兵庫県教育委員会
平成14年2月8日

第3回「学校危機対応ガイドライン(不審者への対応)検討委員会」
協議内容要旨
 

1 日 時  平成13年12月18日(火)14:00〜16:30

2 場 所  教育委員会室

3 出席者  
委員11名
           上地 安昭(兵庫教育大学教授・心の教育総合センター所長)
           清永 賢二(日本女子大学教授)
           林  春男(京都大学防災研究所教授)
           井上 幸子(京都女子大学非常勤講師)
           野田 慈照(兵庫県PTA協議会会長)
           大石 伸雄(西宮市越木岩自主防災会副会長兼事務局長)
           近藤 伸行(春日町立春日部小学校教頭)
           藤田  晃(神戸市立神戸生田中学校長)
           本光 迪子(兵庫県立芦屋南高等学校養護教諭)
           今西 良壽(兵庫県立高等養護学校長)
           清田 邦子(日本体育・学校健康センター兵庫県支部事務部長)

4 協議内容要旨
(1) ガイドライン編集方針
 1 全体構成
  • マニュアルには2種類考えられる。一般的な内容のマニュアルとアクションプランを示すものである。事務局案は、一般的な「危機とは何か」から始まっているが、特に今回のテーマからはアクションのモデルを提示する部分を前に出すほうがよいのではないか。
  • (事務局)どちらも十分備えたものにしたいと考えている。ご指摘のように、初めの部分は、危機に関する概念的なことを述べている。それを踏まえ、具体的なプラン等を入れていく案を提示している。
  • 現場レベルの学校長から始まり、各学校に向けてある程度、具体的にアクション起こすための1つのガイドラインにしてくださいというのであれば、「危機の基本的な考え方」は資料に回して、どうするのか、まず職員会議を開くのかとか、不審者をいかに見分けるのかといった内容から始まってもよいのではないか。内容はこれでよいので、構成を考えていただきたい。
  • 後半部分がアクションプランの内容になっている。学校現場は、まだ危機に対する知識が乏しい状況にあると思う。情報を学校現場に提供するのもよい。前半に記載している危機管理あるいは危機対応の基本的な知識に関する情報は、学校では入りにくい。その意味でこの部分は、教育現場として危機管理に関する基本的なことを認識していただくために意味がある。
  • 学校では養護教諭がいないときはどうするかなど、かなりきめ細かく緊急体制はとれている。しかし、例えば「危機は必ず発生するものである」といった認識とか、完璧なマニュアルはないとしても、危機に対応するために1人1人が平素から事前に役割を自覚し、危機に的確に対応をすることなどは、とても大切なことであり、「基本的な考え方」は、学校でも不十分なところであり、意識づけるために説得力のある理念が記されていると思う。
  • 内容としてはよいので、先ほども言ったがやはり最初に不審者への対応から入ってはどうか。あるいは、あなたの必要に応じてどこからでもお読みくださいと、一言入れておいた方が非常によく分かるのではないか。
  • 構成については、再度事務局で検討願いたい。

