入学式

<日時>

2019年4月8日(月)

<式辞>

 若草萌ゆる岡辺に、陽があふれる今日、この佳き日に、めでたく入学を許可されました新入生の皆さん、入学、誠におめでとうございます。
 本日、ここに、ご来賓、保護者の皆様のご臨席をたまわり、兵庫県立伊川谷高等学校、「第44回入学式」を挙行できますことは、本校にとりまして、この上ない喜びでございます。厚く御礼申し上げます。

 さて、新入生の皆さん、皆さんは十数年前に、この世に生を受けられました。産んでいただき、育てていただき、きょう、この佳き日を迎えることができました。
 一人では決して生きていくことができない赤ん坊の時から、いや、お腹の中にいた時から、あふれんばかりの愛情を注ぎ、ほかの何よりも優先して皆さんのことを考え育て、そして、きょうの高等学校入学まで導いてくれた、皆さんの保護者の方への「感謝」を決して忘れないでください。この世のすべては、「命」あってのこと、この世のステージに立たせてくださったこと以上に、「有り難い」ことなど、存在しないのです。いただいた「命」・・・大切に大切に、懸命に生きてください。
 きょうの、この、皆さんの新たな出発、人生の大きな節目で、是非、今一度、この点に思いをめぐらせてみてください。自然と、「ありがとう」の気持ちがわき上がってくるはずです。 皆さんそれぞれの伝え方で構いません。二度とない、きょうという日に、是非、その気持ちを、保護者の方に伝えてください。

 皆さんは、一月前、「複数志願選抜入試」直前の、緊張感漂う中、それぞれに特色を持ち活気あふれ、愛情深くエネルギーに満ちあふれた先生方がおられる素晴らしい中学校を卒業、義務教育課程を修了されました。いよいよ本日より、高等学校教育をスタートされます。
 これまで以上に、自らとしっかり向き合い対話し、自分はいったい何がしたいのか、どんな道を歩んでいくのか、そして、そのためには、何を学び獲得し、どんな高校生活を送らなければならないのかを、深く考えた日々を過ごすことが求められます。
 高校生活3年間は、おおよそ千日あります。
 「鍛錬千日之行、勝負一瞬之行」という、私の好きなことばがあります。「鍛錬」とは、厳しい訓練や修養を積んで、心身・技能を立派にすること、「勝負」は、勝ち負けの勝負です。「ぎょう」は「行う」という文字を書き、行為・実践という意味となります。
 「鍛錬千日之行、勝負一瞬之行」・・・「勝負」、「結果」は、「一瞬」で決まることが実に多い。しかし、大切なことは、その「一瞬」に徹底的にこだわり、日々の「鍛錬」を、千日もの長きにわたり、粘り強く継続することである、ということだと私は解釈しています。
 皆さんが突破された高校入試の一日、それまで学んでこられた時間に比べれば、「一瞬」だったのではないでしょうか。野球部員がバッターボックスに立ち、ピッチャーから投げられた百数十キロのボールに、手を出すか出さないか・・・何千何万回もの素振りにバッティング練習の末の「一瞬」の判断・・・「結果」は、この「一瞬」の判断で決まってしまうのです。
 「無常だな・・・」と、感じるかも知れません。しかしそうではありません。たとえ「結果」はどうであれ、高い「志」をもち、この「一瞬」にこだわり、自らを高めるために「鍛錬」を積むこと、そのこと自体が、最も尊いのです。
 なぜなら、皆さん、「人生の目的」とは何でしょうか? 私たちは、いったい何を目的に生きていくのでしょうか?
 私は、「人生の目的」は、幸いにも両親からいただけた「命」に深く感謝し、この「命」が尽きるまで「魂」を磨き自らを高め、たとえ少しでも、世のため人のために役立つよう努めていく、これこそが「人生の目的」だと考えています。
 千日もの「鍛錬」を継続することで高められた「人格・人間力」を見たとき、勝ち・負け、成功・失敗などという結果は、こだわるに値しないもとなるのです。
 さらに言えば、厳しい「鍛錬」を継続しながら物事に果敢に挑戦し、失敗・挫折を経験した人こそ、確かなる人格の向上が図られていると言って間違いないのです。

 これから3年間、学業に学校行事、部活動など、様々な活動が展開されていきます。時には、つらい時があるかも知れません。そんな時は、自らを高める絶好のチャンス、心の「研磨剤・磨き砂」だと考え、「結果」を恐れず、突破していってください。そのひたむきな日々の取組・努力こそが、保護者の方、中学校、小学校の先生方をはじめとする、これまでお世話になった方々への、「恩に報いる唯一の道」でもあるのです。
 「一人で頑張れ」、ということでは決してありません。優しく頼もしい先輩が、また、情熱と愛情に満ちた先生が、そして何より、奇跡的な確率で、今日、同じ伊川谷高等学校へ入学した仲間がいます。
 この伝統ある「チーム伊川谷」が、一丸となって取り組めば、突破できないことなど、絶対にありません。校訓である「自主」「協同」の意味・精神を徐々に感じ、実践しながら、何事も真正面から、正々堂々と向き合っていってください。

 保護者の皆様、本日は、誠におめでとうございます。立派に成長したお子様の「晴れ姿」をご覧になられ、感慨も一入のことと存じます。心よりお慶び申し上げます。
 私たちは、本日、かけがえのない、大切なお子様をお預かりいたしました。全職員、最善を尽くし、3年後には、それぞれの、大きな夢に向かって元気に、胸を張り旅立ち、皆様から「伊川谷高等学校に入学させてよかった!」と喜んでいでいただけるよう、高等学校教育を生涯の生業とした、プロの教育者としての誇りにかけ、誠心誠意取り組んでまいります。

 結びに、本日ご出席いただきました、ご来賓、保護者の皆様に改めてお礼申し上げますとともに、今後一層のご支援、ご協力をお願い申し上げまして、「式辞」といたします。

平成31年4月8日

兵庫県立伊川谷高等学校校長 川崎 芳徳

 

<入学式の様子>