昔話「桃太郎」を主題とした絵巻物で、詞書はなく絵画のみで構成されています。墨での描写を多用し、彩色箇所の指示が書き込まれていることから、観賞用ではなく、絵手本として制作されたものと考えられます。この絵巻では、桃から桃太郎が生まれるのではなく、桃を食べて若返った夫婦から誕生することになっています。
昔話「桃太郎」を主題とした絵巻物で、詞書はなく絵画のみで構成されています。水墨を多用しており賦彩は抑制的で、ところどころに彩色についての指示が書き込まれていることから、観賞用ではなく絵手本として制作されたものと考えられます。
絵画場面は以下の14段から構成されています。
現状では一巻ですが、場面数は多く長大であり、制作当初は複数に分けて調巻されていた可能性があります。ちょうど真ん中ほどにあたる第9段と第10段のあいだは、景観が連続しておらず霞も分断されているため、本来はこの箇所で上下二巻に分けて誂えていたようです。
この絵巻の物語では、桃から桃太郎が生まれるのではなく、桃を食べて若返った夫婦から桃太郎が誕生していることが特徴です。また、城門から鬼の住処へと攻め込むのは、『酒呑童子絵巻粉本』(館蔵)などの伝狩野元信筆『酒呑童子絵巻』(サントリー美術館蔵)系の図柄を踏まえたものでしょう。そのパロディは『神農絵巻』(館蔵)へと引き継がれています。 本絵巻の外題には題箋墨書「昔噺シ桃太郎絵巻〈古法眼/元信之図〉」とあり、狩野元信とはおよそ考えられないものの、狩野派系の絵巻として受容された履歴を示しています。