 2 表現方法
  • 学校関係者が活用するとすれば、全体的に言葉が難しい。これは警察学校の教科書並みである。これを丁寧に読みこなしていくのは、相当なレベルの人でないと読みこなせないような気がする。また、文章が長過ぎる。こういう文章は、1行で相手の目の中に入ることが大切だ。内容に関しては間違いはなくよいと思う。
  • 「〜していただく」など、言葉が丁寧すぎる。
 3 How to do の記載
  • 各学校で、実際に作成していく作業、ステップを記述することも必要だ。まず職員会議を開こうとか、次に内容を決めようとか、こういうところをチェックしてみようとか、何かそのような実際にこれを下敷きにして、既に記述されている考え方やチェックポイントを実際に当てはめるのにはどうしたらいいのか、といったのステップを記述するとより参考になるのではないか。What to do だけでなく、ある程度標準化された How to do も必要だ。
  • 例えば、マニュアルのサンプルとして提示している具体的な役割分担を決めるためには、年度当初に会議を開催しなければならない。危機対応能力を向上させるためには、シミュレーション演習なども実施していかなければならない。そのためのステップは詳しく記されていないが、サンプルに沿って各学校が独自のマニュアルを作成していくためには、自然と会議の開催や演習は必要になってくる。
  • サンプルを見て、それを参考に自分の学校ではどういうマニュアルを作成しようかという動きになれば、それ自体で既に危機管理の8割、9割はなされているのではないか。だから、学校の主体性を期待する意味でマニュアルのサンプルを出すのは、学校に対するひとつのチャレンジというか、アクションである。
  • 学校の自主性を期待すると、最終的に実践に移るのは1割か2割ということになりはしないか。やはり会議の開催など How to の部分を追加する必要がある。
  • 実際に学校では、防火体制の整備など法律で決められているので、担当部署や対応について、毎年、職員会議で共通理解を図っている。

(2) ガイドライン編集方針
 1 不審者による危機の4つの特徴
  • 犯罪防止の視点から、不審者による危機には4つある。1つはいろいろな顔があるということだ。例えば、大地震のように突然、発生する危機もあるし、じわじわと熟成されてきて、ある日、質が変わってくるものもある。危機と思えない危機は何だということがよく言われ、あれが危機だったんだとなることがある。
     2点目は、危機に至るまでには質的変化が生じること。爆発地点がある。それが危機である。それから3つ目が、危機というのは決して1つの要因で起こるのではなく、3つ以上の要因がある時点で1点に集中し、起こるということ。普段であれば、それら1つ1つはある時点で解決できていたものが、1点に集中してしまうために解決できなくなる。これは、先ほど述べた質的変化が突然発生することになる。従って、普段存在している危機をだらだらと放出させてはいけない。集中させてはいけない。普段のチェックをきちっとしておけば、危機はかなり回避できる。4つ目が、危機には必ず予兆があるということ。その予兆には2種類あり、1つは「どうもあの人がまわりをぶらぶらしていたよね、あれだったんだろ」という予兆だ。もう1つは、「あの人ではないが、前からあの学校には変なことがあったよね」というものだ。つまり、連続したものと、連続してはいないが、次の大きな危機を生み出す予兆である。これらは犯罪防止の特例かどうか分からないが、私たちはこの4つの特徴を考えている。このガイドラインを手にする先生方に、不審者に対する危機管理ということで、ぜひこの4つの危機の特徴を知っておいていただきたい。
 
  2 アカウンタビリティ及び管理責任
  • アメリカの場合には、危機管理のアカウンタビリティというか、管理者の管理責任がある。その辺の事に関して、記述が必要ではないか。
  • アメリカの危機管理のマニュアルが徹底する背景には、やはり管理者の法的な責任性が前面に出てくる。日本でもいずれそういうことが問題になるのだろうが、まだそのような状況ではなく、あまり露骨に出さない方がいいかもしれない。
  • 管理の責任はよく言われるが限度がある。ここからここまではしなくてよろしい。あるいは校長はこうだとか。また、ここからは警察に言いなさいとか、これは教育委員会がすべきこととか。
  • 逆に、それと対を成しているような、「そこまでやってはいけない」内容も必要ではないか。
  • どんな事件であっても、裁判がなされた結果、それが明確になる。ここまでは学校がしなさい、ここまでは教育委員会というような記述ができるのかという気がする。
  • そこを教育委員会が責任をもってくれるのか、責任をもってくれるなら校長先生、教員らはうれしい。それこそ分岐点が分かったらよいと思うが。
  • 学校と教育委員会の対応を見ていると連携が図れていないように思われる。お互いを分けるのではなく、逆にもっと常に連絡をとりあって、意見を交換して1つになって、物事に対応することが必要ではないかと思う。

