ASARUT ・ COMPAILA
アサルト ・ コンパイラ

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第五章

「THE VACATION? 変わった仕事」

「がんがんがんがん……」
「なによ、がんがんうるさいわね… 頭が痛いのはわかったから…」
「ふう… あの状況下で助けの手が差し伸べられないとはどうゆうことだ? 見て見ぬふりをするとはいい度胸してるじゃないか……。ナッシュもさっさと行ってしまうしなぁ… 仲間とは思えない行動だ。」
「い、いや、だってですねえ… あんな状況下では… ねえ、アリスさん?」
「ちょっと! わたしに話しを振らないでよ。」
「しかし、あの時ぼくを連れて行ったのはアリスさんじゃないですか。」
「だ、だってえ……」
「あ――! もういい!」
 俺は現在、二日酔いだ。なぜこうなったか、これまでの空白の時間を振り返ってみよう。

  昨日の晩、性格を一変させたルビアさんによく分からない即興の歌をむりやり歌わされた後、大酒宴会が開かれ、当然俺も飲まされた。言っておくが、飲んだのではなく飲まされたのだ。
大の男が二・三人よってたかって俺の口に流し込んできたのだ。普通ここで誰かが止めに入らなければならんのに、誰もヘラヘラ笑ってるだけなのだ。特に親! なんであんたらも泥酔してるんだ? しかたなくアリスやナッシュに助けを請おうとしたが、「ごめん!」などとぬかし、早々に立ち去られてしまった。しかし、ナッシュは残っていたので助けを求めると、こっちに来ようとしてくれたので助かった、っと思ったら、アリスがつかつかと歩いてきて足早にナッシュを連れ去ってしまった。
 あの後2時間ぐらいだろうか… よく耐えたもんだ。どれだけ飲まされたか想像もつかない。

「でも、終わりよければ…って言うじゃない。」
「こんな状況で良いはずがないだろうが…」
「ははは……、でもね、あんな状況のお姉ちゃんをどうにか出来るはずがないでしょ。ああ見えても恐ろしく強いんだから… あんな理性が働いてない時に邪魔したらいったいどうなるか………」
  たしかに、想像するだけでも恐ろしい。
 後で聞いた事だが、ルビアさんはとても腕が立ち、強力なネイティアルを従えているという話しだ。昔、アリスが小さかったころ、二人でハイキングによく行ったらしいが、ある時ゴブリンの群れに取り囲まれたらしい。その時、ルビアさんは数十体はいたゴブリンを一瞬で吹き飛ばしたらしい。しかも、山の一部と友に……… 恐ろしい話しだ。ルビアさんを敵に回す事は即死を意味する…
 今回は、自分の命が奪われなかった事を祝して、アリスとナッシュは恩赦としよう。


「へー。大きいんですねえ。人材派遣業でここまでのものは始めて見ました。」
「まあな、ここいら近辺では最大手だろうからな。」
  俺達は今、会社に来ているところだ。ガンガンする頭を引きずっての出社だ。これには訳がある。人材派遣の仕事は基本的に自由業なんだ。要は、仕事が欲しい時は本部に行って、届いてある仕事を選んで申し込むという形になる。だから、直接俺達に通知が来るということは、ちょっと知られてはならない仕事とか、ヤバイ仕事が多くなる。だからしかたなく行く事になったんだ。
「しっかし、なんで私達なんかに匿名通知なんかが届くのかしら」
「たぶんナッシュが入ったからだろうな。」
  こないだナッシュを登録するために連れて来た時に、担当の部長さんが、「へー、君があの高名な? いやあこっちとしても鼻が高いよ。よろしくな。」などと言っていた。後で部長さんに聞いて見ると、傭兵の中では結構なやり手らしくて、今まで一〇〇パーセントの迎撃率を誇っているらしい。それに、ナッシュには何か力が隠されているらしく、訳ありの強さらしい。ま、とにかく戦力アップした事で今まで頼めなかった仕事を頼めるチームが増えたからだろう。喜んで良いやら悲しんで良いやら……

