学校長より
洲本高等学校 校長
越田 佳孝
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今年も6月9日の「生活体験発表大会」の説明会の実施から生活体験発表の季節が始まりました。定時制・通信制生徒生活体験発表大会は、昭和26(1951)年11月、全国大会に先駆けること2年前、兵庫県で「定時制弁論大会」として始まりました。その後、全国大会が始まり、定時制・通信制高校に通う高校生が、学校生活を通して、感じ、学んだ貴重な体験を自らの「ことば」にして発表する長い歴史と伝統を持つ行事です(『兵庫県教育史』374頁)。
説明会では「生活体験発表会とは何か」、「生活体験文の書き方」について説明をしました。まず、生活体験発表県大会のビデオを観賞し、生活体験発表会の具体的なイメージを持ってもらいます。「生活体験発表会」とはどのようなものなのか、1年生に知ってもらうことが大切だからです。同時に上級生も「生活体験発表会」について思いを新たにしてもらいます。
次に、「生活体験文の書き方」では、「学校生活について」「仕事について」「働きながら学ぶということについて」等のテーマ毎に、書くべき項目について丁寧に説明しました。「生活体験文」の提出締め切りは6月17日。6月22日は生活体験発表クラス大会です。大会そのものが重要なのではありません。それに向け、学校のこと、仕事のこと、定時制に入学して経験したこと等から、考えたり、感じたりしたことを作文に書き、クラスや学年を越えた仲間たちの前で発表することで、自らの変化、成長を確認することが大切なのです。
今年の校内大会は7月15日、洲本市市民交流センターで実施しました。1年生から4年生まで各学年(クラス)を代表する8名が出場しました。そこから9月の東播磨・淡路地区大会への代表が決まります。地区大会から10月の県大会、11月の全国大会へと続きます。
私は、毎年「生活体験発表会は定時制で学ぶ生徒の成長の物語です」と話しています。「成長」とは、昨日に比べて今日、昨年に比べて今年の「変化」をいいます。これまでの自分に比べて現在の自分の「変化」です。「成長」を実感するには、まず、昨日の、昨年の、そしてこれまでの自分に向き合わなければなりません。そこに生活体験文を書く意味があります。
作文とは自分との「対話」です。頭で考えている限りでは「対話」になりません。作文として文字で書き現わすことで、自分というものが客観化できます。自分の中にいるもう一人の自分が、自分の前に現れてくるのです。作文とは、自分も知らなかったもう一人の自分と対話することです(鷲田清一『じぶん―この不思議な存在』講談社現代新書、1996)。
考えていることがあるから書くことができるのでもありません。書くことによって考えていることが明らかになるのです。発表することは他者の前に自分をさらすことです。自分をさらすことでそれを聴いた他者(仲間)との対話が生まれます。生活体験発表会は一方通行的に発表者の話を「聞くこと」ではありません。「聴くということ」は双方向のコミュニケーションです。だから、大会が終わった後の講評で「聴く者」の態度も褒められるのです。
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