第四話 事件
それからと言うもの、かおりはあからさまに俺を避け続けた。 朝、見かけても挨拶すらしない。廊下ですれ違っても、まるで一度も会ったことのない他人みたいに素通りする。 「悪い、あの時俺も自分の事でいっぱいでさ、言いすぎた。かおりだったら分かってくれてると思うけど、・・・ごめんな。」って、明るく言ったり、トーンをかえてみたり何度も予行してみたけど、俺も俺で一言すら言えないでいた。通学路、廊下、昼休み・・・言うチャンスはいくらでもある。いつだって叫べば届く距離にいる。いや、叫んでもいいと思う。早く謝りたい。正直、かおりに無視され続けるのは結構キツイのだ。 |
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部活には行った。行ったけどいつのまにか目的が変わってしまったように、ここでもチャンスを探してかおりの様子をうかがう。俺が友達だったら「そんなに気になるんなら早く言ってしまえばいいのに、なに意地張ってんだ」って言ってるだろう。でも、 部活が終わるとそのまま何となくゲーセンに行って何時間も遊んだ。何となくむしゃくしゃして帰る気にならないし、どうせ帰ってもひとりだ。勉強なんか論外。寝るためだけに帰った。もちろん気分は晴れないまま。 そんな調子で三日が過ぎ、試合はもう明後日に近づいていた。 |
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アパートの扉を開けると、母さんが来ていた。 「そうそう、かおりちゃんから電話あったわよ。携帯つながらないって。」 |