
県立神戸高等学校
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2学期 終業式 式辞
県立神戸高等学校 校長 中野 憲二
2学期も今日で終わりです。
このようにみんなが元気で終業式を迎えられることを本当にうれしく思います。
今日は、兵庫県出身の世界的に有名な冒険家、植村直己さんの話をします。
植村さんは、アマゾン川単独河下り、北極点単独犬ぞり到達、グリーンランド単独犬ぞり縦断など数々の有名な冒険を達成しています。さらに、世界初の五大陸最高峰(欧州のモン・ブラン、アフリカのキリマンジャロ、南米のアコンカグア、アジアのエベレスト、北米のマッキンリー(今はデナリ))登頂者でも有名です。残念なことに43歳の時、マッキンリー登頂の直後に遭難しています。
こんな有名な人ですから、さぞかし高校、大学時代から大胆不敵な人ではないかと想像してしまいますが、登山隊に加わる時にはトップに立ちたいという想いはあっても、自分が主役になるよりは常にメンバーを影でサポートするような立場に立った。目立たず地味な存在だったそうです。
明治大学山岳部時代には、少しでも同期の連中と肩を並べたいと密かに日本の山岳行を繰り返し、その陰の努力が実ってサブリーダーにまでなっています。エベレスト登頂の時には、先輩であるもう一人の登頂者に初登頂を譲ったと聞いています。
植村さんは、体力以外に取り立てて優れている面があるわけではない自分に対して、むしろ劣等感を抱いており、逆にその劣等感をバネにして数々の冒険を成功させたという人がいます。資金集めの講演会や記者会見で大勢を前にして話をする際は、第一声を発するまでしばらく気持ちを落ち着けなければならないほど、人前に立つのは大の苦手だったそうです。
数々の冒険の成功から大胆な面がクローズアップされていますが、実際には十分な計画と準備を経て必ず成功するという目算なしには決して実行しなかった慎重な性格だったそうです。
ただ、植村さんは「旅の出発には、いつもどこから湧いてくるかわからぬ不安感が心のなかに生れ、私を苦しめた。いまも、またそうなのだ。闘志をかきたて全身をひきしめているつもりなのに、漠然とした不安がときおり心を横切る。そして、これをふり払うには、実際に行動を起こすほかないことを、私は知っている。不安な時は小さなことでもいい、今できる行動を起こすこと」
とおっしゃっています。
1歩踏み出す勇気があれば、もう一歩も踏み出せるということだと思います。冒険も結局は1歩1歩の積み重ねだということです。
3年生は、すでに、もう一歩、もう一歩と目前の大学入試に向けた歩みを続けているところかと思いますが、「大学」に合格することが目標ではなかったはずです。この機会に、もう一度自分の本当の目標を確認し、センターテスト、私学入試、二次・・それぞれ直ぐに切り替えながら、一歩一歩がんばってください。2年生、1年生は、3年生に比べるとまだまだ一歩を踏み出しているとはいえない段階ですが、2年生は1年後の、1年生は2年後の自分の姿を3年生に見ながらがんばってください。
3学期の始業式にも、このように元気で出会えることを期待して終業式の式辞とします。
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2017.12公開