真夏の夜の幻影 (12/15)

作者:CROW

暖かい・・・・・・、なにか最近ここ数日感じたことの無い暑さとは違う布団のような温かみを感じた。
「う〜〜〜〜〜〜〜ん・・・・・もうあと65分・・・・・・・・・。」
俺こと斎藤は多少目が覚めたのだが、あまりにも差し込む陽光が気持ちいいため、
ついつい、いつもの調子で布団を軽くかぶる。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
ハっと現実に戻りガバっと俺は起き上がりあたりを見回す。
南向きの大きな窓、和風の部屋で扇風機が2台、朝の明るいうちからフル稼働している。
よくみると隣には同じく薄い布団の中に瓜生と杉沼がまだ眠っている。
開け放たれた窓からは夏の朝のまだ多少柔らかい陽光が部屋中を照らしていた。
(なんだ?ここは?)疑問を持ちながらも部屋を出る。
部屋を出るとすぐに廊下になっており自分達の部屋にはマグロの部屋という表札が
掛かっていた。
廊下を西へと進み急な角度の階段を降りる。
朝からにぎやかな一階に浜茶屋のような食堂が広がっていた。
しばし理解に迷った俺にいきなり渋く軽い調子で声が掛けられる。
「おう!昨日の高校生か?もう体は大丈夫か?」
声の方を振り向くとそこにはまるで地下プロレスの無敗おやじを連想させる、40歳前後のおやじがこちらを向きながら大笑いをしていた。
「は、はぁ・・・・。」とりあえずあたりさわりのない適当な言葉を返す。
「で、あんたらどこから漂流してきたんだ?」
「ぶっ・・・・あ、あのー俺達漂流してきたんですか?」
「ああ、昨日の夜ちょうどあんたらぐらいの男女があんたら担いで来てな、浜に流れ着いてたからとりあえずここに置いてやってくれって。」
どうやら俺達は島を脱出した時何故か漂流したようだ・・・確かに言われてみれば
脱出後の記憶が無い・・・・。
「で、まぁ、あんたら運んだ後に二人に事情を聞こうと思ったんだがまたその二人組が消えちまってなぁ。」
こちらは半分、上の空だがそれを知ってか知らずかおやじは話し続ける。
「ま、漂流するぐらいだから事情は話したくないんだろう、それに金も無いんじゃねえのか?」
心の中でいきなり厳しいところを突かれたことに少しギクっとくる。
「んー・・・まぁいいよ。またここに寄ったら金を返してくれりゃいい。」
こちらが黙ったのを見ておやじは助け舟を出してくれる。
「あ。あの、ありがとうございます。」
俺はそう言って、軽く会釈すると二人が待つマグロの間へと急ぐ。
部屋に戻った俺は二人をたたき起こし一気に部屋を片付け身支度を整えるとロープを使ってまるで逃げるようにしてその宿”浜茶屋小笠原”を去った。

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