第五話 メール
雅斗が怪我をした。 |
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かおりとの電話を切った後、何がどうなったのか冷静に理解するまで少しの時間を要した。 聞こえてくるもの、時計、雨音、ただ一定のリズムを延々と繰り返しているだけ。いつもと同じ変哲のない手。鏡をのぞいても、映るのはいつもとかわらない俺。ただ絶対的に違うものがあった。頭がクリアになるにつれて、だんだん落ち着かなくなっていく。自分で作り出した圧力に息が詰まる。 |
![]() "あ!メール見たか!?まだ!?昨日めっちゃ苦労して書いてんから見たってよ!"雅斗の言葉がよぎる。 もう一週間以上開けていない受信箱。 引き寄せられるように電源をつけた。 潤平 手紙とかホンマ苦手やからちゃんとした日本語になってないと思うけど、読んだってな。 今頃おまえは落ち込んでるんやろうな。 今度の試合は、俺にとっては色んな意味で大事な試合やから全力で頑張りたいと思う。 俺な、試合するとき、いっつもおまえや試合に出れらん仲間のこと思うねん。 この前の試合出れらんかったとき辞めたいとか言ってたけど、辞める気なんかないよな。 立ちすくむしかなかった。 雅斗・・・・・。俺・・・・・。言い表せない熱いものがこみ上げてくる。涙が溢れていた。 |