ASARUT ・ COMPAILA
アサルト ・ コンパイラ

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第三章

「BE OBEY! 召喚された者」

「天丼ひとつー。」
「へい、らっしゃい。って……アリスちゃん?! おかみさーん。アリスちゃんが帰ってきましたよー。」
  ったく、帰ってくるなりアリスのやつ…… 普通ただいまとか言うだろ…いきなり注文とは……、そりゃ店員も驚くぜ。
「アリス。いやー無事で何よりだわ。かなりの大惨事みたいだったから使いの者を出そうかとも思ったんだけどね…… まあ、あんた達の事だから、ようりょう良くやってくるだろうとおもっってね。」
 毎度の事だが、ほんとに危機感のない親だ。普通あんな事があったら取り乱すぞ。まあ、心配されない方が都合がいい場合もあるが…。
「まず何か食わせてくれ。腹が減って死にそうなんだ。」
「あいよ。ちょっと待ってな、すぐ作るからね。」
「テリー。お・か・ね!
「これアリス! お友達からお金取るような事言いなさんな。あんただっていろいろ買って貰ってるんでしょ?」
「う――――。」
  まさにそのとおり! アリス俺の仕事については来るが、あまり仕事を手伝わない。そのうえ、給料は山分けと来たもんだ。しかも、金使いがとても荒く、自分の金が無くなるとこっちにたかってくる。さらに、「買ってくれなきゃ不良になってやる」などと古風な脅しをかけてくる。まさか不良になるとは思わんが、なったらそれはそれで困るので少しだけ手伝ってやる時もある。

「いいのはなかなか無いなあ。」
「ですねえ。」
  食事も終わり、ナッシュの住む家を探してるんだが、良い家は意外と遠くにあって、俺達の家からかなり離れた所にしかない。チームを組むにあたって、なるべく近くに家を構えたほうが都合が良いのだが……
「これなんかどう? すぐそこのアパート売りに出てるわよ。」
「買うのはちょっと…、なにぶん手持ちが少ないですから。」
「この辺は一等地だからな。高いのは仕方ないんだが…」
 うーん。仕方ないとはいえ、いい家になればなるほど生活は苦しくなるだろうし…
「テリーちゃん。この子は新しいチームメイトかい?」
「ああ。紹介がまだだったな、ナッシュだ。」
「どうもよろしく。」
「ナッシュくんか、こちらこそよろしくね。」
「おいおい。なんで俺がちゃんでナッシュがくんなんだ。」
「だって、見た感じあんたより歳が大きそうだからね。」
「……そういやナッシュっていくつなんだ? 聞いてなかったな。」
「二十二です。」
「四つ上か…」
「ほらね。あたいの目は確かだよ。それにしても何をそんな神妙な顔して悩んでるんだい?」
「いや、ナッシュの家を探してるんだ。いいのがなくてね……」
「ふうん。しかしなんでまたこっちに来たんだい?」

 でもって、ナッシュが身の上を話すと、
「まあ。なんてけなげな… りっぱ。ほんとにりっぱだわ。男の子はこうじゃないと!」
  ………そうかな? 別に好きで親探しをしてるわけじゃないと思うが…
「わかったわ。なら、この家に住むと良いわ。いいえ、ぜひ使ってくださいな。迷惑になんてなりませんわ。心配なさらずに、これも運命ですから。」
 おいおい… そんな急に、……あ、でも、たしか使ってない部屋がひとつあったような気もするが…
「聞いてくださいな。そもそも私のポリシーは……… 」
「あーあ。始まった。」
「おばちゃんの講義の時間は長いからなあ。いつまで持つかな…」
  これはおばちゃんの悪い癖なんだが、困っている人をみるとー助けなければ!ーという信念に突き動かされ、たとえ相手にとって迷惑でも、おせっかいをやきたがる。これだけなら別にいいんだが… その人に対して、徹底した講義を浴びせ掛けるのが迷惑なんだ。
 人間、良い所があっても、度を超すとただの迷惑だということがこの人にあってから思い知った。
 その講義の間、ナッシュの応答は「はあ、それは助かります」から「いや、もっともな事で……」に、しまいには「はあ…、良い志を持っておられて…、それはそれは…」と、変わっていったことから、かなり苦戦しているようだ。
「意外と頑張るわね… しまいには夢に出るわよ。」
「引くという事を知らんのかもしれんぞ。」
「さーて、お風呂でも入ってこようかな。じゃあねテリー。」
「ああ、宿題やれよ。」

