チョウゲンボウ 07.04.17





チョウゲンボウのお宿



 おとぎ話「舌切り雀」で、おじいさんが探しまわった“雀のお宿”は、竹やぶの中でした。それでは、“チョウゲンボウのお宿”はどこでしょう。深い山の中、それとも生い茂った草むらでしょうか。実はこんなところを常宿にしています。

 ここは、昨年7月22日に氷上IC〜和田山ICの一部区間が開通した北近畿豊岡自動車道です。南但馬自然学校を訪れた子どもたちも、外に出かけるときには、マウンテンバイクなどでよくこの下を通ります。チョウゲンボウはこのできたばかりの人工物をねぐらと決め込んだようです。
 辺りが薄暗くなり始めると、チョウゲンボウがお宿に帰ってきます。まず道路の端にある、プルボックスという金属製の箱にとまり、バスやトラックが近くを通ってもさほど気にせず、しばらく遠くを眺めています。「あ〜ぁ、あのとき、もう少し後ろから回り込んでいれば獲物が捕れたのになぁ・・・」などと、一日の反省でもしているのでしょうか。いよいよ日が落ちると、道路に降った雨水を流すパイプの留め具に移りご就寝です
 このお宿はねぐらとしてだけではなく、悪天候のときには待避場所としても利用しています。なにせ鉄筋コンクリート製の豊岡道ですから、少々のことではビクともしません。チョウゲンボウにとっては安心できるお宿ですね。

 本来、チョウゲンボウは断崖などをねぐらや営巣場所にしていましたが、近年、都市部ではビルなどの人工物に巣をかけることがあり、南但馬自然学校周辺で生活しているこのチョウゲンボウにとっても、豊岡道はおあつらえ向きのお宿だったようです。チョウゲンボウの他には、“イワツバメ”も陸橋や橋の裏側を利用しています。彼らは自らを取り巻く環境の変化にうまく適応し、生き抜く術を身につけています。

 この北近畿豊岡自動車道が開通し、京阪神から南但馬自然学校へのアクセスは20分以上も短縮され、人、物、文化等、都市部と地元とのこれまで以上の交流が期待されます。そして豊岡道の地元の評判はというと、「ひろうて走りええ道やなぁ(訳:広くて走りやすい道路ですね)」「神戸や大阪がちこう感じるわな(訳:神戸や大阪が近く感じます)」など上々です。
 もしも“ききみみずきん”が手に入れば、チョウゲンボウにも住み心地をたずねてみたいものです。きっと彼はこう答えるでしょう。「ほん、ぐええがええわー(訳:本当に具合がいいですよ)」

文責 増田 克也


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