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兵庫県立神戸高等学校

平成29年度 卒業式 式辞

県立神戸高等学校 校長  中野 憲二  


 上野ヶ丘に春の息吹が満ち始め、ものみな躍動の気配を漂わせる今日、70回生の皆さんとのさびしくも喜ぶべき別れの時がまいりました。本日ここに、同窓会長、井堂信純様はじめ、多数のご来賓の方々、並びに保護者の皆様のご臨席を賜り、兵庫県立神戸高等学校第70回卒業証書授与式をこのように盛大に挙行できますことは、卒業生はもとより本校にとりまして大きな喜びとするところであります。高いところからではございますが、学校を代表して心より厚く御礼申し上げます。

 

 ただ今、本校の所定の課程を修了し卒業証書を手にした359名の皆さん、ご卒業おめでとうございます。今、皆さんの胸の中には、楽しかったこと、嬉しかったこと、苦しかったこと、辛かったこと、悔し涙を流したこと、挫折しそうになったとき、友人や先生方の一言に励まされたことなど、地獄坂を通った3年間の思い出が走馬燈のようによみがえっていることと思います。

 日常の勉学や部活動、並びに自治会活動を中心に、かけがえのない青春を充実させるべく、研鑽の日々を積み重ね、本日、晴れて卒業の日を迎えました。

 これは、勿論、皆さん一人ひとりの精進努力の賜物ではありますが、同時に日夜を問わず、温かい愛情を持って励まし支えて来られましたご家族や先生方、さらには本校創立以来、ご支援を頂いております同窓会はじめ多くの方々のご援助のお陰でもあります。どうかこの点にも思いをいたし、感謝の気持ちを忘れることなく、一層の精進を積み重ねるよう期待してやみません。

 私は昨年4月に赴任し、70回生の皆さんとは1年間、一緒に本校での生活を送りました。この1年間を振り返り、3年生が強烈なリーダーシップを発揮し、学校を牽引してきたことを実感しています。学業と部活動の両立はもちろん、様々な学校行事に自治会や実行委員が協力して全校生徒をまとめ、文化祭・園遊会の休日開催を実現し、成功に向けた様々なチャレンジ、全校生一体となった兵庫高校との定期戦をはじめ、体育大会や音楽会などの成功のために青春を燃やしました。高校総体や総合文化祭、各コンクールで団体や個人として近畿大会や全国大会に出場するという素晴らしい成果を残してくれました。これは皆さんが本校で過ごした3年間、勉学、学校行事、探究活動、部活動等を通じてたくさんの友人と出会い、切磋琢磨しながら多くの達成感・充実感とともに悩みや苦しみも経験し、心身ともに大きく、そして逞しく成長し、文武両道の精神を具現化した結果であると考えます。

 さて、皆さんは、これから大学などを経て、あらゆる分野で世界という広い海に漕ぎ出していくことになります。

 その前途は洋々としていますが、現実を見ると、どうでしょうか。世界では争いや災害が続いてます。経済活動の急速なグローバル化が進む反面、自国のみを優先するかのような主張も強まりつつあります。国内でも政治的、経済的、あるいは思想的な対立の溝は、埋まることがありません。一方、人工知能をはじめとする科学技術の急速な発展とともに、それをいかに社会が受け容れ、活用すべきなのかという新たな社会問題にも私たちは直面するようになっています。

 しかし皆さんは、すでに選挙権を持つ主権者でもあります。主権者として判断し、責任を持つことも求められます。

 教科書でも習ったジョン・スチュアート・ミルは、『自由論』の中でこのように言っています。「人が判断力を備えていることの真価は、判断を間違えたときに改めることができるという一点に」ある。そして、「人は議論と経験によって自らの誤りを正すことができる」のであって、「経験のみで正されるわけではなく、議論によって、経験をいかに解釈すべきかが示される。」と述べています。

 様々なメディアやネットを通じて膨大な情報があふれていますが、表に出た情報の裏には実は、たくさんの事実があります。私たちが真の事実を知るためには、他者との議論が必要です。70回生の皆さん、「冷静な現状認識」、「普遍的な判断」を常に意識しながら、これから一層磨いていくことになる「知性」と「感性」を駆使し、議論を経て真の事実を見出し、道を、未来を切り開いていってほしいと思います。

 

 保護者の皆様、ご子弟のご卒業を心より祝福申し上げます。長い間、陰に日向に色々とお心を痛められ、ここまで育ててこられたご家族のお気持ちは如何であったでしょうか。思えば、新通学区域となった最初の高校入試で、大変不安な中での受験、そして本校への合格であったでしょうから、小学校・中学校の卒業の時にも増して、このたびの卒業は、思いもひとしおのものとお察し致します。本当におめでとうございます。

 ただ、彼らにとって「人生」という旅路は決して楽しく易きものばかりではなく、その過程では、時にはつまずき、苦しみ悩むこともあるでしょう。本校で学んだ彼らは、決して怯むことなく、前向きに立ち向かい、自分自身で考え乗り越えてくれると信じています。保護者の皆様には見守りながらも、人生の先輩としてその時々にアドバイスをお願いしたいと思います。

 3年間にわたり本校の教育活動にご理解とご協力を賜りましたことに厚く御礼申し上げます。これからも、本校へのご支援を賜りますようお願い申し上げます。

 

 別れの時が近づいてまいりました。70回生の皆さん、皆さんは歴史と伝統を誇る神戸高校の栄えある卒業生となります。将来に向かって永々と続く本校の卒業生となることを誇りに、これからの人生を一歩一歩踏みしめながら歩み続けてください。

 「鵬」はその途方もない大きな翼で9万里の高さに舞い上がるとされています。皆さんはその「鵬」の「雛」、「鵬雛」です。「鵬雛」が今、南の海を指して飛び立とうとしています。まさに「図南の志」です。70回生一人一人の将来が光り輝くものとなることを念願し、式辞といたします。

 

  平成30年2月28日

兵庫県立神戸高等学校長  中野 憲二  

 

2018.3掲載

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