期日・場所・参加者
期 日:平成8年1月13日(土)13時30分〜17時10分
場 所:兵庫県立御影高等学校 化学教室
参加者:北川・梅田・寺岡(以上御影),谷口(鳴尾),水野(加古川東),小西(小野
),浅井(東播磨),吉田(川西),安岡(尼崎稲園),春元(家島),瀧川(市
神戸工),高田(舞子),栗岡(加古川北)
〔順不同、敬称略〕
巻頭言
『1つの復習と10の新しいこと』
加古川東高等学校 水 野 博 文
「化学の学習会をしようと思うのだけれど…」という電話からはや1年が経とうと
しています。
化学の教師になって最初に先輩の先生から教えていただいたことは,「化学は身の
回りの物質・現象そのもの。なるべく物を見せること。実験が基本だ。」ということ
でした。そのことをずっと意識しながらも新しい知識の取り入れ・実験の工夫 がまだ
まだ不十分だったことを、この会の他の先生方の報告を聞いて実感しています。
同じ実験テーマや話題でも、取り上げ方によって生徒の関心も理解も全く違ってき
ます。会に参加させていただいていろいろ話を聞くうちに「そうか、次はこんな話を
してみよう」という気持ちになることが多くあります。
そんな気持ちにさせてくれるこの会にこれからも積極的に参加していきたいと思っ
ています。
研究協議
- @ ICオルゴールキットが、秋葉原で1個100円で市販されている。日本橋でも有るのではないか?見本を数個持参、配布。(栗岡)
- A 銀鏡反応とその利用について(栗岡・水野)
- 青少年科学の祭典;神戸大会』への出展から。銀鏡反応による実用的な鏡の作成についての報告。内容は、『化学と教育』誌の内容の追試に加えて、市販飲料水の使用による鏡の作成と、作成した鏡から銀薄膜を作成して利用するという2点の報告であった。
- B 授業に使用できる資料について(栗岡)
- 企業や各種の連盟・協会が出しているパンフレットには、授業に利用できるものが幾つかある。プラスチックに関するものの紹介が あった(4頁,参考パンフレット抜粋は5頁)。生活科学センターなどには、こういったパンフレットが揃っているのではないだろうか。プラスチックに関して、以下のような話になった。PETボトルの再利用については、カーペットや最近では衣料品も作られているとのこと(6頁参考)。ボトル4本(?)でセーター1枚が可能。荷造り用のポリプロプレン製の紐の切れにくさと裂け易さから、共有結合と分子間力の強さの比較。買い物袋(低密度ポリエチレン)をゆっくり伸ばすことにより,分子が並び切れにくくなること。PETボトルから実験室で繊維にできないか。
- C 水和水を求める(安岡)
- 硫酸銅(U),硫酸鉄(U)などの結晶の水和水の水和数(配位数)を求める実験の紹介。簡単にできて,正確に求められるということについて報告があった(実験プリントは,10頁)。硫酸銅(U)に関しては,無水の状態からさらに加熱して硫化物まで持っていってもおもしろい。
- D 導入などに使える演示実験等(高田)
- 原子の導入としての「クレオパトラの炭素」,溶解の演示として「雪雲の実験」の紹介。いづれも新生出版の書籍から。特に,「雪雲の実験」は,エチルアルコールを使う場合とメチルアルコールを使用する場合の比較,幻想的な現象など興味をひかれるものであった(詳細は11〜12頁)。
- E 化学ア・ラ・カ・ル・トより(谷口)
- 近畿化学工業会編、丸ノ内出版の「化学ア・ラ・カ・ル・ト 生きている知恵72」の資料をもとにして発ガ ン物質と抗生物質についての話題提供(詳細は8〜9頁)。話題にのぼったことを、以下に箇条書きで示す。ペリシリンはβラクタム、構造式のRの部分を変化させて新薬開発。αβγδεの記号は位置を表す。6−ナイロンの原料のカプロラクタムは、εカプロラクタムと書くべき。イボコロリはサリチル酸そのもの。サリチル酸は、醤油に防腐剤として使用されている。アスピリンは加水分解されてサリチル酸となって解熱作用。抗生物質には、ペニシリン系、グリコシド系、セラホスポリン系などがある。ストレプトマイシンやカナマイシンはグリコシド系。ペニシリンの作用は、細菌が分裂しようとするときに新しい細胞壁を作ることを阻害する。耐性菌は、ペニシリン中のペプチド結合を切断する 酵素を持っている。日本入試センターの『YOZEMI JOURNAL』1995年12月号に「医薬品の構造式は?」の記事があり、インドメタシン,イブプロフェン、ニフェジピン, ベラパミルの構造式が紹介されている(13頁参考)。
- F カイロと瞬間冷却パックをつくろう(北川)
- 科学の祭典であった、標記の実験を文化系3年生で実施した報告 があった。活性炭が必要なこと。水が必要なこと。市販品では、鉄が特殊な多孔質になっていること(7頁に転載参考)袋のメッシュが重要なこと(14頁参考)。
- G 見えない光と蛍光 (寺岡)
- 『科学の祭典』神戸大会で行った実験の追試があった。蛍光物質フルオレセインの合成と水酸化ナトリウムを加えることにより蛍光が増すことの確認。蛍光灯の蛍光物質や蛍石の紫外線下での蛍光の確認を行った(15頁参考)。
次回研究会の案内
期 日:平成8年2月10日(第二土曜日)13時30分より
場 所:神戸大学発達科学部(旧教育学部)(教室については当日正門を入ったとこ
ろに案内板を置き連絡します。)
【住所】神戸市灘区鶴甲3丁目11番
阪神御影,JR六甲道,阪急六甲のいずれかより,神戸市バス36系等鶴甲
団地行きに乗車して発達科学部(旧教育学部)前にて下車。
内 容:話題提供による研究協議
編集後記
今回の研究会は,御影高校の化学実験室を借りて行いました。グランドの中に建つ
仮設の校舎・実験室,残ったわずかなグランドで部活動をしている生徒諸君の姿,解
体や修理に入った校舎,・・・・・・・・・。あの未曾有の災害からの約一年間の御
影高校の先生方・生徒諸君の大変さ,努力,頑張りといったものがひしひしと伝わっ
てきます。我々も理科の教師として,人として今後何ができるかを真剣に考え,行動
する必要があると改めて考えさせられました。
『今日は,話題がないのではないか?!』とみんなが思って(ほとんどの方が「話
題がなさそうなので・・・」という前置きのもとに始まりました)少しずつ資料を持
ち寄った結果,時間をオーバー(終了時間の設定はしていませんが・・・)し,帰る
頃には薄暗くなっていました。毎回このようであったらと思いました。今回は,話題
の主役が洗剤から薬と合成樹脂に移りました。今回の中から,何か発展できればいい
のですが・・・・・・・・・
T&K《平成8年2月1日》