「テリー・ラングリッサーさんですね。三番の部屋でお待ちください。」
 受け付けの嬢ちゃんに案内された部屋はとても綺麗なものだった。こりゃああんまり言い仕事じゃないかも……
「おう。またせたな。」
「まさかドラゴンを倒せなんて事はないでしょうね?」
「そんなことお前らに頼んでもしょうがないだろうが。ナッシュぐらいのが一個師団必用だ。」
 そんなに真剣に答えるなよ。冗談に決まってるだろうが……
「それで部長さん、今回の仕事は? すぐのやつだったら私は無理よ。今、もろに学校だから。」
「その問題は即クリアだ。」
「は?」
「結論からいうと、休暇を取ってもらう事に等しい。」
「な… 休暇?」
 これはまさか…… リストラってやつか? なんてことだー。半年しか勤めてないのにー!
「おいテリー、何をそんなに悲壮な顔をしているんだ? なんか違った方向に考えてないか? 別に退社しろって訳じゃないんだが……。」
 なんだ、違うのか。
「じゃああれかしら? ゆーきゅーきゅーかっての……」
「違う違う。ちゃんと仕事はある。」
 がっくり……
「つまりだ、君たちにはある人を護衛してもらいたい。と言うのは仮の任務でな。ま、彼女にしてみれば君たちは足手まといなもんなんだが…… 彼女を付け狙う者達がいてな、その者達の正体をつき止めることが任務だ。」
 …なんかややこしい任務だな……
「それで、その護衛する人は誰なんだ?」
「ルビア・トレシャーナ外交官。アリスちゃんのお姉さんだ。」
「はあ…、そんなの必要無いじゃない。私達が護衛して欲しいぐらいだわ。」
 まったくだ。俺達が束になってかかっていっても勝てるかどうか… 山を吹き飛ばす人だからな。しかし、ルビアさんを狙うとは…その人達も可哀想なもんだ。返り討ちにあう事は間違い無いな……
「でも、お姉ちゃんには傭兵がいっつもお供してるじゃない。その人達はどうしたの?」
「彼らにも休暇をやらねばなるまい… 普段であれば3組で編成された交代制なのだが、上手い具合に…とはいえんが、まとまって休みを取られてしまってな。どこか手の空いてる兵を探そうかと思ったんだが、ちょうどナッシュが入ったってことでちょうど手頃だろうって事で君らに頼むんだ。身内だし、警護とかは怪しまれるに出来るだろう。」
「なんと安直な…」
「ばかいえ。これでも結構悩んだんだぞ。まあ、しかしだ、あのルビアを狙う輩がいるとはな…… そんなに死に急がんでもよかろうにな。ほい、これがルビアさんに宛てた書状だ。」
「ほいほい。で、そいつらを見つけたらどうすればいい? 斬り捨てていいのか?」
「あのなあ、なんでお前はそう血気盛んなんだ… いいか、これだけは守るように。
1・彼女の護衛をしてる事がばれない様に!
2・基本的に捕まえるように!
3・緊急を要する場合にのみ、始末するように!
 以上のことだ。」
「はいはい。」
「いいか、勢い突いて深追いせんようにな。どんな奴かは知らんが、血迷っていなければそうとう手強い奴だろうからな。」
「わかってるって。で、前ギャラのほうは…」
「一応一万ディア渡しとくが… 遊びに使うなよ。無くなったら自腹だからな。」
「はーい。」
「はーい。」
「……。」
「おいっ、なっしゅ。なんだよ、黙っちゃって…」
「いや……、なんか二人とも使いこんでしまいそうだから……」
「うっ…」
  す、するどい。
「それは危惧することだな。これはナッシュに持たそう。」
「部長! リーダーは俺ですよ!?」
「財政のリーダーはナッシュが適役だろう。だいたいお前達二人に前金を渡してそれがちょっとでも残った事があるか? いつも全額使い込むだろうが。」
「いや、あれはですね。全額フルに使って全力で仕事に取り組む姿勢の現れですよ。」
「これは噂だが……、アリスとテリーがカジノで盛り上がっているのを見たと言う証言もあるんだがな…」
「ガセネタです!」
「そうか…、それならば良いんだが……… 心配だが、頼んだぞ。何か起きたらすぐ報告しに来いよ!」
「わかってまーす。」
「それではごきげんよ―。」
 やった。これでちょっとリッチな生活が約束されたぞ。
「本当に大丈夫かねぇ………」
「何か言いました?」
「なんでも無い。さっさと行け。」
「はーい。」
 かくして、取り合えずルビアさんに書状を渡しに行くことにした。

