校長先生の授業 5月6日までの約束②

この写真は、ケニアの日本人学校から昨年戻られた先生からいただいたハンドメイドのキリンです。ケニアでは、こんな感じのものがたくさん作られているようです。キリンは首を長くして子供たちを敵から見守ります。
まさに今の気持ちかなあと思いここに載せています。校長室の机の上にいるので、学校が始まったら、見に来てください。
では、2回目のミニ授業です。


 
 今回は、「阪神園芸 甲子園の神整備」(著者:金沢 健児 出版社:毎日新聞出版)


   著者の金沢健児さんは甲子園球場のグラウンドキーパー、すなわち神整備と言われる甲子園球場のグラウンド整備の主任として活躍され、グラウンドキーパーのチーム化をはかり、阪神タイガースの監督や選手のみならず、他チームの選手や広く野球ファンの絶大な信頼を得ています。試合前の整備は仕事のほんの一部ですが、出来上がったグラウンドは足を踏み入れるのも迷うくらいまさに芸術品です。私も高校野球をしていましたが(怪我の連続でした)、高校野球を経験した人は練習の1割ぐらいの時間はグラウンド整備だったとみんな思っているのではないでしょうか。そのくらい野球とグラウンド整備は切っても切り離せません。さらに、プロ野球の本拠地として内野は全面黒土(黒色の柔らかい土)、外野が全面天然芝の球場は、世界広しといえども甲子園球場だけです。
  今回は二つのことに心を動かされました。まず一つ目は、甲子園球場は水はけが良いグラウンドであるのは広く知れ渡っていることですが、それ以上に大切なのは、水をいかに適度に含ませるか。すなわち、吸水保水能力だそうです。そのための決め手は、2月のキャンプが始まる前の「天地返し」という作業が最も大切な作業になるということです。この作業の出来不出来で1年間のグラウンドの善し悪しが決定します。天地返しとは、30cm位畑のように耕す作業です。黒土と下にある砂が1年使うとバランスが悪くなるため、空気に触れさせ、元の状態に戻すことです。これに近いことは高校野球のグラウンドでもやります。ただ大事なのは、いつ戻すか、どう戻すかだそうです。雨を待ち、その後ここぞというタイミングで戻す。そのタイミングは長年の勘です。ただ、新しい土にするのではなく、100年前からそこにある土に新しい土を少しずつ足して混ぜる。何だか串カツのソースのような感じですね。確かおいしい天ぷら屋さんの油やラーメンのだしも同じようなことを聞いたことがあります。いずれにしても、ちゃんと手をかけて育ててやれば、水はけも水持ちも良いグラウンドになるということですね。そんなグラウンドを作って、選手に「今日のグラウンド最高ですね」と言われると本当にうれしく、選手に喜んでもらえるグラウンドこそ良いグラウンドだと西村さんは確信されています。私たち教員も生徒に「今日の授業むっちゃわかった」と言ってもらえる授業ほどうれしいものはないのと同じですね。
  そして二つ目は、甲子園球場だけでなく、時々色々な高校のグラウンドに行ってグラウンド整備をしたり整備の仕方を野球部員に教えたりしている事もあるそうです。そのとき、日頃から野球の技術だけでなく、グラウンド整備にも試行錯誤してきた野球部員は、整備の技術の飲み込みも早いそうです。高校のグラウンドも選手一人一人の日々の些細な心がけで大きく変わると述べられています。
  よく考えてみると、勉強は「何でそうなるのかな」の連続です。小さい頃はそうやって楽しく勉強していたのがいつしかやらされる勉強、ただこなすだけの勉強になりがちです。今は休業中の課題もあるけれど、その中で「なんでそうなるのかな」と試行錯誤しながら是非勉強してみてください。これで今日の授業は終わりです。


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