化学教育兵庫サークル 第21号


研究会の内容

  1. 期日・場所・参加者

    期 日:平成9年3月8日(土)14時00分〜17時30分
    場 所:神戸大学 発達科学部
    参加者:北川(御影),中澤(兵庫),内田(東洋大姫路附属)
        安岡(尼崎稲園),浅井(東播磨),芝崎(武庫川女子大附属)
        谷口(鳴尾),高田(舞子),中西,小林(神戸大学大学院生)
        
    
                            〔順不同,敬称略〕

  2. 巻頭言

           化学TAの3年間
                       兵庫県立尼崎稲園高等学校  安岡 久志
     新学習指導要領の実施以来3年が経過した。本校(単位制による課程)では,初年
    度より化学TAを2単位で開講し,主に実験室を活動の場として3年間の実践を積極
    的に試みた。
     前期(4〜9月)には,主に,化学TAの必修である「自然界の物質とその変化」
    を扱い,ここで化学の基礎的な知識や実験方法を身に付けさせた。また選択である
    「日常生活の化学」,「身近な材料」,「身のまわりの物質の製造」の中から年度に
    よって1つを選択して実施した。後期(10月〜2月)からは,必修である「化学の
    応用と人間生活」を取り扱い,環境問題を主にしたSTS(Science,Technology and  Society)
    的授業の実施を行なった(会報第20号pp20-21参照)。
     この3年間の経験から察するに,如何に生徒たちが日常の生活から遊離したものと
    して化学を捉えているかということを痛感した。化学を知識として理解してもそれは
    彼らにとっては教室の中だけで通ずる知識であり,日常の生活の根差した知識ではな
    いのである。従って,化学TAの授業の目標は,教室での知識がどれだけ日常の生活
    と結びつくかが課題である。すなわち,真の化学的素養を獲得することにあると思う。
    この目標を達成するため身近な教材を工夫して授業を構成したが,日に日に日常の生
    活との関りのなかで化学を意識する生徒が増えてきたように思う。我々教師の側も,
    大学受験を無視することができないとしても,本来の化学教育の意義を考え直し,よ
    り一層の教材の工夫を必要とするのを痛感する。
     先日,「理科の教育」3月号の広島大学武村先生の論文を拝見すると1995年の
    第3回IEA国際理科調査では,日本の中学生の理科嫌いは41ヶ国中41位で世界一の
    理科嫌いという結果が記載されている。我々教師が理科をどう教えるかで,生徒の理
    科への興味は変化する。では,教師は何をすべきか。どこまでできるか。不透明な部
    分も多々あるが,この3年間の実践を踏み台としてさらなる努力を継続していきたい。
    
    
  3. 連絡など

     ・第22回研究会
       4月12日(土) 14:00より  
       神戸大学発達科学部にて実施。
     
     ・東大の渡辺 正 先生の講演と協議を物理サークルとの合同で行ないます。
       5月10日(土)
       神戸大学発達科学部の予定
    
       ・上越教育大学 森川先生の研究会
      「化学の学校」と合同研究会をもちたいと考えています。
      
     ・パソコン通信,電子メールの集計を各会ごとに報告します。
      今後始められた方は,Emailのアドレスを中澤先生までご連絡下さい。
    
     ・第7回アジア化学会議
       化学教育シンポジウムの案内
       日時  5月17日(土)
             18日(日)
       場所  広 島
      詳しくは 安岡(尼崎稲園),中澤(兵庫)
      までご連絡下さい。
     
    
    
  4. 研究協議

    @ 実験「水槽の中で雪が降る」(中澤)

     NHKの「やってみようなんでも実験」からの実験であった。過飽和のチオ硫酸ナト
    リウムの水溶液に,チオ硫酸ナトリウムのほんの小さな粒を入れて刺激するだけで,
    結晶が現れ落ちていく様子は,まさに雪が降っているようだった。他に,酢酸ナトリ
    ウムにおいても同じような現象が起きた。
    
    
    A 実験「溶かしてみよう」(北川)
     溶解の機構を説明するのに,ただ単に,NaClはイオンに水分子が配位し水和イオン
    ができることにより溶解する。また,アルコールは水素結合により溶解する。と説明
    したのでは,なかなか興味を示さない。そこで,導入として考えられた実験である。
    結果として問題提起となり定着がよかった。
      溶媒:水,エタノール,石油
      溶質:NaCl,I2,パラフィン,エタノール
    の組み合わせで溶かした。
     パラフィンは水に溶けず石油に溶け,エタノールは水と石油のどちらにも溶けたこ
    とが生徒の興味を引いた。
    
    
    B 洗剤の成分と働き(安岡) 
     洗剤の成分,界面活性剤の種類,洗浄のメカニズム,シャンプーの化学についてわ
    かりやすくまとめてあり,洗剤について多くの疑問点の答が得られた気がする。
    
    C 実験「合成洗剤の残留テスト」
     洗濯等のすすぎの後に洗剤は残っていないのか? 6種類のケースに分けて残留テ
    ストを行なった。特に今回は,歯磨き後,口の中に発泡剤が残留しているかを実演し
    た。その残留の多さに驚かされた。この実験を発展させ,環境や人体の影響を考える
    ことができる。
    
    D 実験「デンプンの加水分解」(安岡)
     デンプン含有の糊を使い,手軽にデンプンのヨウ素デンプン反応や酵素アミラーゼ
    によるデンプンの加水分解を見ることができる。
    
    E 正極と負極の取り扱いについて(中澤)
     電気化学を教える際の「正極と負極」「陽極と陰極」についての解釈がなされた。
      酸化反応が起きる電極:アノード
      還元反応が起きる電極:カソード
    
    
    F 電気化学のアメリカの教科書の紹介(中澤)
     東京大学の渡辺 正先生の言われていることが既に教科書の内容として載っていま
    す。
    水の電気分解
     
    
    他に,塩化ナトリウム水溶液の電気分解が紹介されていました。
     またすべてに気体,液体,固体の表示がなされています。
    
    
  5. 第22回研究会のご案内

    期 日:平成9年4月12日(第二土曜日)14時00分より
    場 所:神戸大学発達科学部(旧教育学部)
        (教室については,当日正門を入ったところに案内板を置き連絡します。)
        *従来の場所から変更になります。G棟(今までのA棟より北西にある建物)
         の5階の実験室(G507)になる予定です。
          緊急連絡先 上地先生の研究室   078-803-0919
                斉藤研究室(中西さん)078-803-0928
        [住所] 神戸市灘区鶴甲3丁目11番
        阪神御影,JR六甲道,阪急六甲のいずれかにより,神戸市バス36系統鶴甲
        団地行きに乗車して発達科学部教育学部前にて下車
    
  6. 編集後記

     サークルの発足以来2年がたちました。毎月の研究会には,平均10〜15人が参
    加し,講演会には20人程の人が聴きに来られました。物理サークルとの交流会も定
    期的に行われるようになり,今回は他府県の化学サークルとの合同研究会がなされる
    ことになりました。少しづつではありますが,確実に会員の方も増え,現在45名の
    方の参加をいただいています。また,マレーシアへ栗岡先生,ケニアへ瀧川先生が行
    かれ,海外での教育活動の場で活躍されています。
     3年目は,「危険,おもしろ実験ビデオ」の作成を計画し実行することになってい
    ます。毎月の研究会を大切にし,研究会で得た「知識」と「やる気」を実際の授業に
    生かしたいと考えています。
    

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