ASARUT ・ COMPAILA
アサルト ・ コンパイラ

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第二章

「COME BACK セレスタ・シティー」

「おーい。もっと早く歩けー。」
「仕方ないでしょ。たくさん荷物持ってるんだから。」
「ただでさえ低血圧なのに、買い物しすぎなんだよ。」
「すこし持ってくれない?」
「やだね。」
「アリスさん手伝いましょうか?」
「ナッシュ! 甘やかすんじゃない。こいつは身をもって体験しないと学ばないタイプなんだ。」
  まったく……。いつまでたってもこのくせは直らんな…
 この癖というのは、アリスはどこかに遠出すると必ずたくさん買い物をする。今回も例外ではない。アリス曰くーこれは全部私の足跡なのよ。メモリアルとも言うわね。だから、ぜーったいいる物なのーという事らしい。こっちはいい迷惑だ。
「二人とも! なんで持ってくれないの。あーあ、いいわよ。じゃあ今度ケガしても診てあげないからね。苦しみながら死になさい!」
「けっ!」
「ふんっ!」
 ……………………
「反抗期…ですね。」
  おお? びっくりした。いきなり後ろからそぉっと出てくるから……
「ナッシュ。ビックリさせるな。」
「はあ、すみません。ところで、お二人は良く喧嘩されるんですか?」
「まあな。しかし……あいつ生意気だからな。」
「そうですね。生意気というか、気が強そうな感じがしますね。でも、仲はいいんじゃないですか。」
「なんでだ?」
「ほら、よく言うじゃないですか。喧嘩するほどなんとやら…」
「そうか? 喧嘩するのは仲が悪いからだろ?」
「ま、そうだとしても仕方ないですよ。昨日言ってたじゃないですか、思春期だって… だからですよ。」
「………。そうかもしれんが…」
  うーむ。それならば説明がつくな。近頃、泣いたり笑ったり、心境のゆれが激しいからな。しかし、困った相棒だ、もう少し大人になれんもんかな…
「ところでアリスさん。何をたくさん買いこまれたんですか?」
  おお。ナッシュの奴、もうアリスと会話を…… 怒っているアリスに話しかけるとは…あの度胸、いや、危険をかえりみず突っ込む無謀さと言うべきか、とにかく称賛に価するものだ。
「ん? そうね、今回買ったのはね……。例えばこれ。」
「………。なんですか? それ。」
「何に見える?」
「そうですねえ…、思い当たる所では、理科の実験で使う試験管バサミといった所でしょうが………もちろん、違いますよね。」
  うん。いい線いってる。まあ、何も知らない人が見たらそう思うのも無理もない。まさにそんな形をしているしな…
「ブブブー。残念でした。これはね、手術の時とかに傷口に引っ掛けて傷口を広げる物よ。」
「な、なるほど… アリスさんの行ってる学校を考えれば……。あれ、でも、そんな物は学校にあるじゃないですか? なぜ……」
「あのね、二年の終わりにナースの試験を受けるんだけど、それに合格してからじゃないと患者を診れないのよ。それに、学校に行ってるうちは研修生という事だから、勝手に備品を使ったらダメなのよ。まあ、そんないろいろあって、自分でケガを直してあげたいと思う時は自分のものでしないとだめなのよ。」
「はあ、でもダメじゃないですか!」
「まあね。でも、たとえばれちゃったとしても、停学とかにはならないし、怒られるだけだからみんなやってるわよ。それに、本物の患者やケガを診ないと実力がつかないわ。基本は1年の時に習ってるから心配ないわよ。」
「確かにそうかもしれませんが………、そうそう、研修生にケガを見せる人はいないんじゃないですか?」
「それが、俺なんだよ。」
「え? テリーさん。もしかして、あなたが犠牲となって…」
「ま、今までで失敗はないが…、いつ失敗するか……。」
「だ、大丈夫よぉ。私が成績いいの知ってるでしょ?」
  確かにアリスの能力は秀でたものがある。外科の事に置いてはかなりの実力を持っている。しかし、学校では意外と失敗も多いらしい… 学校で失敗してるから実技で成功するのでは? という意見もあるぐらいだからな…
「ほらテリー、あの時覚えてる? テリーが足をケガした時の事。あの時だってバッチリ手当てしたじゃない。」
「まあ、そりゃそうだが…」
  少し前の事だ。森の中にいた時、俺達はゴブリンの集団に襲われた事がある。その時なんとか撃退したものの、俺は足を刺された。どうやらそのナイフには毒が塗っていたようで、いっきに昏睡状態に陥った。
 気がつくと、俺の意識はハッキリしていた。近くの木にもたれかかって寝ているアリスを起こして聞くと、アリスが手当てしたらしい。傷の縫合から解毒まで一通りやったらしい。
「へえ、そりゃすごいですねえ。一人前の医者と変わらないじゃないですか。」
「えへへ。でしょお。」
「でも、傷跡は残ったんだがな…、これはどう説明するんだ?」
「それはテリーの皮膚の質が悪いだけよ。」
「それでも医者の卵か?」
「まあまあ。アリスさんだって努力したんですから…」
  くそう。よく考えたら失敗してるじゃないか!

