エピローグ       一平和なる日の目覚め−

 西暦にして、2499年。
 月日にして、12月24日。
 そして…時刻にして、PM8:12。

 修一は、公園のベンチに腰掛けていた。
 周囲のいたるところに、電飾が飾られている。
 と、
 「何してんの? こんな所で。」
 彼の視界に、アーティスと凛が入ってきた。
 「…二人こそ、何を?」
 「買い物よ、買い物。今から、家で、友達引き連れて、クリスマスパーティーやる予定なのよ。」
 「修一も、来ないか?」
 「…いや、御免。ちょっと、今…」
 「修一!」
 里美が、彼らのもとに、走って来た。
 「あ、里美さん!」
 「遅いよ、ったく!」
 立ち上がって、そう言う修一。
 「御免御免、ちょっと駐車場所に手間取っちゃって。」
 「? 二人して、どこへ?」
 「うん…ちょっと、ね。」

 凛達と別れた2人は、車を走らせ、海辺に来ていた。
 車を止めて、外に出る。
 「…静か…ね…。」
 「皆、街の方に行ってるからな。こんな時に、海に来ているなんて、俺達くらいだよ。」
 「…それもそうね。」
 そこは昔、父親の武史を含めた3人で、よく来ていた場所だった。
 「…父さん…。…とりあえず…終わったよ。」
 「まだ、あちこちで、小競り合いが続いているけど…CCのボスは、セイルがやってくれたわ。」
 ザア…ン…。
 風が弱く、静かな海に、波の音が、緩やかな旋律を奏でる。
 「…母さん。」
 「ん?」
 「…俺…少し前まで、迷ってたんだ。このまま、CGを続けるかどうか。」
 「へえ、そりゃ初耳。」
 「…父さんを、俺は、死なせた。…俺が、馬鹿野郎だったから。俺のような奴を、もう増やさないように…父さんの遺志を、継ぐために、CGになった。」
 「…。」
 「それでいいのか…って、考えた。父さんのために、なんて、父さんは、不本意かもしれないから。」
 「…まあ…父さんなら、そうかもねえ。」
 「CCを倒すのに躍起になって、考えなかったんだ…今まで。でも、ボスを倒して…それで、考えてみた。」
 「…結果、出たの?」
 「うん。」
 ザ…アン…。
 「…CG、続けようと思う。」
 「…。」
 「…これも、父さんが、顔をしかめそうだけど…。…俺の、罪の償いは、まだ、済んでないと思う。」
 「自分のせいで、父さんを死なせてしまったこと?」
 「うん。俺のようになる奴は、増えたらいけない。増やさないように…俺、力を尽くす。」
 以前、ラーゲット=ディフックにも、そのことを言った手前、後に引くつもりはなかった。
 「そして…守りたい人がいる。大切な人を、守る。」
 「…そっか。」
 「それにさ…このままじゃ、終らない気がするんだ。」
 「え?」
 「…CCは、まだ、あちこちにいる。もしかしたら、そのうちの一匹が、CC製造機に変わるかもしれない。」
 「…そう言えば…一番最初のCCとか、本当にCCを作ったのが誰なのか…まだ、分かってないわね…。」
 うなずく、修一。
 「…俺達の戦いは、これで終わりじゃない…。」
 その時、二人の耳に、車のエンジン音が、聞こえてきた。
 彼らの後ろで、車が、止まる。
 「修一君! 里美さん!」
 声に振り返ると、そこには、車を降りる、亮の姿があった。
 「亮君! 何で、ここに!?」
 「この場所のことは、武史先輩から、聞いていたんですよ。綺麗な所がある…って。」
 「(おい…まさか、母さんを口説きに来たんじゃないだろうな?)」
 心でそう思う修一。
 「修一君、違うよ。別に、里美さんを口説きに来たわけじゃないんだ。」
 …どうやら、気持ちが、顔に表れたようである。
 「君に、会わせたい人がいてね…。」
 「え?」
 ギイ…。
 車の助手席側のドアが、開いていく。
 『…!!』
 息を呑む、修一と里美。
 「…ゆ…、佑里ちゃん…!」
 「…目が…覚めたんだ…!」
 −クリスマスプレゼントとしては、なかなかのものだろ?
 亮の瞳が、そう言っていた。
 「…お兄ちゃん…本当、綺麗な場所だね!」
 「だろ? ま、見つけたのは、俺の先輩だけど。」
 ゆっくりと、佑里は、修一と里美の方に、歩いていく。
 そして、彼女は、2人に頭を下げ、
 「今まで、散々心配かけて、ごめんなさい。寝ぼすけ佑里、ようやく目が覚めました。」
 2人は、一瞬、きょとんとし−
 少し経って、微笑む。
 「…おはよう、佑里ちゃん。」
 「おはよう。」

 満天の星空。
 それらの下に、4人は座っていた。

 「(…父さん。俺、これからも…CG、続けるよ。)」

 1つの大きな戦いが、終わった。
 後に、この三十年は、「第1次CW(サイバード・ウォー)」と、呼ばれることになる。
 …そして…「第2次CW」開始の日まで、しばらく期間を置くことになるのである。

 いつの日か、語ろう。
 彼らの、その後の人生を。


                    −Cyberd Gunner・First Story−The end…

                           

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