第一話 挫折

 家に帰るやいなやベッドに倒れ込んだ。

 入学当初、親兄弟の反対を押し切り、部活のために学校近くのアパートに下宿し始めて1年半が過ぎようとしている。毎日毎日、頭の中はバレーボール一色で、そのために学校に通っていると言っていいほどだった。
 これまで早朝練習も放課後も欠席などしたことは一度もなかった。確かに、背は決して高いほうではないし秀でた才能なんてものもなかったが、そこは努力で何とかしようと必死に頑張ってきた。

 6月に3年生が引退してから今までに大会は2回あった。しかし、俺は一度たりとも試合に出たことはない。
 最初の夏の大会のときは、自分の力が他のメンバーに比べて劣っているという自覚もあったし、すぐに納得できた。それと同時にこれからの練習にもますます気合が入り、10月の大会までに指摘された欠点を克服するつもりで頑張った。
 練習試合にも使ってもらえるようになってきた10月、レギュラーメンバーの発表に臨んだとき、これまでひたすら走ってきた自分にも自信はあったし、今度こそはと思っていた。

 このときの悔しさは相当のものであり、自分がレギュラーになるのは無理なんじゃないかと半ば諦めたりもした。だが、その悔しさをバネに、11月に行われる次の大会までもう一度がんばる決心をしたのである。
 それからというもの、自分のできる限りの努力をしてきたつもりだ。監督も、「最近上手くなったな」と、俺の努力を認めてくれたようにも思えた。なのに--------。

 一体どれくらい呆然としていただろう。手元のマンガをめくってみても内容などわかるはずもなく、腹が減ってはいるものの何かを食べる気にもならない。

 そのとき、にわかに携帯が鳴った。
 「・・・潤平・・・・?」
 聞きなれた声だった。

                                                    第2話に続く

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