「しっかし、たくさん買うにしても多過ぎだぞ。いったい何を買ったんだ? 変な物買ってないだろうな。俺達のチームは危険物持ちこみ禁止だぞ。」
「わかってるわよ。」
「でもお前、こないだなんか炸裂弾なんか買ってきたじゃないか。」
「うっ…… だってすっごく安かったんだもん!」
「ほんっと安さに弱いなあ。とにかく! そういったものを購入してないかどうかチェックしないとな。よし、ここで小休止。さ、出してみろ、全部だぞ!」

  というわけで、抜き打ち持ちものチェーック!
「……と、はい。これで全部よ。」
  ガバッと四方に広がったアリスの買いこんだもの、大小合わせて総数百二点! 買い過ぎだとは思わんかねぇ。
「さあさあ、見て頂戴。何もやましい物はないわよ。」
 うーん… そんなに危険なものはない…かな。
言っておくが、ーそんなにーという事だから、ある程度は危険な物も入っているという事だ。一応、仕事上必要になる時があるかもしれん、という事で大目に見ているだけだ。必要にならない物の方が多いとは思うが……
「ん? これは… なんだ?」
「やあねえ、お化粧のコンパクトに決まってるじゃない。」
  一見したところそう見える…が、どうも引っかかる部分がある。なんか細部がややこしい作りになっている。
「ほんとか? 危ない物じゃないか?」
「もちろん。」
  ……今顔がぴくってなった。
 少しでも変かなと思ったら徹底的に疑うに限る。以前買ってきた炸裂弾も石に偽装されていたからな。そうゆう奴だ。
「絶対にだな! 念を押しとくが、危険物である事が発覚した時点で壊すからな。」
「あ、当たり前じゃない。あ、あはははは…」
  ビンゴ。
 これは、十中八九危険物であることは間違いない。アリスの動揺のしぐさを見る限りそんな感じだ。アリスは頭で考えてる事と口に出す言葉を擦り返る事は不得意だったからな。
「さあ、これは何なんだ? 早く言った方が楽になるぞ。」
「なんでもないわよう……」
  ううむ… 今回は強情だな。

