この本は先生に薦められて読みましたが、
有名な本ですから以前から知ってはいました。
にもかかわらず読まなかったのは、
作者に対する私の思いこみにあります。
キリスト教徒の作品はすべて神の賛美に終止するものという
先入観から、わざと避けていたのです。
ですから先生の手からこれが現れたときは驚いた反面、
とうとう来たかという感じでした。
だからこそ実際に読んだときの感動と興奮は言いようがありません。
神の沈黙とはなんとしっくりくる言葉だろう。
誰でも一度は抱くだろうこの神の疑惑に。
これを信徒という立場から問う様子はあくまで好意的でそれ以上に切実で、
私は一気に魅了されてしまいました。
作者が一体どんな答えを用意しているのか楽しみで楽しみで貪るように読み、
手にした結論は、救われず去る男の姿――どんなにがっかりしたことか。
結局は信徒の書いた本で、不信心な私にはわかろうはずもないのだと、
あきらめてしまったのです。