「ふーん。まあ、みょーな気配がウロウロしてたのはきずいていたけどね。まさか、狙われてたとはね……… 心当たりがありすぎてわかんないわ。」
  おいおい。どんな日常をおくってきたんだ?
 案の定、ルビアさんは寝ていたが、昨日の恨みも込めてたたき起こした。仕返しの恐れもあったが……
「んー、じゃよろしくね。ボディーガードさん。じゃ、もうちょっと寝るわ… グー」
「おいっ! それだけかよ? こんな危機的な状況なんだぞ。」
「お姉ちゃんって危機感が欠落してるのよ。たぶん、殺されたとしてもきずかないと思うわ。」
「…悲惨な性格だな。」
  さてと、これからどうしたもんか……
「あの、この一万はどうしましょう…」
「お前が管理するんだろうが。なんだったら俺が持っとこうか?」
「だめですっ! 無駄使いされたら部長さんにあわす顔がありません。」
「違うんだよ。諸費用に使うんだよ。」
「……その諸費用には何が含まれるんです?」
  ぎく…
「えーと、新しい剣を買ったり、服を買ったり、闇市でだなあ……」
「それって、テリーさんの買いたいものじゃないですか… 一番必要なのは食費と宿代だと思うんですが……」
「ええい、うるせえ! このパーティーのリーダーはこの俺だー!なんか文句あっか?」
「い、いえ、ありませんけど……」
「けど、なんだあ?」
「給料はちゃんと残しといてくださいね。」
「……… ああ、そうか。」
 そっか。みんなの給料も含まれてるんだっけ? あれ、でも前金だから関係無いんじゃ? いやいや、均等に分配するって法律だったな。破ったら牢屋行きだ。あぶねぇ……
「ねー。おなかすいたー。」
「ん? 十二時五十分… もうこんな時間か。」
「ねーねー、R&Bに行こうよ。お金ならあるわ!」
「そりゃあいい。2ヶ月ぶりだなあ。」
  R&B  (テリーたちの町で有名な高級レストラン。良い材料を使ってるか、シェフが有名人なのか…… それは定かではないが、とにかく格式の高いレストラン)
「ちょっと……、いいんですか? 無駄使いになります!」
「めっちゃ美味いんだぜ。いっぺん食べたらやみつきになるぞ。」
「へえ、そんなにすごいとこなんですか? じゃあ一回だけ行って見ようかな…」
  乗りのいい三人はその昼飯だけで、三千五百ディアを浪費するのだった。


「ふう、食った食った。」
「だから、やめようって言ったのに…… こんなに浪費してしまって。」
「何言ってんだよ。ナッシュだって(こりゃおいしい、あっ、こっちも頼んでいいですか? えーと、サンダンメンと……)ってたくさん食べてたじゃないか?」
「不覚でした、あんなに美味しいとは……… 理性を失っていました。」
 ふっ… しょせん、ナッシュも人の子よのう……
  ガチャ
「あれお姉ちゃん? 起きたの?」
「まーね。あんた達に伝えとくことがあって……」
「なんだよ?」
「あのね、1週間後の14日に旅行に行くから、そのつもりで。アリスもその辺から学校休みでしょ? じゃ。」
 そして、ルビアさんは去って行った。
「え? なんか急な話だな…。」
「あの、いまいち話しが見えてこないんですが……」
「んーっとね、お姉ちゃんは旅行に行くのよ。だから、護衛の私達もついて行かないといけないのよ。」
「なるほど。そりゃそうですね。」
「なんだ。そんな事か………」
「えーーーー?」
  なんか、よくわかんなくなってきたぞ………

CONTINUE


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