化学教育兵庫サークル 第7号


研究会の内容

  1. 期日・場所・参加者

    期 日:平成7年12月9日(土)13時30分〜16時30分
    場 所:神戸大学 発達科学部(旧教育学部)A棟中会議室
    参加者:北川(御影),水野(加古川東),浅井(東播磨),吉田(川西),
        中澤(兵庫),春元(家島),安岡(尼崎稲園),小西(小野),小林(園
        田),中(鈴蘭台),栗岡(加古川北),平田,中山,小林(神大大学院)
        野上,上地(神大),恩藤(常葉大)
                             〔順不同,敬称略〕

  2. 巻頭言

    『学ぶ意欲のある教師になるために』
                         県立兵庫高等学校 中澤 克行  ・銅や銀はなぜ抗菌作用を示すのか。  ・平面型ダニエル電池で亜鉛板が黒くなるのはなぜか。  ・純粋な亜鉛は塩酸に溶けないといわれるが,なぜなのか。  ・備長炭電池の正極はどういう反応をしているのか。  ・アルミなど金属の鍋などで煮たとき金属は溶け出していないのか。特に他の金属   が触れているときは電池になっているのではないか。  ・アルカリイオン水はどんな水なのか。  ・水分子のクラスターはどうなっているのか。  ・炎色ライターは何で発色させているのか。    先日の研究会で出た,話しのいくつかです。   授業や実験をしていて,なぜなのかと思うことが多々あります。今までは忙しさ  に負けて,ついついそのまま忘れてしまうことがほとんどでした。しかし,研究会  に入れさせていただいてからは,調べてみようという気持ちがわいてきました。そ  れを話題にすれば多くの先生方からお話しを聞かせてもらえるからです。教師自ら  が意欲的に研鑚している姿を見せることが,学ぶ意欲のある生徒を育てていくこと  になるのではないでしょうか。次回がまた楽しみです。
  3. 連絡など

    ・8回研究会は、1月13日(土) 13時30分より御影高校化学 教室にて実施(神戸
     大がセンター試験会場のためにて)
    ・上地教授より、数研「教材研究化学」No.33‘身のまわりに見られる幾何異性体とそ
     の性質’の資料提供あり
    ・野上教授より、共同研究(企画段階)の依頼あり。内容は独・日の化学教育の比較
     研究・実践・結果分析を実施予定。
    ・常葉大学の理科教育の恩藤教授 ,園田学園高校小林ひかり教諭が初参加。
    ・北川(御影高校)よ  
      @第165回化学への招待,高等学校出前講演会について。(数に制限があり,
       申し込みが遅いと次年度になるとのアドバイスあり。
      A第12回高等学校・中学校化学研究会発表会の案内について
    ・山中(神戸大学院)より教材へのコメント依頼。
        (内容)「昆虫を利用した新しい農業」と題して、生物農薬や帰化植物・遺伝
            子汚染などを取り上げた、生物分野を中心としたもの。
  4. 研究協議

    @ 合成洗剤の製造について (安岡)
    
       高級アルコール系洗剤の実験室での作成には、一般には水酸化ナトリウムや炭酸ナ
    トリウムが使われている。しかし、この方法によると,ペースト状のものとなり,市
    販品とは異なったものになる。
     炭酸水素ナトリウムを使用することにより,粉末状の市販品に近いものができるこ
    とを,合成した物を持参して説明があった。(参考資料5頁)
     実験室で作った合成洗剤は,カルシウムイオンで沈殿が生じる。これは未反応の硫
    酸との反応なのか?合成洗剤自身もカルシウムイオンと沈殿を生成するのか?市販の
    合成洗剤が沈殿を作らないのはビルダーの働きとの説があるのだが・・・。
     「洗剤に使われる界面活性剤について」と題した,大阪府薬雑誌1991年5月号
    からの参考記事の提供があった。(6〜8頁)
    A セッケンと合成洗剤について(中澤)
    
       セッケンのBODの値の大きさについて;
    
     BODで把捉される有機物、生分解性の
    汚染物質だから、その大きさが環境に悪いとは 一概に言えない。トリクロロエチレンなどはB
    ODでは測定できない。家庭排水をきれいにすることは必要である。しかし、水汚染
    の主犯は家庭排水であるという考え方に疑問を投げかけている専門家もいる。
           (参考図書;小林勇著「恐るべき水汚染」合同出版,1989、9頁 に抜粋掲載)
     
     リンスのメカニズムについて;
                                      
      花王生活科学研究所「ヘアケアの科学」裳華房1993を参考にしてのリンスやシャン
    プーの説明有り(詳細は10〜11頁参考)。髪の毛は,負に帯電とのこと。髪の毛では
    COO->NH3+であろうか。                                          
     水汚染の話から、アルカリイオン水についての話有り。効果は化 学的にはどうだろ
    うか!? 
     ミネラルウオーター、磁化水、πウオーター,etc.いろいろな水があり、科学的 な(?)説明がなさ
    れているのですが……………。高校の化学の学習 を通して、一見科学的と見られるも
    のについて、真偽が判断できる力を養う必要性を感じます。 
    