 しばらくたってナッシュが戻ってきた。おいおい、二十分もたってるじゃないか。
「ご苦労さん。くそまじめに聞かなくても良かったんだぞ。おばちゃんの趣味みたいなものだからな。」
「いやあ、そうゆう訳には…」
「で、結局の所、どうなったんだ?」
「はい、アリスさんの家に居させてもらうことになりました。」
 だろうな… あの人は言い出したら聞かないからな……。
「あの、それで私はこれからどうすればいいんでしょうか?」
「そうだな、さっき会社に行って来たんだが、今の所これといった仕事は無い。だからいきなり休暇だ。」
「い、いきなりですか?」
「まあ、町でも散策しててくれ。なんかあったら連絡するから。」
「はい、わかりました。」
「じゃあな。」
  あ、俺の家知らせてなかったな……、まあいいか。

夕刻。アリスに連れられて、近くの山に。
「さあて、やるわよー。」
例の変なやつを使うらしい。冗談じゃない! とばっちりをくらうのは俺なんだからな。
「やめた方が良いと思うぞー。なんかよくないことが起こりそうな気がするんだが。だいたいアリスの手におえる物ではないと思うんだが……」
「なぁに弱気な事言ってるのよ。何事も最初の一歩を踏み出さないと何も始まらないわよ!」
「いや、お前の一歩は崖からの一歩だと思うが……」
「問答無用!」
  はぁ… 言い出したら聞かない奴だからなあ……

「で、方法は分かってるのか?」
「もちろん。ナッシュにバッチリ聞いてきたわ。」
「…なあ、その時あいつに止められなかったか?」
「まあ、少しね。でも! ナッシュはその程度だったと言うことよ!」
  おいおい。おおかた力ずくで聞き出して来たんだろうが…… いいのかなぁ… 嫌な予感が…
「それより始めるわよ!」
「どうぞご勝手に…。」
  よし。やばくなったら一気に逃走する事にしよう。

