オオバンとバン 08.11.25




黒いぬいぐるみ!?



 「なんだあれは!?」カモの群の中に黒いぬいぐるみのような生き物が、プカプカと浮(う)いているのが目につきました。それは見れば見るほど変わった姿をしています。頭からお尻(しり)にかけては黒一色ですが、鼻先だけはハケでペンキでも塗(ぬ)られたようにのっぺりと白く、赤い目は不気味にさえ感じます。

 この動物は、謎(なぞ)の生物でも、ぬいぐるみでもなく立派な野鳥で、名前を“オオバン”といいます。カモといっしょにいるので同じ仲間かと思いきや、分類上はツルのグループに入ります。上の写真の奥に写る、くちばしが赤と黄色の“バン”とは同じツル目クイナ科で、言わば親戚(しんせき)のような関係です。

 オオバンはカモたちが休んでいる間もエサ採りに精を出しています。ずんぐりした体型に似合わず素早く水に潜(もぐ)ると、くわえて上がった水草を「ムシャムシャ」とこちらまで音が聞こえてきそうなほど豪快(ごうかい)にむさぼります。この姿を見ていると、以前、ある本の挿絵(さしえ)にあった「謎の恐竜(きょうりゅう)」を思い出しました。
 一通り潜水(せんすい)を終えると、次に水面を漂(ただよ)う小さな浮き草を、ひとつひとつくちばしで摘(つま)むように食べ始めました。意外にも繊細(せんさい)な一面も持ち合わせているようです。

 食事の後は、くちばしで丹念(たんねん)に体中の羽繕(はづくろ)いをします。どうしてもくちばしが届かない顔の辺りを足で掻(か)き始めましたが・・・見てください!この野球のグローブのように太く大きな足を!

 冬が近づくにつれ、南但馬自然学校の近くを流れる円山川では、オオバンを時折、見かけるようになりました。みなさんも池や川にオオバンを見つけたら、是非、じっくりと観察してください。何から何まで変わり種のオオバンにきっと釘付けになることでしょう。

文責 増田 克也


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