真夏の夜の幻影 (9/15)

作者:CROW

「おい!斎藤!起きろ!斎藤!」
誰かが俺を呼ぶ声がする。
目の前が段々と明るくなってくる。なにかが俺の体を軽く揺さぶる。
鼻さすなにかが焼けた匂い。そして眼を明けた俺がそこで見たものは。
亀の丸焼きと巨大な熊だった・・・・・。
「うん・・・・?」俺こと斎藤はやっとの思いでうめき声をあげる。
「ああ、よかった生きてたか。」声からして瓜生が近くにいるのだろう。
が、いきなり視界が塞がれる。
「ちょっとまってな、はい眼鏡。」
塩水の独特の匂いのするタオルで無理矢理顔をふかれ眼鏡をかけられる。
そこにはやっと再会できた瓜生と杉沼がいた、あとでかい熊が。
「俺どうしたん?」聞いてる方からすれば変な質問かもしれないが、
とりあえず二人に尋ねてみる。
「え?なにが?俺らが今日の捜索が終わったからテントに帰ってきたら、
テントにたくさん(斎藤)がすでにうめきながら寝てたんやん。いつ帰ってきたん?」
「うそ?俺森の中の洞窟で化け物に襲われてそのまま倒れたと思うねんけど。」
「なんやそれ?・・・・まぁいいやん。なんか食う?腹減って無い?」
あの洞窟で倒れてからどれぐらい時間がたったかわからないが俺の腹時計は正確に
メシの時間の来刻を音と共に俺と瓜生に知らせる。
「ところで、この熊さんはいったいどなた?」
とりあえずメシを食いながらも今かなり気になることを尋ねてみる。
実はこの熊、さっきから俺の隣に正座して湯あげされた亀を食べていたりするのだ。
「あぁ、こいつは熊次郎っていって、この間森で俺と戦った戦友や。」
熊次郎に5匹目の亀を手渡しながら杉沼は簡潔に答える。
「どうやらこの森にちょっとは詳しいようやから島を案内してもらってんねんけど。」
「ふ〜ん。」なんでそんなことが杉沼にわかるのかは謎だがとりあえず納得する。
こうして俺は瓜生作の料理、名付けて「熊殺し」という、熊肉のフルコースという、
病み上がりの俺にとってはかなり胃に重い食事を済ませた。
で、瓜生達の調査ではどうやら結城がいるのはもう森の中しか無いということらしい。
そして俺も洞窟と謎の人物、謎の影、そして謎の化け物と東堂の話をした。
どうやら二人+一匹はまだ遭遇してないようだがさすがにその表情は暗かった。
やはりまだまだ不可解な点が多いが、瓜生はもう帰ることに専念しよう。
という結論をだし脱出用に朝から作り始めていたイカダの話をする。
多分、俺の話を聞いたためだろうが、確かにこの島は危険過ぎる、
結城と東堂はもう見捨てるしか無かった・・・。

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