実となります。人間は、自分のなかの「子ども」を否定して「おとな」になるのです。

 

私が、みなさんに、洲本高等学校定時制の生徒として、三つのことを期待します。まず学校に来ること。そして授業をしっかり受けて学ぶこと。さらには学んだ「成果」をいかして、自らの将来への道筋をつけていくこと、というつです。まず学校へ来ること、そして、学校へ来てしっかり学びましょう。仲間たちと関わり合い、楽しく過ごしましょう。そうすれば確実に成長します。対象に働きかけて対象を変えることは、それと同時に、あるいはそれ以上に自分自身が変わることです。

 

あとになりましたが、保護者の皆様に対して、心からご子弟の本校入学のお祝いを申し上げます。本日確かに、ご子弟をお預かりいたしました。四年後の卒業時には、県立洲本高等学校定時制に入学させてよかったと喜んでいただけるよう、私どもは教え、育むことの専門職としての誇りと矜恃にかけて、全身全霊を込め、真剣勝負をするつもりでご子弟の教育に当たりますので、保護者の皆様にも、本校教育に対するご理解とご支援をよろしくお願い申し上げます。最後に、本校の校歌に歌う「洲高の若きもの」16名の今後の成長・発展を心からお祈りして、私の式辞といたします。

 

平成二十九年四月十日

         兵庫県立洲本高等学校長 越田 佳孝


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