校長先生の授業 5月6日までの約束⑥

みなさん、元気ですか。連休が終わりました。みなさんと約束した本を10冊読む!5月4日に達成しました。みなさんに伝えるこの授業も書き終わりました。(正直、結構ハードでした)。HPにはちょっとずつアップしますね。さて、みなさんは具体的な目標を達成できましたか。5月31日まで臨時休業が延長になりました。また、具体的な目標を立てて、頑張りましょう。学校再開したら、どんなことを達成したか是非校長室に報告に来て下さい。 では、6回目のミニ授業です。

今回は「南極のペンギン」(著者:高倉 健  出版社:集英社文庫)です。

 この本は、本校の先生に勧めていただいて読みました。著者の高倉健さんのことを皆さんはご存知でしょうか。残念なことに、2014年に亡くなられています。私たちの年代くらいの人は知らない人がいないくらい、日本映画のスーパースターです。よく高倉健さんの映画を観た後に映画館から出てきた人は、みんな健さんになったような感じで肩で風を切るように、だれもが高倉健に成りきって映画館から出てきたと言われていました。実は、私は健さんの映画は全部観てる大ファンなのです。そんな高倉健さんは、若い頃から世界の色々なところに行かれておられます。海外生活の方が長いので、なかなか連絡も取れないと聞いたことがあります。そんな海外での何気ない出来事を、絵本仕立てで描かれているのが本書です。
 まずこの本を読んで感じた事は、今までの授業①〜⑤まで紹介した本とは違い、とてもゆっくりと時間が流れていることです。例えば、アフリカの少年のことが書かれているシーンでは、その少年は地べたに座り込んで何やらじっとしているという描写です。どうやら砂嵐が来るのをその姿勢でじっとして待つことが小さい頃から当たり前のようになっているということだそうです。親が助けたり他の人が手を貸したりするのではなく、そのままほったらかしにするそうです。砂嵐にうずくまる少年を、親も現地の大人たちも助けず、砂嵐に耐える力を子供の時から身に付けるためだそうです。健さんは、「大人たちが君を置いてきぼりにするのは、それが大人の優しさだからだ」と言っています。
 また次のようなシーンもありました。題名にもなっている南極のペンギンのシーンです。映画「南極物語」を観た人はいますか。犬ぞりのタロウ、ジロウが有名です。映画は本当に過酷な中で撮られていましたが、そんな時でも健さんは南極大陸にいるペンギンを見て、次のようなことを思われたそうです。首だけ動かして石を積み上げるペンギン、気に入った石があるまで氷の山や坂を超えて探し回るペンギン、石を横取りされて喧嘩を始めるペンギン。まるで人間を見ているようだ。いい加減な奴、こだわるやつ、喧嘩っ早いやつ。ひょうきんなやつなどなど・・人間とそっくりだ、と。 「命って似ているのかな」と言う言葉は本当に健さんらしい言葉です。
 この本を読んでもう一つ感じた事は、想像するということです。今まさにこのような状況で、オンライン等リアルタイムを大事にする時代です。でも、色々なことを想像することはとても大切なことだと思います。例えば、先程のアフリカの少年やペンギンのシーンを読んでみなさんは想像をしましたか。「あの人は元気でやっているのかなあ」とか「元気かなぁ」と言う表現を「思いを馳せる」といいます。ちょっとわからない人は、辞書で調べてみてください。この「思いを馳せる」ことが皆さんあるでしょうか。LINEや電話など、今、すぐ、リアルタイム、にあまりにも偏っている気がします。ゆっくりとした時間の中で想像することが、この本を読んでいるととても大切なように思えてきます。こんな時だからこそ、温かなゆっくりとした気持ちになることが大事なのではないでしょうか。想像してみましょう。今日の授業はこれで終わります。
 


  

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