化学教育兵庫サークル 第67号


研究会の内容

1.期日・場所・参加者
    期 日:平成13年11月10日(土)13時30分〜17時30分
    場 所:武庫川女子大附属高校
    参加者:浅井(尼崎西),日外(天六セミナー),高田(神戸高塚),芝崎,竹上(武庫川),安田(東京書籍)
    〔順不同,敬称略)
 参加人数は少なかったですが,とても楽しい会となりました。
 当日は,武庫川女子大付属高校では,文化祭が行われており,女子校の文化祭というものを初めて体験させていただきました。また,学校の校舎の美しさや充実した施設・設備に驚きを覚えました。生徒さんたちもとても生き生きとしており,すてきな学校でした。

2.巻頭言

産高生活を振り返って

兵庫県立篠山産業高等学校  安岡 太郎

 篠山産業高校(以下,産高)に赴任したのは5年前,28歳の時でした。それまで教師経験は全くなく,おまけに中学校の時以来,勉強したことのない「生物」を教えることに・・・・・・しかも「IA」でした。「高校で化学を教えたい」と意気込んで教師になった私には,大変ショックなことでした。また,産高は,地域の底辺校ということもあり,理化嫌いの生徒も多く,高校3年間で理科の授業は「化学IA」2単位と「生物IA」2単位しかありません。これだけで,どうすれば物事を科学的に考える力を身につけさせることができるのか,ずいぶん悩みました。
 その頃の産高では,「自分の席で静かに授業を受けさせること」が教師の第一の責務だったのですが,それがなかなか難しいのです。また,定期考査は解答するのに40分以上かかるものを必ず実施,テストの点数が悪いことは不認定(未修得)にならないようにどれだけ手厚く指導したのか・・・・・・等々,私の持っていた「高校観」とはまるで違う環境にとまどうことが多く,実験を多く取り入れた楽しい理科の授業とは程遠いものでした。とにかく最初の年は,授業のたびに緊張し,2,3度深呼吸してから教室に入る毎日で,授業が苦痛で仕方ありませんでした。
 2年目以降は,要領も得,また,化学の授業数も増えました。理科教育を通して,物事の善悪や基本的生活習慣,授業に取り組む姿勢,礼儀などを身につけさせるような工夫もするようになりました。もちろん,理科で感動を伝えたいし,科学の醍醐味を教えたいわけで,少しでも理科に興味を持ってもらうために教材や実験も工夫するのですが,生徒はマッチも擦れない,温度計も読めない,グラフもかけない,わり算もできない,小数点の計算もできない・・・・・・という有り様。とにかく「不思議やなあ」「なんでやろ」「すごい」「きれい」「くさい」・・・・・・という生徒の感動を大切にして授業をしてきました。
 この5年間,生徒指導部,剣道部顧問,商業科担任,理科主任,初任研指導教官,教務部と息つく暇もなくひたすら目の前の仕事をかたづけるだけで過ごしてきました。今年の4月には,初めての卒業生も送り出しました。まだまだ産高で学ぶこともあります。引っ込み思案で内弁慶な篠山っ子に愛着も持っています。でもそろそろ本腰を入れて「化学」を教えたい。5つの専門学科が共存する産高では,普通科の教師として教科指導に力を入れるにはどうしても限界があります。初任研から5年,そろそろ転勤も視野に入れて今後の教師としての自分自身について考えてみたいと思います。

3.連絡など

1. 研究会予定
 12月14日(金)理化学会発表会への参加に変えさせていただきます。
 1月12日(土)御影高校

2. 忘年会
 12月14日(金)理化学会発表会後 物理サークルの方々との合同で行います。

3. 2月講演会
 講演日 2月23日(第4土)
 講 師 文部省の初等中等教育局主任視学官
          江田稔さん
 場 所 武庫川女子中・高等学校
     (武庫川女子の芝崎先生・竹上先生に会場準備等のお世話をしていただきます。)
 テーマ 新学習指導要領実施直前ということで
     「学力とは何か,学びとは何か」

4.研究協議

1. 野依さんの講演
 昨年,愛知県で行われた全国理科教育大会での野依さんの記念講演「化学における右と左」のテープおこししたものを紹介。
 これは谷川先生(柏原)より高田がいただいたもの。今回ノーベル賞を受賞されることになった,銀鏡異性体のつくり分けの内容だけでなく先生の化学観が「社会や国のあり方」「個人のあり方」「教育の在り方」と言った感じで述べられていて,とても内容のあるものでした。

2. おもしろ実験ビデオの撮影
 「アンモニアと塩化水素の反応を利用した分子の拡散」
                     (よく教科書で出てくる実験です)
@ 1mの長さのガラス管を用意し,その中にpH試験紙を入れる。
A 濃塩酸と濃アンモニア水をしみ込ませた綿をそれぞれ管の両端から入れて様子を見る。

結果
 pH試験紙の色が,各気体分子の拡散とともに変わっていき,ぶつかり合ったところでははっきりと白煙が生じた。見ている者には,pH試験紙の色の変化から気体分子が拡散していく様子がはっきりとわかった。また,白煙が渦を巻いているところもしっかりと撮影できた。

3. 果物に含まれるたんぱく質分解酵素
                      兵庫県立舞子高等学校 東田 純一

5.報告その他

理科の散歩道 37〜44

6.第68回研究会のご案内

次回68回の研究会は12月14日(金)の理化学会参加に変えさせていただきます

7.第69回研究会のご案内

期日: 平成14年1月12日(第2土曜日)14時00分より
場所: 県立御影高校 化学実験室

 最寄りの駅からは,阪神御影駅から徒歩10分,阪急御影駅又はJR住吉から徒歩15分ほどで,国道2号線の北側に隣接しています。 なお,化学実験室は,正門南側の生徒通用門を通り,一番西側の特別棟(5階建)の4階にあります。 お車で来られる先生は,生徒通用門を通った第1体育館北側に沿ってお車を駐車して下さい。

8.編集後記

 今年も残すところ1ヶ月となりました。と言っても,今は期末考査の作製などで終わり行く2001年を振り返る暇もないかもしれませんね。
 この1年間,研究会では色々なことを教えていただき,また,理科の散歩道の執筆では,多くの先生方に助けていただきました。ありがとうございました。

 まもなく,サークルができてから7年が過ぎます。発足されたのは,丁度大震災の後のことでした。今思うと,この7年間で出会った前向きな先生方との情報交換により,自分の授業の幅が確実に広がり,理科教師としての現在の自分を支えてくれていると思います。また,「理科の散歩道」の連載や「青少年のための科学の祭典」などの活動を通して,理科を伝える喜びを感じています。
 教育現場では,新学習指導要領の実施により理科の枠組みも大きく変わろうとしていますが,どのように枠組みが変わろうと,根底にあるものは「生徒の体験に根ざした理科教育」でなければならないと思います。受験のための講義時間の確保に追われても,事故の不安を抱えながらも,実験を行う姿勢を持ち続ける事が大切であると思います。「理科はおもしろい」という思いを伝えていきたいと思います。


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