真夏の夜の幻影 (7/15)
作者:CROW
(ここはどこだろう?)多少頭や体の節々が痛むが行動の妨げにはならない。 眼がやられているということは無いが眼が見えない、恐らく、よほど暗いところに落ちたのだろう。 落ち着いて状況を整理してみると自分の置かれた状況が良く解る。 俺こと斎藤は消えた結城を追って森に入ったが、途中にいた謎の人物にはめられて この落とし穴から謎の空洞へ落とされたのだ。 落とし穴の深さはわからないがはっきりいってこの暗闇で落とし穴を上るのは無謀の極みともいえる。 だからといって、この場に留まるのも危険極まりないはずだ・・・。 とにかく動かなければ!平衡感覚が鈍いものの、立てない事は無い。 何も見えないから左手で前を探りながら右手で壁を触る、と。 いきなり変な堅い物を踏んだ。 何かと思って触ってみると、幸運にも落としたと思ったライトを拾うことができた。 さっそくライトをつけるが見ると辺りは天然の洞窟だった、少なくとも一本道なんて生易しいものではない、 迷宮のようなものだとなんとなく判断した。 とりあえず、俺はどこまで続くかわからない迷宮を歩き始めた。 そしてどれだけ歩いただろうか? 急に目の前に明るい小部屋が見えた。 俺は慌ててライトを消して静かにその部屋へと近づく。 細心の注意を払いながら部屋をのぞき込むとそこにはなんと部屋一面の壁が青白く輝いていた。 手に取って見るとよくわかる、そう、マンガや本などで見かける”ひかりごけ”というやつだ。 まぁようするにその名の通り、こけが薄い蛍光緑の光を朧(おぼろ)げに発している。 俺はひかりごけを壁から少しもぎとると次の部屋へと進んだ。 そこには何やら真新しいダンボールが部屋中にところせましと積まれていた。 中を見るとサバの水煮などの缶詰食品が大量に入っている。 それを見た瞬間、今の今まで忘れていた空腹感が突然一気に押し寄せてきた。 日付を確認すると有無をいわさぬ勢いで缶詰をかたっぱしから食べ始める。 数分後・・・そのへんに缶詰のゴミが無造作に捨てらてた部屋の中で缶詰の日付をよく確認する。 すると製造日の表示はなぜか俺達がこの島に到着した日になっている。 (なぜだ?俺達以外にこの島に来れた人間がいるのか?) 俺達が便乗したフェリーには他の客はいなかったハズだ・・・・。 乗船員からもそんな話は聞いていない。 謎は深まるがとりあえず脱出を前提に俺は慎重に次の部屋を覗いて見る、 するとまたいくつか同じ部屋が続いていた。 何もない小部屋を歩きながらようやく他の部屋とは違う部屋にでる。 そこで俺はとんでもないものを見つけてしまった・・・・。 |