  3 ステイクホルダー(関係者)
  • 危機管理の中でいろいろな失敗をしているのを見ると、自分たちにとってのステイクホルダー(関係者・関与者)の定義がずれてることが多い。例えば一番困るのは、教育委員会だけ見て仕事しているような人だ。それで保護者やマスコミに的確に対応ができない。基本的にはステイクホルダーは誰なんだということをどこかで考える必要がある。それは目標を設定するところに入る。誰に対して責任を果たしていくのかとか、誰が支えてくれるのかということに関わる。そのステイクホルダーを全部挙げてみると、先ほどの教育委員会や保護者、マスコミの人とか、いろんな人たちがあがってくる。子ども自身も入るし、もちろんけがをしたり、いろんなことをした子どもも関係者である。あるいはそれとは違う子どももそうだし、そういう意味ではそこの議論がもう1つどこかにあってもよい。
  • ステイクホルダーというのは、普通の言葉で言えば、関係者だ。関係者というと非常に内輪ぽいが、事態に対してかかわり合いを持つ人、関心を持ってくれる人のことだ。ステイクは「くじ」を意味し、それで一喜一憂をしてくれる人ということになる。つい当事者は、ステイクホルダーを狭く見たがる。その方が対応しやすいから。きちんと保護者に責任を果たしているからいいじゃないかと思ってると、マスコミの人が何かわあわあ言ってくる。あるいは、自分の学校のことだけ考えていて、他の学校は関係ないんだと思ってると、実は教育長までいったら全部つながっていることがある。どこまでが当事者というか、関係者と見るかということが必要である。ステイクホルダーに対して必ず発生するものが説明責任なので、全くステイクを持ってない人、興味のない人にまで全部説明をしていく必要はない。しかし、かかわりを持つ人には、やはり説明しなければいけない。そういう意味で、関係者、当事者ということでお考えいただきたい。

  4 その他
  • 「安全管理」、「危機対応」、「危機管理」の文言整理で、平素から取り組んでおくべき事として予防もあるが、発生後の対応能力の向上も、平素から実践しておく必要があり、安全管理に入る。
  • 「普段実践していることもできない場合が多い。」とあるが、「普段実践していないことはもっとできない。」という意味か。考えようによっては、危機時には、普段実践している以上のことを要求される。火事場のばか力というか、それ相応の危機対応には必要になる力だ。そこで、「危機に直面すると普段実践している以上のことが要求されることが多々ある」と加えてはどうか。普段実践していなければ、最初からできないと決めつけるのはよくない。
  • それはできないと思う。普段やってることですらできないという認識が必要ではないか。組織として、組織が普段行っていないことを、いざというときにできるかと言われたら、それはやはりできないと思う。やろうということ自体も思いつかないだろうと思う。
  • 要するに普段から組織の強化を図っておく必要があるということだ。

