16.発生の観察

[目的]単細胞の受精卵が卵割を繰り返して、しだいに多細胞の複雑なからだを作り上げていく過程を観察する。
[器具・材料]
 ウニ・カエル・メダカ・タニシなどの受精卵
[準備および操作]
 各材料を発生段階ごとに検鏡する。
[留意点・工夫点]
カエルやメダカなどの卵を吸うスポイトは壊れた駒込ピペットの口を広くしたもの、ウニを取り分けるスポイトは先を細くしたパスツールピペットを作っておくと取りやすい。
A.ウニの卵
16段階の固定された観察用材料を購入する場合と、生のウニを購入し、発生させ固定する場合がある。
ウニの発生時期:バフンウニ1〜4月、ムラサキウニ6〜8月、コシダカウニ7〜8月、アカウニ10〜12月
生の卵を使うと受精の様子(受精膜ができるところ)を観察することができる。
生きたウニを飼うには、多量の海水または人口海水を用意しておく。
ウニの卵をホールスライドガラスに入れてカバーガラスをかけ、マニキュアで封じる。乾燥しやすいので、密閉容器の底にろ紙を入れ充分に水を含ませてその上にプレパラートを入れる。冷蔵庫で保管するとうまく封じたものは翌年も使用できる。
発生の各段階を混ぜたものを封じてもよい。
生きたウニで受精させると、うまくすれば初期〜4腕期プルテウス幼生ぐらいまで育てられる。そのまま見ても良いが、永久プレパラートにするにも適しているので、挑戦してみるとよい。
穴をあけたビニールテープを二重にしてスライドグラスに貼り、穴のあいているところに卵を入れて観察する。カバーガラスが強力に密着し、厚みも平均しているので観察しやすい。(「淡水微生物の観察」参照)
マニキュアでの封じ方:工夫展より
ムラサキウニの発生を顕微鏡で観察する際、自作のプレパラートを使う。冷蔵庫に保存すれば数年は使用でき、材料費のみで作れるので1人が1枚ずつ観察できる。

       ↑斜線部はすべてマニキュア
○材料は、自校で一度発生させれば何度も使うことが出来るし、市販のものでもよい。
○本校では、1枚にいろいろな発達段階を入れて観察している。
ホールスライドガラスにホルマリンに入った試料を入れ、カバーガラスをマニキュアで止める。マニキュアの止め方が長持ちのポイント。
@ ホールスライドガラスにウニの卵が入ったホルマリン液を入れる。(スポイドに1滴)
A カバーガラスを横または下からスライドさせながらかぶせる。(ウニの卵は小さいのでつぶれない)
B 気泡が出来ないようスポイドでホルマリン液を補いながらカバーガラスをかけていく。
C 作製したプレパラートを半日程度放置し、ホール以外のホルマリンを蒸発させる。
D カバーガラスとスライドガラスの隙間に入り込むようにマニキュア液をぬる。
E カバーガラスの周囲のマニキュアを塗る。
F 乾燥後タッパーに入れ、冷蔵庫で保存する。
B.カエルの卵
アフリカツメガエルにホルモン剤を注射し、産卵させる。
10時間ぐらい後から産卵するので、時間をずらして5%ホルマリンに順次固定する。
各段階を混ぜたものをシャーレ等に分け、実体顕微鏡やルーペで観察する。
カエルの飼い方→一般編飼育へ
C.メダカの卵
飼育すれば春と秋に受精直後の卵を採集して観察できる。
水温25〜28℃に調整し1日13時間以上点灯すると年中採卵できる。
受精直後の卵を得るには、成熟した雄を隔離して2昼夜おき、受精卵を必要とする20分前に腹の膨らんだ雌と一緒にする。水槽を夜明けの明るさに保ち、静かにしいておくと交尾行動が始まる。
卵をぶら下げているメスを網ですくい、スポイトを使って水中で卵を吸い取る。受精卵には膜ができているので確認する。
採集した卵を飼育すれば、生きた発生の段階が観察できる。卵に緑藻類がつかないように、エアレーションする。
卵の観察には、ホールスライドガラスを2枚合わせて卵を挟み込むと、自由に回転させる事が出来る。
メダカの飼い方→一般編飼育へ
卵の低温保存
5℃に調節された冷蔵庫に入れると、数日間発生を停止させることができる。
発生を再開させるには、シャーレごと室温に1時間ほど放置してから注射器などによるエアレーションを行うとよい。
発生の進んだ卵ほど、長期の停止に耐えることができる。