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学芸員コラム れきはく講座

 こんにちは。兵庫県立歴史博物館です。このコラムは、当館の学芸員が兵庫県域の歴史や、あるいはさまざまな文化財に関するちょっとしたお話をご紹介していくものです。一月から二月に一度のペースで更新していきたいと考えていますので、どうぞよろしくお付き合いください。

 

第86回:なぜか重なる同種の展覧会 2017年5月15日

館長補佐 神戸 佳文

 

 現在、当兵庫県立歴史博物館では、特別展「ひょうごの美ほとけ−五国を照らす仏像」(会期:平成29年4月22日〜6月4日)を開催しています。この展覧会に向けての出展リストを作成し始めたのは、平成21年夏頃で、出展リスト案を作成して徐々に内容を組み立てていきました。それは定年を迎える平成29年度もしくはその前年度に、主担当となる最後の特別展の開催が推測されたためです。

 平成28年度の中頃に次年度の展覧会の内容・主担当が確定し、開催時期は春か秋を選べることになりましたが、これまで2度開催した仏像展の経験から春の開催とし、会期を平成29年4月22日(土)〜6月4日(日)としました。

 そして全国の博物館・美術館の平成29年度の展覧会の情報が、各館のホームページ、催し案内などで明らかになってくると、奈良国立博物館の「特別展 快慶−日本人を魅了した仏のかたち」(会期:平成29年4月8日〜6月4日)、大阪市立美術館の美術館ニュースの展覧会予告で「特別展 木(き)×(と)仏像(ぶつぞう)−飛鳥仏から円空へ日本の木彫仏1000年」(会期:平成29年4月8日〜6月4日)の開催が明らかになり、時期もほとんど同じであることもわかりました。ポスター、チラシで内容が明らかになってくると、自館の展覧会準備をしながら、この二つの展覧会で出展される仏像が気にかかるようになってきます。

 

 さらに驚いたのが、平成28年度冬にも、著名な芸能人をテーマとした同種の展覧会が重なったとことです。それは、当兵庫県立歴史博物館の特別展「人間国宝桂米朝とその時代」(会期:平成29年 1月28日〜3月20日)と 、三重県総合博物館の企画展「植木等と昭和の時代」 (会期:平成29年1月21日〜3月20日)です。この展覧会の重なりを知ったとき、かつて同僚であったS学芸員が担当したある展覧会が脳裏に浮かびました。それは平成4年4月25日〜6月14日に当館で開催した、特別展「湯の聖と俗と−風呂と温泉の文化−」です。

 この図録の総論に、上方落語「地獄(じごく)八景(ばっけい)亡者戯(もうじゃのたわむれ)」に、「風呂念仏」というのがでてくるということが書かれています。このおどろおどろしい演題の落語はどのようなものか知りたくなり、調べてみると、「特選!!米朝落語全集」というCDが発売されており、その第15巻が「地獄八景亡者戯」で、1時間を超える大作です。聞いてみると米朝さんの語り口の面白さにはまり、DVDが出るとそれも購入しました。そのS学芸員が、カラオケで必ず歌っていたのが植木等さんの曲で、この二つの情景が重なりました。閑話休題。

 

 さて、奈良国立博物館と大阪市立美術館の特別展の初日は4月8日(土)、当館の特別展の初日は4月22日(土)で、4月8日は当館の展覧会の収荷の狭間の1日となり、この二館の展覧会を拝見して「当館の規模はとてもかなわない」と思いました。

 もし、当館の仏像展を秋に開催していたらと、考えてみますと、東京国立博物館「興福寺中金堂再建記念特別展 運慶」(会期:平成29年9月26日〜11月26日)、福井県立若狭歴史博物館「リニューアル3週年特別展 知られざるみほとけ〜中世若狭の仏像〜」(会期:平成29年9月30日〜10月29日)、さらには島根県立古代出雲歴史博物館「企画展示 島根の仏像−平安時代のほとけ・人・祈り」(会期:平成29年10月20日〜12月4日)と、さらに3つの仏像展と重なることになります。

 

 仏像ブームの中にあることが、仏像展の重なりの理由と思いますが、全国の仏像ファン、研究者の方々に、忙しいながらも充実した1年になるよう、当館の仏像展もその役割の一端を担えたらと思います。