(3) 「不審者から子ども守るために
 1 受付・窓口の一本化 
  • 来訪者の確認について、誰が確認をするのかということについて考えていただきたい。特に学校の場合、小・中学校では、なかなか対応者というのを決めておくのは難しいのではないか。それから、総括本部の中に防犯担当者を入れるとあるが、確かにそのようなものを決めることはいいのだが、新たにその担当を決めるとすると、なかなか難しいのではないか。また、特に小規模の学校では、そのような分掌をつくるのが難しいのではないか。
  • (事務局)各学校で、既に編成している組織を活用するという観点からの組織編成を考えている。例えば防災の担当者が兼務するなど、各学校で防犯担当者を決めていただくという考え方である。また、来訪者の確認については、県立学校の場合は事務室があり、そこに事務職員が数名いる。それがハード的な意味からも設置されている場所からいっても、受付のようなことを兼務するように自然となっている場合が多い。ただ、小・中学校の場合は、そのようなハード的なものもあまり整備されておらず、受付に関して仕事内容もきちっと割り当てられていない。これまで不審な外来者を念頭において県教委が出している通知には、例えば、窓口を指定し一本化しておくことや入り口に「ご用がある方は・・までお申し出ください」などの掲示の例を提示している。外来者に対する窓口を指定しておくことも、留意点として示している。それ以上のところは、各学校での対応をお願いしているのが現状だ。
  • 来訪者の確認についてぜひそのような具体的な内容を生かしていただければと思う。また、受付を誰がということが問題であるならば、場所を明示することと、そこで用件と氏名を確認することが必要だと記述し、そのためには受付業務を事務所掌として設けるというような書き方が必要だと思う。誰が行うかは、学校によって状況が違うと思う。柔軟性があってもいいことだと思う。
  • 主語は明示しなくて、受付業務という所掌が学校運営上いるんだということは記すことができるのではないか。あとはケースバイケースで対応していただくしかないだろう。記しておかないと、なくてもいいということになってしまいがちなので、必要であるということだけは記載すべきであり採用していただきたい。
 2 導線制御
  • 私たちの専門用語で導線制御という言葉がある。つまり、学校に用事がある人はこの順路をきちんと歩んで下さいと、それを外した者は不審者だと思いますよというものだ。第1回検討委員会の後、すぐに、大阪で不審者が学校に侵入した事件があった。それを今、フォローして要綱をつくっているのだが、侵入者はその学校の横手のブロック壁を乗り越えて入っている。それを見ていた人がいる。そして、そこから中に入ったところで消えてしまう。そして裏の方から給食室に行き、給食室のおばさんが、「変な人がいるね」と確認している。しかし、また見失う。そこで突然、表の1階部分に現れて2階に駆け上がり、先生が防犯ブザーを引き抜く暇もなく、皆は慌てふためいて逃げていった。だから、不審者か不審者でないかということを見分けるのは難しい。そこで、ある種の空間的にルールを超えたところに立っている人を不審者だというように、まず第一次的な不審者としてチェックしておくことが必要だ。また、犯罪者が一番嫌がることは、じっと見られることである。声をかけなくてもいい。
  • 物理的に柵を建てろとかではなくて、ここを歩むのが正しいと明示する。それ以外にいたら、それは正しくないと定義できるようにしておけばいいということですね。
  • 順路ですね、普通に言えば。
  • そうだ。不審者かどうかがわからないところが難しい。だから、横にずれてきてるときに、これは第1次の不審者、それ以上、超えてきたときには、これはもう怪しいと判断できる。
  • 都市計画の専門家の書いた本の中に、安全な町とはどういう町かという定義があり、それは「絶えず人の目が注がれている場所」ということであった。それからすると「危険地図」の記述は、暗くて怖い場所だけになっているが、例えば人気がない場所とか、誰も見ていない場所、公園などは繁みが濃くて見通しが悪い場所などが具体的に指摘されている。また危険箇所の調査をされている方の取組で、例えば子どもたちの腰から上ぐらいが見通せるように、垣根の下も上も刈り込んでいるところがある。この方の書物には、ただ死角ができるとかだけでなく、見通しが悪い場所や人気がない場所で犯行がなされると記されている。そういう場所はいくつも分かっている。キーワードは先程述べた犯罪者はじっと見られるのが嫌だということと同じで、みんなの目が絶えずあるところは、決して犯罪は起こらない。誰もいないところの方がかえって危ない。導線制御というのは、キーワードとして何かを実施した感じになるので、ぜひ使っていただきたい。順路を指定するというと何か当たり前のことで誰も実施しない可能性があるが、導線を制御して、本来、外来者に許されている空間をあらかじめ設定しておき、そこ以外に侵入している場合には、不審者とみなして通報するとか、警察に連絡をするとか、そのような表現はできると思う。
