チョウゲンボウ 06.12.12





双眼鏡の眼を持つ野鳥



 遠くの電線に、見慣れない鳥がとまっているのを見つけました。それはカラスやハトではなく、シルエットからタカの仲間と予想しましたが、雨模様の早朝のこと、名前まではわかりませんでした。そ〜っと、警戒されるぎりぎりの距離まで近づいてみると、それは2年ぶりに出会う“チョウゲンボウ”でした。

 冬になり、南但馬自然学校の近くの田んぼで、チョウゲンボウが見られるようになりました。東日本では年中見られ、子育てもしていますが、本校周辺には渡り鳥として冬に訪れる野鳥です。それでは、タカ目ハヤブサ科に属するチョウゲンボウの様子を少しのぞいてみましょう。

 チョウゲンボウは高い所がお気に入りです。見晴らしのいい場所から下の田んぼをじ〜っと見つめ、エサを探しています。おや、電柱のてっぺんにいたチョウゲンボウがエサを見つけたようです。次の瞬間、田んぼをめがけて一気にダイビング!写真を見ると、羽をすぼめて上手に尾羽でかじをとっている様子がわかります。獲物を足でつかむと調理場まで運んでいきます。う〜ん残念、後ろ姿で獲物は見えません。さらに食事の様子を見ていると「誰だ、ぼくの食事をのぞいてるのは?」と言わんばかりにふり返ったチョウゲンボウとしっかり目が合ってしまいました。観察してみると、チョウゲンボウの獲物はバッタなどの昆虫がほとんどですが、時にはネズミや小鳥までも襲うことがあります。

 獲物を捕らえるための最大の武器は、がっしりとした足と鋭い爪です。足の握力はとても強く、一度つかんだ獲物は逃しません。くちばしも、植物性の餌を食べるスズメなどとは異なり、引き裂くことに有利なカギ形をしています。そして第三の武器は目です。いくら鋭い爪やくちばしを待っていても、獲物を見つけることができなければ何の役にも立ちません。チョウゲンボウは獲物のわずかな動きも見逃さない、とてもよく見える目を持っています。猛禽類の視力は人間の8〜10倍といわれていますから、ちょうど人が双眼鏡で見るのと同じくらいの能力があります。

 ここまでお話しすると、チョウゲンボウは猛々しい恐ろしげな動物のように思われるかもしれませんが、実際はとてもかわいい野鳥です。体長はハトより少し大きい程度で、トビと比べるとこんなに小さく見えます。大きな瞳とその周りの黄色い縁取りもチャームポイントです。
 みなさんの近くにも、チョウゲンボウがやって来ているかもしれません。開けた田んぼや河川敷の電柱など、見晴らしいい場所を丹念に探してみてください。クリクリした大きな瞳を輝かせたチョウゲンボウに出会えるかもしれませんよ。
 
 文責 増田 克也

 
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