「……えっと、とりあえず教室に行こうか?えっと……?」
おずおずと生徒に聞くのは先生、しかも担任である、我慢一鉄の方だった。目の前に座ってる生徒は今日から一鉄の生徒となる転校生だった。
転校生は一鉄の口調に何かを感じたのかぴくりと反応した。
「その間は何ですか?
もしかして先生?
僕の名前が分からないとか?
そんな事言いませんよね?(怒)」
この転校生怒りだすと自分の代名詞が『私』から『僕』と言う、なんと言うかかなりガキなのである。
しかし、この場合一鉄をびびらせるほどの迫力があったし、実際一鉄はこの転校生の名前を知ってはいなかったのだから。
それもこれも一鉄が担任しているクラスの副担である・加山雄二のせいなのである。
自分のクラスに新しく生徒が増えると言う衝撃の事実を聞かせれて寝込むこと1週間。やっと回復した一鉄は寝込むこととなった原因の加山に来てもらうことにした。
「……今日は無理言って来てもらってすみません
って何で無線なんですかーーー!?どうぞ」
『あーあー、了解、了解、どうぞ』
「答えて下さい!!どうぞ」
『はーっははは、いやな我慢、今回も窓から入ろうとしたんだが、看護婦さんがな、待ち伏せしててな、入れなかったんだよ(微笑) どうぞ』
「普通に入ればいいじゃないですか!!!」
この男に何を言っても無駄なのだか言わずにはいられないのは何故だろう?むなしく一鉄の声が病院に響き渡った。
『そんなことはどうでもいい、今日はなんで俺を呼んだんだ?どうぞ』
「実は転校生の名前を聞き忘れたのを思い出しまして……なんて名前です?」
『……………ふふ、ふぁっはははは、ダメだ!教えてやんなーいv なんてな。お前もそろそろ俺から卒業したほうがいい、自力で調べろ』
「え?」
『それぐらい出来なくてどうする!お前は何だ!?教師だろ!担任だろ!!生徒となるヤツぐらいインスピレーションで感じ取れ!!!
注意>一般人は出来ません』
「そ、そんなくコ:彡(イカ)んせん、できません(;_;)」
とち狂って訳のわからないことを口走ってしまう一鉄。
『何を言ってるんだ?我慢?それでも俺が副担をしているクラスの担任なのか!?』
「で、でも」
『俺なら出来る!』
「まだ、俺新米で、出来ないっスよ、そんなこと<新米でなくとも出来ません」
『俺なら出来る!』
「顔も知らなくて、名前も知らなくて調べるなんて………そうか!解りましたよ学校で行って転校生について事務の人に聞けばいいんですね♪」
『俺なら……そんなことしなくても出来る!!』
「え?」
『その考えは却下だ!それではお前のためにならん。学校関係は俺が占める!学校からの情報はないと思え!!』
「な、何言ってるんですか、そんな最後の手段を!そんなことしたら俺どうやって調べれば…」
『がんばれよ、我慢、それじゃぁな、アディオース♪ブッツ…………』
「え?え?きゃやまさーーん!!(号泣)」
っと言うわけで(長っ)一鉄は結局加山の妨害を破ることが出来ず、かといって自力で調べ上げる能力もなかった。ので一鉄は転校生の名前など知らなかったのだ。
ともかくそのことをその転校生に伝えたら、転校生は頭を抱えてため息までついてしまった。
「はぁ、あなた馬鹿ですか?」
なに?
一発目の言葉がそれだった。
我慢一鉄は温和で平和主義をモットーにしている、そんな男なのだがこの言葉には少しカチンときた。
「いいえ、あなたは馬鹿です!馬鹿だと言っているんです!!」
「……………」
一鉄はハッキリ言われてもしかしたら俺は馬鹿なのかもしれないなんて思っていた。
「だいたいですねー、ないと思えなんて言われてハイ、そうですかって聞く方が馬鹿なんです!!そもそもそんな人と組む事になった時どうして校長に直訴しに行かなかったんですか!!!僕なら即刻校長に掛合ってその人を辞めさせますね!あなただってそう考えてるはずです!!」
「…えっと、そんなこと」
どもればどもるほど転校生の顔は怒りで真っ赤になっていった。
「あ〜〜〜〜〜もう!!あなたって言う人は…」
転校生がもう一度捲くし立てようとした時ガラっと戸が開く音がした。
「あら、こんなところに」
目の前に現れたのは全身黒ずくめの少女だった。うっすら開けている目はどうも陰気な感じを思わせた。たじろぐ転校生に対して一鉄は急に笑顔になった。
「…あっ♪花ちゃん」
「え?」
一人取り残された転校生は戸惑うしかなかった。
「久しぶりね、どう私の水槽はなくなった?」
「うーーん、微妙なところかな?また暇つぶし?」
「……そうね」
ぼそりっと呟くとぐるんと首を回すといきなり転校生に視線を合わせた。花ちゃんと言う少女に目を合わさせられた転校生はサーっと血の気が引く。その刹那天昇されたような感覚を受けた。
「あ、花ちゃん攻撃しないであげてv俺の生徒だから」
「あら、そうなの?」
「え?……攻撃してたの?」
のんきにたちの悪い冗談を言うと本当だったのか”花ちゃん”と言う少女は視線を外した。状況をを一番分かってなかたったのは一鉄だった。
「な、なんなんですか!この物体は!?」
良い根性をしているというのはこう言うことを言うのだろ。転校生は花ちゃんに対して無鉄砲にも暴言を吐いた。
「あら……いくら我慢さんの生徒だからと言っても許されることと許されないことがあるわ」
徐々に花ちゃんの顔が険しくなっていく。花ちゃんを怒らした生徒は3日間原因不明の頭痛に悩まされるとか、悩まされないとか………ともかく3日間は休むと言うジンクスがあるのだ。このままでは転校生の命が危ない!
そんな時またもや戸が開く音と可愛らしい女子の声が聞こえた。
「せんせーい、いつまでSTやらない気なんですか?」
「………………」
ずかずかと入ってきた女子はさっき入ってきた花ちゃんとは対照的にはきはきしていて利発そうな女子生徒だった。後ろから入ってきた男子生徒は真冬だと言うのにタンクトップと言う詐欺的な格好にマフラーとも言いがたい白い布を首に巻いていた。
「あぁ、皐月君…………って木之宮君まで!?もしかしてそんなに待たした?あっちゃー、悪いことしたな、皆怒ってる?」
「んもー、そんな事気にするより……分かってるくせにぃ〜、え?え?もしかしてアレ?転校生って?」
興味津々と言った顔で転校生をまじまじと見つめるとまた急に一鉄の方に向きかえった。
「で?名前は?」
「ああ、そう言えば聞いてなかったね。えっと……」
一鉄の言葉に?マークを皐月だがそれよりなにより転校生の名を聞きたくて聞きたくてしょうがなかったので気にしないことにした。
「はぁ、一話かけて結局私の名前を聞くまでですか……先が思いやられますね。覚えておいてください!僕の名は橘 飛鳥!!今日この場で委員長になりこのふちゃらけたクラスを改革します!」
「「はぁ?」」
突拍子もない転校生改め橘の発言にすっとんきょの声を上げたのは一鉄と皐月の2人だけだった。(花ちゃんと木之宮は微動だひとつとしなかった)
一鉄の苦痛の1日はまだ終わりを告げることはできなかった。