 それからアリスはなにやらへんな法陣を作り始めた。例の物を真ん中に、様々な色の宝石を並べて…… なにやらよく分からんが、集中して…なにやらブツブツとしゃべっている。怖えぇ……
 あっ。赤い光が空に伸びて行く……。なるほど、天の力を引き出そうとしているのか。
ごろごろごろ  ぴか!
「うわあ。なんだ? 今ぴかって…かみなりか? …げ!
 な、なんとも表現しにくい容資の奴が出てきた………。なんというか、いかにも凶悪そうな巨人に巨大なショウルダーガードを付けたような…そこから長い鎖のようなものがぶら下っていて先に尖った分銅みたいなものがくっついている。
 …なんとも威圧的な風貌だ、ちょっと怖い…
「我を呼び出したのは誰だ?」
「は、はい。私…だけど…。」
「汝に力か知識いずれかを与えよう。」
「は?」
 おいおい、は?って……、なるほど、アリスは何がなんだかわかってないようだ。
「どうした。さあ、早く選ぶがいい。」
「あ、あの、えーと……」
 あああ! じれったい。まったく、肝心な時に…… 困ったなあ…
「あ、あの。たぶんこいつ何がなんだか分かってないんだと思うんですけど。なにぶん、始めてこんなことしたから………」
「ふむ、始めてか。しかし、始めてでこのわたしを呼び出すとは… 大それた事をする奴よ。」
  あれ? もしかして……こいつってすごい力を持った奴なのか? なんか嫌な予感がするんだが……。
「あの。もしかしてあなたは結構強力な方じゃ……。」
「まあ、自慢するわけではないが、天の力を扱うものとしては最上級に属するが…」
 ええー! こりゃ困った。こともあろうにアリスがこんなやつを使いこなせるようになったら、いったいどんないたずらを画策するか… 考えただけでも恐ろしい。やはりここは保護者として……
「あの、悪いんだけど…… こいつってあんましイイ奴じゃないんですよ。だから必用でない力を与えるとろくな事がないんですよ。だからここは一つ無かった事に…」
iI>「ふむ、それは私も危惧する所だが、出来ぬ事だ。」
「え、なんで?」
「我々ネイティアルは、自分を召喚した者の命令しか従う事はできん。故にネイティアル(純粋なる者)と呼ばれるのだ。我々の力を良きことに使われるか悪しきことに使われるかは術者しだい… 付け加えるなら、引き出せる力もそれしだいという事になる。つまり、私がいくら強い力を持っているといってもこの娘の精神力が弱ければそれ相応の力しか出せぬと言うことになるな。」
 なるほど、ま、道理にかなった話しだ。ちょっと安心。
「わかったわ!」
  お。アリスが復活した。
「じゃ、まずあなたの名前を聞かせて頂こうかしら。」
 い、いきなりなにを? いや、ある面正しいのかも… 自己紹介もまずは名前からと言うしな…
「私の名は、レグナ・クロックス。」
「ふうん、じゃあ、あなたが持つ知識と力っていうのは?」
「詳しくは言えぬが、知識に付いては、天―つまり、この地上より上に存在する気体やそれに関する知識全般といっておこう。力に付いては、大気と重力を操るものだ。ま、突き詰めればいくらでも応用は効くがな。」
「ほんじゃ、力ね。」
  え? そんなパッっと決めていいのか?
「力で良いのだな?」
「O・K」
「了解した。」
きゅうううううううん………
 なにやらよく分からない言葉とも音ともとれないものを発すると、アリスの身体に赤い光が収束していって、消えた………
「これで私の力を引き出す事が出来るようになったはずだ。」
「なんか… ふわふわするんだけど?」
「お主は私の力を引き出すキーとも呼べるものを取りこんだ訳だ。よって、お主のステータスも若干ながら上がっておる。」
「へー、素早さとか?」
「特に上がっておるのは、跳躍力や瞬発力だな。」
「なるほど。じゃあ体重とかが軽くなるってことはないの?」
「残念ながらな。」
 ただでさえすばしっこいアリスがさらに早くなったら誰も捕まえれないじゃないか。やっぱり力を与えたのはまずかったかな……
「では、私はもう行く事にしよう。大気の安定をも司らなくてはならんからな。」
「あっ。ちょっと待って! あと一つ…」
「なんだ?」
「なんで私みたいな力の無いのがあなたみたいな強いのを呼び出せたの?」
「それはお主がそう望んだからだ。」
「えー。でもわたしあなたなんか知らなかったわよ。なんで?」
「あえて言うなら、お主は純粋な心で呼んだ。それが結果的に私の召喚へと至った、ネイティアルとはそうゆうものだからな。人々は限定して呼び出そうとするからその程度のものしか呼べないのだ。心に留めておくといい。」
「! なるほどね。なんとなく分かったわ。」
「また私に会う必要があるなら、わたしの名を含めるといい。わたしの名を知るものは人間、その他の生物をふくめてそう多くないからな。忘れるとなかなか会えんぞ。我が名はレグナ・クロックス さらばだ。」

「帰り際に名前を忘れるなって…… 結構律儀なひとね。」
「まったく。…そうだ、それで結局お前はなんて願ったんだ?」
「あれはね、‐天地をひっくり返すような強烈な強い奴‐ってお願いして、呼び出したのよ。」
「ったく、やりそうな事だが……、ちょっとは後先の事を考えて行動しろよな。今回はたまたま上手くいったようなもんで、失敗してたらだな…」
「ちっちっち。大は小を兼ねるし、よく言うじゃない? 終わり良ければ全て良しってね!」
「お前―。何も反省しない奴だな!」
「いいじゃん。怒るとしわがふえるわよ。」

CONTINUE


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