まして自らの望まぬ状態をさらすのならなおさらです。
生きる屍の祖父が、兄に苦労をかける病身の弟がもし私だったら、
私はその生に価値を見出さないでしょう。
弟のように・・・行動するかもしれません。
愛するからこそ負担はかけたくない、そう思います。
でも逆に家族がそう考えたら、
私はきっとそんなバカげたことはやめろと言うでしょう。
看病が負担だなんて!
まして喜助にとって弟は唯一の肉親、生きる支えなのです。
弟は兄に『早く死んで少しでも楽をさせたい』と言いますが、
金銭的な『楽』が共に生きてきた弟を失うことにかえられるでしょうか。
『どうしようという思案もつかぬ』喜助の心に私の心も重なります。
それでも喜助は剃刀を抜くのです。
状況からそうする他ありませんが、
弟が楽になる、望みを叶えてやれる、
それをしないということは兄として罪悪感ですらあったのでしょうか。