 3 開かれた学校づくり
  • 「開かれた学校づくり」については、例えば学校評議委員制度などの充実なども明記していただきたい。また、学校はイベントの広報のみを通してではなく、やはり4月当初に保護者、地域の方々に学校長による学校目標などの説明をしていただければと思う。そうすることによりさらに共通認識が図れると思う。
 4 学校危機マニュアル作成のチェックポイント 
  • 全体構成のところでも述べたが、「不審者から子どもを守るために」の章が大切な部分であり、これをやはり前に持ってくるほうがよいのではないか。そして、学校危機マニュアル作成のチェックポイントとして記す。具体的には、まず第1に、子どもの発達段階を踏まえて考えるということ。具体的に書かなくてもいいので、子どもの発達段階を踏まえて考えてくださいと明記することは必要だ。2番目が地域の事情を考えて作成するということ。やはり地方と都市部ではそれぞれ地域の事情がある。3番目は、危機の発生からその処理・解決までの段階をきちっと踏まえて考えるということ。4番目が、危機の深さというか、危機の様相というか、それを踏まえて考えるということ。単に人が校庭をふわあっと横切って行ったのと、突然、乱入してきたのとでは、対応が全然違う。もう1つつけ加えるとすれば、学校における危機管理は、情報戦とも言える。情報をいかに集めて、いかにそれをうまく処理しておくかということが、ある意味で問題解決の根本である。危機には前兆があるとか、予兆があるということを前にも述べたが、そのようなことを正確に把握しておくことが大切だ。そしてそれを整理しておく人が必要だと思う。防犯担当といっていいのかどうかわからないが、あるいは名前を変えた方がいいかも知れないが、そのような人が必要だと思う。それは、本文の中にも記されており、情報をまず整理し、そしてその情報を例えば警察とやりとりする。その情報を地域の人とやりとりする。そういう人が必要なんだということを、押さえておく必要がある。この5つを大きな原則として出しておく必要があると思う。この原則を前に出し、続いて不審者とは何かと入っていってはどうかと思う。
 5 不審者とは
  • 不審者であるか、不審者でないかを見分けるのは非常に難しく、親切なおじさんが学校に来た時に、「あなたどなたですか」と言われると、「なんだこの学校は」となってしまう。だから、そこの見分けはつきにくいんだということを言うだけでもよい。そして、そういう人たちが突然、変化する可能性があるということを書いておけばよい。それで不審者という定義をする。
  • 不審者とは何かということに関して、具体的にはどのようなことがあげられるか。
  • 理解しがたい言動、例えば何かぶつぶつ言っているなどがあげられる。きちんと導線は保っているが、何を言ってるのかわからなかったり、唾を吐いていたりなどがある。覚せい剤をうってるいる者はよく唾を吐く。唾を吐きながら学校に来るなど、通常、人間として考えられる行動から外れていることをしている人はやはり注意が必要だ。不審者かどうかはわからないが注意が必要であり、それぞれ不審者の定義のレベルも違い、対応も違ってくる。
  • 段階的にみると、不審な人がいない日常の段階がある。それから、来訪者と称する人が来る段階がある。それで、先程のぶつぶつ言っていたり、目がすわっていなかったり、唾を吐いたり、うろうろして変なところに行ったり、それからどう見ても、何かおかしいぞ、そして事に及んだときと、それと事後という5つぐらいに分けられる。そのステップで書いていけば、あまり失礼にならないと思う。まず、来訪者から始め、来訪者の中だけど、何かあまり目的がはっきりしないとか、勝手なところへ行ってしまうとか、言動に理解不能なものがあるぐらいでよいのではないか。実際に、例えば凶器を見せたとか、あるいは突如、本来の導線制御した以外の場所へ入ってしまったとかというのは、それはやはり不審な行動だ。それらを不審者とすればよい。訪問者が不審者に変化するまでの間に、必ずこれという定義はできないと思う。しかし、本来、子どものところに行かせてはいけない人に、そのようなところへ入り込まれたら、それは定義上、不審者と言わざるを得ない。そのためには、導線制御の観点から、できればお客様や行政の人も含めて扱うゾーンと、子どもたちが学ぶゾーンとが分離され、交差しないような空間設計によって子どもたちが守られていくようなメッセージを発しておけばよいと思う。