    Bその他の話題。
      ・ろ紙を使用して、ダニエル電池を作ると、亜鉛版が黒くなる。この黒い物質は何
      だろうか?                                    
       ・11円電池について;乾電池の分解で得られた、酸化マンガン(W)を10円玉と
          1円玉の間に 食塩水と共に入れると起電力が 高くなり、2つ直列にした22円 
         電池でICオルゴールを鳴らすことができる。
       ・塩化銅(U)を電気分解したあと,これでICオルゴールを鳴らすことが可能。
       ・備長炭電池電池の反応は?表面積の大きな備長炭の中の酸素の反応であろう。
                                                            
        −極;Al→Al3++3e-  
                                          
        +極;O2+2H2O+4e-→4OH-  
                                                          
       ・イオン化傾向で考えると、Znは塩酸と反応し,水素を発生するはずだが,純粋
      な亜鉛では反応しない。なぜ?
     ・銅や銀には,抗菌作用があるとのことだが,なぜだろうか?そのメカニズムは?
     ・粉ミルクには,硫酸銅が入っている!有毒な砒素も体に必要!?海藻にも含まれ
      ている。
     ・アルミ鍋で煮炊きしたとき,アルミニウムが溶け出しているのでは?特に他の金
      属と接していれば電池が生成しているはず。
     ・アルミ缶は,表面に樹脂被膜あり。取る方法は?希塩酸に1日つけておくと,被
      膜が浮いてくる。HFで被膜が取れる。
       表面に樹脂被膜をつけたアルミ缶はどのようにして作るのだろう。
     ・アレルギーと社会の工業化の関係についての話し。
     ・知的遊びができる授業ができないか。
       典型的な電池の原理を教える。
            ↓
         何でも作らせる。
            ↓
         理論を考えさせる。
     ・昭和63年度電気通信大学の入試問題の話題
    
  5. 《シンポジウム参加報告》

     -------------------------
    ]-                      -
     -  人間にとって最適環境とは?     -                                
     - 21世紀の科学技術社会のライフスキル -                                  
     -                                          -
     -------------------------
    
      12月10日(日)午前10時より午後4時まで、神戸大学滝川記念学術交流会
    館にて、下記の内容のシンポジウムがあったので報告します。
                              
    1.現代社会における科学技術の位置づけ  中島 秀人 (東京工業大学)
    
    2.科学技術社会に生きる人間に求められるライフスキル      小川 正賢 (茨城大学)
        
    3.これからの企業社会に生きる人間に求められるライフスキル 
             (園井 洋一 (神鋼ヒューマンクリエイト)
    
    4.震災時の生活者に求められたライフスキル     城 仁士 (神戸大学)  
    
    5.21世紀の健康教育とライフスキル      川畑 徹朗 (神戸大学)     
    
    6.情報技術社会に求められるライフスキル   永岡 慶三 (放送教育開発センター)
    
    以上の提案の後、三宅征夫(国立教育研究所)、片平克弘(埼玉大学)、恩藤知典(常葉大学
    )、野上智行(神 戸大学)の各先生方を中心として活発な議論が行われた。兵庫県からの
    小・中・高教員、研修所指導主事、全国各地からの大学関係者等の出席があり有意義
    な会であった。
  6. 次回研究会の案内

    期 日:平成8年1月13日(第二土曜日)13時30分より
    場 所:神戸大学発達科学部(旧教育学部)(教室については当日正門を入ったとこ
        ろに案内板を置き連絡します。)
        【住所】神戸市灘区鶴甲3丁目11番
         阪神御影,JR六甲道,阪急六甲のいずれかより,神戸市バス36系等鶴
         甲団地行きに乗車して発達科学部(旧教育学部)前にて下車(バス代20
         0円)。
     
  7. 編集後記

     明けましておめでとうございます。様々な不安を抱えながらも発足した研究会でし
    たが,多くの方の協力によりほぼ軌道に乗せることのできた昨年でした。会の活動も
    2年目に入り,会報もこの号からは,”Vol.2”となります。「ChEC Hy
    ogo」の末永い活動とさらなる発展を祈念して1996年の第1号(通巻第7号)
    を送り出したいと思います。
     次回研究会は,センター試験の関係で会場が上記のように変更になります。御影高
    校にはご面倒をおかけしますがよろしくお願いします。
     年頭に当たって,「GIVE & TAKE」という言葉がありますが,「TAK
    E」だけにならないよう「GIVE」できるよう,今年は頑張っていきたいと考えて
    いきたいと考えています。
                           T&K 《平成8年1月1日》
    

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