真夏の夜の幻影 (8/15)

作者:CROW

そう、俺こと斎藤の目の前に写っているのは・・・
ひかりごけの壁の部屋に家財道具が一式揃っている部屋。
そうまるでだれかが居住しているような・・・そんな生活感あふれる小汚い部屋・・・
そしてその部屋の片隅にボロ雑巾の様に打ち捨てられている東堂。
あまり近寄りたくないぐらいぼろぼろだったが一応生存を確認するために近寄る。
(まさかゾンビ化してないだろうな?)
そう思いながらもとにかく脈を計ってみる、非常に微弱だが確かにまだ脈はある。
失踪から約2日たった今、まだ東堂は生きていた。
(ふぅ、さてどうしたもの・・・・。)
「ブガスコーン・・・・・・。」
「!?」思うよりも体が先に声の主を捜すべく後ろを振り向く。
が、声のした方向を確認しようとするがこんな迷宮の中で正確に音源をさぐるのは無理な話しである。
急いで東堂を担ぎ脱出をしようとしたとき、俺は次の瞬間動けなくなった。
「ブガスコーン。」
つい先程まで自分がいた部屋の方に何か黒い巨大な獣の影が映る。
大きな足跡と共に声も大きく聞こえた。
「ブガスコーーーーーン!!!」
影が吠えた。そうその化け物はもうすぐそこまで迫っていた。
俺はもう東堂を捨てて急いでがむしゃらに走り始めた。
「ブガスコーーーン!!」
声と走るドスドスという音は確実にこちらへと向かってきている。
俺はただ感情のままに走った。
怖い、逃げろ、死にたくない。
全ての感情がただひとつの命令だけを脳に下している・・・・。そう。
走れと・・・・・。
「ブガスコーン!ブガスコーン!!!」
迫り来る足音。そして異常な死臭。
そして冷ややかな洞窟のかび臭い空気の中にすこしだけ交じった自然の空気。
俺はひたすら走った。頭がクラクラし、目の前は軽いブラックアウトを起こしている。
このまま走り続ければ体に異常をきたし相当ヤバイことになるのは目に見えている。
しかし、頭では理解できていても脳は体は俺の命令を拒否し続けた。
そこへついに満ち満ちた本当の光を遠くに見つける。
「ブガスコーーーーーーーーン!!!!!」
一際大きな叫びのもとその化け物は加速して出口への道を塞ぐ。
目の前に現れた化け物に驚き、俺は急停止をかける。
そして体を支えることすらできずその場に倒れ伏せる。
結局出口から差し込む逆光のせいで化け物の顔はみえなかった、
最後にみたのは、化け物が手を振り下ろそうとしたときに
それはまるで何かに気づいたかのようにいきなり背中を見せて逃げ去った姿だった・・・・。

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