  6 不審者対策・対応のプロセス
  • 日常的な不審者対策の部分を前にもってきてはどうか。その中の1つとして、関係機関の明確化と対応に関する共通理解、来訪者の確認などが、日常的な業務として出てくると思う。そして次にもう少し進んだ段階、不審者と認定された段階での対応を出す。不審者であっても、危機に陥るとは限らない。しかし、目をすばやく投げかけるとか、導線制御を明確にし、そこから外れた人に対しては、すぐ学校長に連絡するなどと書く。3番目として、明らかに危機だと認知された段階での対応になり、発見した人が大きな声を出すなど具体的な指示を与える。そして、その危機の真っ最中のときにどうするか。例えば、これは聞いた話だが、大地震が起こったときに、校内放送を学校長がしようとした。しかし、1人ではパニックになってできない。そのときに、後ろから教頭が「大丈夫ですよ」と、手を肩に当ててくれただけで声が出るようになった。このような例示もよいと思う。警察には当然、連絡する。事務局案は、内容は同じ事を言っているのでよいと思うが、順序を検討していただきたい。
  7 その他
  • 組織編成の留意点に、防災マニュアルを参考にして既にある組織を活用とあるが、既にある学校の火災や救急体制も加えてはどうか。
  • マスコミ対応班も必要だと思う。
  • 訓練、演習のところで、講師の例示に警察職員だけでなく消防署職員も入れたほうがよい。
(4) 「危機を乗り越えるために」
  • ここのテーマは、「危機を乗り越えるために」となっているが、内容は心の問題に集中している。それならばテーマをそのように変えたほうがよいのではないか。
  • 生活を共にする人を先に書いたほうがよいので、「子どもにとって一番のカウンセラーは保護者である」の項を最初にもってきたほうがよい。重要度はそちらのほうが強い。
  • 先程の話で、学校長でも肩に手をおかれ落ち着いたという話があったが、タッチングやハンギングなどの身体接触による効果もある。
  • タッチングは、臨床心理士にはきつく禁じられている。ハンギングも難しい。
  • カウンセラーが学校に常駐しているようなシステムになればよいと思う。
  • 心のケアに関する取組の部分で、文化的な違いによるケアの在り方まで言及しているが、「その人が自然に自分の感性を出せる場をつくる」ということが重要であり、そのような場づくりや試みが大事であると思う。
  • いったん心のケアに関する取組を始めた場合は継続して取り組む必要がある。
(5) 不審者への対応マニュアルサンプル
 1 組織
  • どこかに報告する文書だけでなく、起こったことをすべて時系列で記録しておくことが必要だ。それを整理し、保護者やマスコミに情報を提供することになる。そのような体制が必要になる。災害対策本部と同じ機能だ。単なる整理でなく、レポートを作成することを主体にした組織である。
 2 マスコミへの基本的な対応
  • 頻繁に記者発表を行うことが大切だ。時間、場所を設定する。個別の質問には応じない。原稿締切時間等を配慮できればマスコミは助かる。
  • 紙に書いて配布するのも親切である。また、一社に対して複数のペーパーを用意するようにする。
  • 校長が窓口となるが、本来は、教育委員会の誰かが入るべきだ。
 3 盲・聾・養護学校、障害児学級児童生徒への配慮事項
  • タイトルは「障害のある児童生徒への配慮事項」でよいのではないか。またまとまった図であるが、同じ事が重複して書かれている部分が多く、図にする必要がないのではないか。知的障害と身体障害は分けるとしても、さらに分ける必要があるかどうか検討し、ポイントを記せばよいと思う。
  • 身体障害があると状況変化に対する情報が入りにくい。だから、対応が難しくなる。障害の実態に即した対応が必要である。


検討委員会TOPページへ