モリアオガエル(幼生)  06.07.11





新たな世界への旅立ち



 先日、この「自然のページ」で、モリアオガエルの産卵を紹介しましたが、その後、卵はどうなったでしょう? それでは、卵の様子をのぞいてみましょう。

 木の枝に産み付けられた、白い泡の表面をよく見てみると、直径2.5oくらいの小さな黄色のつぶがあるのがわかります。実はこれがモリアオガエルの卵です。白い泡のようなものは“卵塊(らんかい)”といって、卵がかえり、オタマジャクシがある程度の大きさに成長するまで、卵やオタマジャクシを保護する、言わば“ゆりかご”のような役目を持っています。卵塊は産み付けられてしばらくすると、表面が乾燥してゴワゴワになり、色は真っ白から黄色みがかった白へと変化します。直径10pくらいの卵塊の中には、300〜800個もの卵が入っているとは驚きです。卵は1〜2週間でかえり、卵塊の中でオタマジャクシは、外へ飛び出すチャンスをうかがっています。多くの場合、雨水と一緒に外に流れ出します。

 これは約2週間前に産み付けられた卵塊です。何度か雨に打たれ、ほどよい柔らかさになっています。隙間から中をのぞいてみると・・・いましたいました!全長1pほどのオタマジャクシが、今や遅しと飛び出す機会をうかがっています。オタマジャクシたちは、1匹、また1匹とじっくり時間をかけ、泡の中を泳いで卵塊の表面へと移動します。表面までたどり着いたオタマジャクシは「ここまでくればしめたもの!」とばかりに、小さなシッポを小刻みに震わせ、一気に下へ向かって泳ぎ切り、水の中にポチャンと落ちていきます
 「ふぅ〜 やっとこれで一安心・・・」と思いきや、水の中には、天敵のイモリが待ち受けています。オタマジャクシが水の中に落ち始めると、1分足らずでどこからともなく静かにイモリたちが集まり、気が付くと十数匹の群れで落ちてくるオタマジャクシや卵塊に我先にとかぶりつきます。オタマジャクシたちはまったく油断はできません。

 一方、池の岸に目を移すと、子ガエルがこれから生活する山へ向かおうとしています。短い手足で、一生懸命に草や落ち葉をかき分け、山の方向に少しずつ進んでいきます。正面から見ると、もう立派なカエル顔をしていますが、まだ長いシッポが付いたままです。人間にとっては、何でもない草原も、小さな子ガエルには、うっそうと茂ったジャングルのように見えていることでしょう。

 木の枝に産み付けられた卵は、卵塊の中でオタマジャクシになり水の中へ。そして、成長したオタマジャクシは子ガエルに変態し、山へ向けて旅立ちます。
 モリアオガエルの産卵期はもうすぐ終わりを迎えます。産卵期以外は木の上で生活するため、人の目に触れることはほとんどありません。今度彼らに出会えるのは来年の初夏になることでしょう。
 
 文責 増田 克也

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