45.アルコールパッチテスト

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[目的]お酒を飲まないでアルデヒド脱水素酵素(ALDH)の有無を知る。
[領域]生物:酵素 遺伝
化学:アルコール・アルデヒド
[準備]消毒用エタノール 脱脂綿 テープ
[操作]
 セロハンテープに脱脂綿をつけて絆創膏を作り、消毒用エタノールを0.5mlくらい脱脂綿にしみ込ませ、腕に貼り付けて約20分後皮膚の反応を見る。
[留意点・工夫点]
脱脂綿は1cm×1cm×0.5cm角くらいに切っておく。
脱脂綿にアルコールをしみ込ませてからではテープがつかない。またアルコールは脱脂綿からはみ出させない。
脱脂綿とセロハンテープの代わりに、バンドエイドの表面の穴をテープでふさぎ使うのもよい。
脱脂綿を貼る位置は、二の腕の内側のように柔らかい皮膚がよい。
貼った方の手を締め付けたり、テープの上を押さえたりしない。
パッチテストで変化無しの場合はALDH2型を持っている(酒に強い)。赤くなった場合はこの酵素が欠乏している(酒に弱い)。
パッチテストを家族にもしてもらうと遺伝的な参考になる。
エタノールを赤熱した銅線で酸化してアルデヒドを生成させ、このアルデヒドとエタノールの混合液を同じように皮膚につけ、エタノールの場合と比較して見ると同じ結果になる。
体に入ったアルコール(エタノール)は肝臓でアルコール脱水素酵素(ADH)により80%を分解されてアセトアルデヒドに変わる。残りの20%は、MEOSの酵素(マイクロソーム・エタノール酸化系)により分解される。ADHは酒を飲まない人の肝臓にも存在するが、MEOSの酵素群は、常に飲酒すると増える。
次に、このアセトアルデヒドはアルデヒド脱水素酵素(ALDH)によって、すぐ酸化されて酢酸に変わる 最終的に酢酸は無害な炭酸ガスと水に分解される。
ALDH2は血中のアルコール濃度の低い時(少量の酒を飲んだ時)に働き、ALDH1はアルコール濃度が高い時に働く。ALDH2のない人は、少量の酒でアルデヒドの分解能力が低下し、アルコールの量に比例して体内のアルデヒドの濃度も上がる。
ALDH2は、効率よく速やかにアルデヒドを酢酸へ分解するが、ALDH1は、アセトアルデヒドの濃度がある程度以上にならないと働かない。
 
ALDH2の酵素を持つかどうかは遺伝による。欧米人の殆どは両者を持っているが、モンゴロイド系の人はALDH2を持っていない人が多く、酒に弱い人が多い。これは、ヨーロッパでは氷河時代、冬に蓄えた食物がアルコール発酵したため、酵素欠乏型の女性は満足な子孫を残せず、結果として酵素欠乏型が淘汰されたためだろうと推測されている。

[関連実験]アルコール アルデヒド
[参考文献]「酒飲みのための科学」 加藤伸勝 (講談社ブルーバックス)
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