桃太郎絵巻
 昔むかしあるところに、お爺さんとお婆さんが住んでいました。お爺さんとお婆さんには子どもがおらず、毎日「子どもを授けてください」と祈っていました。ある日のこと、いつものようにお爺さんは山へ芝刈りに、お婆さんは川に洗濯に行きました。すると、川上から桃が流れてきます。
 ドンブラコ。
 ドンブラコ。
 お婆さんは川から桃を拾いあげ、食べてみました。
 お爺さんが山から下りてくると、別人のように若返ったお婆さんと鉢合わせしました。
 驚くお爺さんに、お婆さんは残りの桃をすすめました。
 若返ったお爺さんとお婆さんのあいだに、一人の男の子が産まれました。
 二人は、男の子を「桃太郎」と名付けて大切に育てました。
 桃太郎はすくすくと成長しました。生まれながらの力持ちで、強さでは誰もかないません。
 あるとき桃太郎は、鬼ヶ島に住む鬼たちが人間を困らせているという話を、旅人たちから耳にします。
 桃太郎は家に帰ると、さっそく刀を研ぎ始め、旅に出る支度を調えました。
 心配するお爺さんとお婆さんは桃太郎に「きび団子」を手渡し、桃太郎の無事を氏神さまに祈りました。
 旅に出た桃太郎は、道中、きび団子を食べようと、腰に手を伸ばしました。すると猿が出てきて言いました。
「おいしそうなきび団子ですね。ひとつわたしにくださいな」
「いいですよ。これから鬼退治に行くのです。ついてくるならあげましょう」
 猿が桃太郎の仲間になりました。
 また山中を歩いて行くと、犬と雉が出てきました。
「おいしそうなきび団子ですね。ひとつわたしにくださいな」
 きび団子をもらった犬と雉は、桃太郎の仲間になりました。
 桃太郎と猿・犬・雉は力を合わせて舟を操り、鬼ヶ島をめざして海を渡りました。
 鬼ヶ島に上陸すると、すぐに鬼の棲む館がありました。桃太郎は持ち前の怪力で、館の門扉を破壊しました。鬼たちはあわてふためき、これはかなわないと見て取りました。
 鬼は、隠れ蓑や隠れ笠などの宝物を桃太郎に贈り、降参しました。
 こうして鬼を退治した桃太郎は、お爺さんとお婆さんのもとにもどり、末永くみなで幸せに暮しましたとさ。
 めでたしめでたし。
Copyright(c)Hyogo Prefectural Museum of History.All Rights Reserved.