真夏の夜の幻影 (5/15)

作者:CROW


「なぁ、たくさん(斎藤)は?」
俺こと瓜生は静かな仮厨房を遠目に見て杉沼に尋ねた。
「さあ?うっぴー(瓜生)見に行って来い」杉沼は東堂のカバンの中の酒を飲みながら
俺に向かって命令する。
「いいから、こい!!」そういって俺は問答無用でだだをこねる杉沼を無理矢理引きずって仮厨房を覗く、
するとそこには湯あげされた亀がザル一杯に入っていた。
しかし俺は見逃さなかった。近くの森林にまた昨日はなかった道ができているのを。
「・・・なるほど多分たくさんは結城を追ってこの道を進んだんか・・・。」
俺は瞬時にそう判断してくるりと後ろを振り向く、そこでは杉沼が口に亀を詰め込んでいた、
さらに亀がもう半分は無くなっている。
「こら!!食うな!!!たくさん捜しにいくぞ!」
そういってむりやり杉沼をテントへひきずり、急いで装備を準備して、
俺達は新たな道を進んで行った・・・。
道はわりと広く二人が並んで歩けるほどだ。
だが裏をかえせば静かにこんな馬鹿げた道を作ることができる者がこの島にいるということになる。
夜も遅いためもうすでに獣達のたくさんの視線を感じるがそれを全て無視して進む。
するといきなり開けた平野が現れる。
まぁ、集団で襲いかかるのには絶好のポイントだろう・・・。
案の上平野の中央に立った辺りで回りの草むらからイヤというほどの獣達が現れる。
中にはサーベルタイガーや巨大カエル・インド象など何か間違ってるものが見えたりもするが
気にせずに俺は愛刀・昇陽を抜き放ち、加速して一気に獣の群れへとつっこみ真一文字に切り裂く。
そこにいた獣達は何匹かは難を逃れたものの、ほとんどの獣が死滅していた。
「はぁ!!」気合一閃眼にも写らぬ速さで今度は右手にいた熊グループに切り込む、
すれ違いざまの3段斬りとスピードで発生する旋風によって動作ののろい獣熊達は
一瞬で全滅した。
「小手調べだ!!」俺はそういいながら反転して全力で剣を振るう。
剣圧で発生した真空波は地面をえぐり突っ立っている獣達をものの一撃で粉砕する。「ふぅ・・・。」
一息ついたところでとふと杉沼が見当たらないのに気づき俺は周囲に眼を走らせる。
と、近くの茂みに今の戦いを傍観するような良い場所に亀を食いながら陣取っていた。
「こら!人が戦ってるのになにをしとるか!!」
そういった時、杉沼のすぐ後ろに揺らめく大きな影が姿を現した。
「あぶない!杉沼!!!」走りだすが遅い!「なっ!?うわあーーー!!!!」
杉沼の頭へと熊の一撃が今振り下ろされた。

前のページCROWの小説へ次のページ