「珍しいものを手に入れましたね。」
「うわああああ!」
 でた。ナッシュのー後ろからそっとー攻撃!
「すみません…。なんか癖みたいで。」
「ふう、まあいいけど。で、こいつは何なんだ?」
「はい。いわゆる自然界の力を召喚するやつですよ。」
「……それって結構すごいものだったりするのか?」
「もちろんです。普通は売買などはされません。価値がわかる人なら自分で使いますよ。まあ、売りに出たらとんでもない値が付きますよ。」
「なるほど。」
  アリスの目がナッシュを射殺している…… こりゃかなり怒ってるなあ。
 あっ。蹴った!
「いたっ。何するんです? え? はあ…… まずかったですか?」
「あたりまえじゃないの!」
「こら。危険物を買うなと言っておいたのに、無視したお前が悪いんだろうが。ナッシュに八つ当たりしても仕方ないだろう。」
「テリー!」
  こらこら、そんな訴えかける目をしても俺は落ちんぞ……
「だって、破格値で買えたのよ。ね、考え直して! アリスの一生のお願い。」
 いったいお前はー一生のお願いーってやつをなんと考えてるんだ。そのセリフは今までに少なくとも五回以上は聞いたぞ。
 おっと、そうだ。こいつの傷細をきいとかないと。
「ところでナッシュ。この…えーと、こいつなんだが、詳しくはどういった物なんだ?」
「そうですね。私も詳しい事はよく分かりませんが、以前友達から聞いた話ですと… 一度に召喚できるのは1種類だということです。まあ、その自然の力…ネイティアルと言うそうですが、それのレベルは術士の能力によるそうです。」
「なるほど。で、そいつは一つ呼ぶと一つ力を与えてくれるってものなのか?」
「いえ。呼び出すと、力かあるいは知恵を与えてくれるという事なのですが… その与えてもらうのは応用がきいて………、えーとですね、ちょっと説明しにくいのですが、与えてもらった力のキャパシティを超えるものではなければいくつでも技を編み出せるはずです。ちなみに、そのコンパクトは三回使用できるそうです。」
「んー、難しい話しだが…… 詰まる所、危険性は無い。と判断していいのか?」
「そうですね。その力を悪用されなければ……の話ですがね。」
  悪用… なるほど、アリスならやりかねん。
「な、大丈夫よ。悪用だなんて。世界征服なんてしないから。」
「せかいせいふく? お前の力でできもんなら、さっさと他の人がしてるよ。」
 ま、こいつの脳みそではたいした事はできないかもな…
「いいんじゃないですか? こんな一品、もう絶対に出てきませんよ。テリーさん。」
「ん… まあ、危険でないと言うなら……。」
  いささか不安だが、これといった理由がないからな…… ま、やばくなったらぶっ壊すことにしよう。


「ちょっと! お腹減った!」
「俺もだ!」
  ったく。アリスがしっかりパンの管理をしてないからカビなんかが生えてしまうんだ。おかげで昼飯抜きだ。しかたなく、さっさと町に帰る事にしたんだが、アリスのうるさい事。こいつは腹が減るといきなり怒り出すからな……
「あー。テリーがローストビーフに見えてきたわ。もうっ! 町はまだなの?」
「もうすぐだからガマンしろ!」
「ところで、いったいここは何処でしょうかね?」
 …………
「あのなあ、場所の特定も出来んのか? ここは、セレスタシティーの東約1キロってとこだな。」
「そうですか。なにぶん方向音痴なものですから。ん? ああ、あれですね。ナッシュさん達の町は。」
  意外と早く着いたな。
 昼飯を取らずにがんばって歩いたかいがあったというものだ。
「そうだ。ま、この大陸では大きい方に入るんじゃないか。とにかく、めしを食いたい。」
「さては、また、ただ飯食いに来るんでしょう?」
「失礼な! ごちそうになりに行くだけだ。」
「ともかく。今日こそはお金払ってもらうわよ。」
「おばちゃんは別にいいって言ってるぞ。」
「そんなこと関係無いわよ。あんたのせいで店が潰れたらどうする気?」
「それはないな。お前んちはもうかりすぎだ。」
「……あのー、私はどうすれば?」
 おお、ナッシュか。どうするかなあ…
「とにかく! 私の家に来なさい、食堂なの。ご馳走するわ。」
「ナッシュ、アリスもこう言ってるんだし、お言葉に甘えてご馳走になろうか…」
「テリーは別!」
  こいつ、なんの恨みがあって………。

CONTINUE


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