第1章

真夏の夜の幻影 (1/15)

作者:CROW

「ほんとに静かでいいねぇ・・・・・・。」
俺こと斎藤は青い海を眺めながら一人ポツンと声をこぼす・・・・・。
「やっぱきて正解だったろ?」後ろから来た結城が声をかけてくる。
りゅう(東堂)ーー、がんばってテント建ててなーーー。」
「無茶言うなこら!!」「いいからはよせい!!」
少し離れたところでは杉沼と狩りを終えた瓜生と、東堂の声が聞こえてくる。
俺達はいま、夏休み恒例のキャンプに来ている。
そう、結城の提案により、最近幽霊騒ぎのある無人島に・・・・。
この無人島は淡路島のさらに南にいったところにあるのだが・・・・。
近場のわりに海がきれいなため観光地としては人気が出てきていて、
近年の夏は特に人が多く浜辺も賑わっていたらしい。
が、その幽霊騒ぎのせいですっかり人が寄り付かなくなったらしい・・・。
で、その幽霊騒ぎというのがまた島の中央の温泉近くの森からすすりなく女の声が
聞こえるとか、森の中で恐ろしい獣の影を見たとかそういう代物である。
だが、実際被害が出ているらしく、何人か行方不明者も出ているらしい。
そんな噂のせいでフェリーは人を乗せることも無くただ波に揺られる日々を過ごし、
そこで働いている者は毎日が死活問題というありさまだった。
そんなときだった・・・俺達がこの島へ訪れたのは・・・・。
人が訪れたのは久しぶりらしくやたらと待遇が良かった・・・・。
だが、やはりその船員達の顔から不安の色は隠せなかった・・・・。
彼らも生活に困っているものの、やはり恐れているのだ、この島を・・・。
で、今俺達はジャンケンで負けた東堂一人にテントを建てさせ、結城に飯を作ってもらい、
瓜生は一人狩りへでかけ杉沼は俺と遊んでいる。
そんなのどかな風景だった・・・・。
そう、夕食までは・・・・。
「なぁ結城、このワニ肉どうする?」仮厨房の中から瓜生の声が聞こえてくる、
「そうだな、やっぱり焼くか。」続いて聞こえる結城の声。
「いや、やっぱ生で食うべきやろ?」「やめろよ・・・・。」
無論俺は楽しく会話を聞いている。
「わいが狩ってきたんやからわいに調理法を選ぶ権利がある!!」
「何をいう!貴様に選択権などないわ!!!」
(おいおい・・・・・)さすがにこけそうになるものの俺はぐっと我慢し会話の成り行きを見守る。
ついには会話ではなくお互いの主義・思想の話しになり始めた。
(さすがにそろそろとめようかな?)
「はーいメシだぞーーー。」結城の声のもと全員で食卓につく。
その眼の前に出て来たのは、もちろん瓜生が狩ってきたワニ肉である・・・・。
しかもゆでられたり、焼かれていたり、しゃぶしゃぶにされていたり、
刺し身だったりとまさにワニずくめだった・・・。
俺こと瓜生的にはこんなところへ来たのだからせっかくだから食べ物も生で食うべきだと思うが・・・・・。
「なぁ、野菜ないん?」さすがに普通の人間の斎藤は不満を漏らす。
「ほんまや!米は?」杉沼までもまともな事をいいだす。
「無い。つーかお前ら重いから食料は自給自足しようって言っただろーが!」
結城がワニ肉を食いながら知られざる真実を述べてしまった・・・。
そう、俺達は非常食以外の食べ物を一切持って来ていない。
完全なサバイバルゲームなのだ。
幸い今日、俺が島を回って見て来た様子では野生動物はたくさんいるようで、
俺が多少狩っても動物保護条約には引っ掛からないだろう・・・。
「と、いうことは食料調達係のうっぴーが野菜もってこなあかんな。」
「ん?別に俺はいらんで。」なんと結城はともかく東堂まで俺の意見に賛同してくれた。
「っというか、杉沼わがまま言うな。食べたかったら自分で拾え。」
「そうそうたくさん(斎藤)を見てみろ。黙々とワニステーキ毒キノコ仕立てを食ってるやろ?」
結城に言われてぱっと横を見ると斎藤は平然とステーキを食べていた。
「つーかマジで毒いり?」「うん、でもたくさんには効かないみたいだな。」
斎藤の問いに平然と言い切る結城。
「あーなんか俺もうつかれたわー、トイレいってくらぁ。」
そう言って東堂は深い闇の森の中へと入っていった。
そしてどのくらいたったろうか?東堂がトイレへと消えてしばらくして、
すっかりワニ料理も消えたときだった・・・。
「ギャーーーーーーーーーース!!!!!!」
品の無い叫び声が森はおろかテントの近くにいる俺達の耳まで聞こえた。
「今のりゅう(東堂)だよな?」寝る準備の手を止めて斎藤が俺に尋ねる。
「まぁ、そうやろーなぁ。」適当に返すが斎藤と結城は動き始める。
「探しに行くかな?」そう言って結城と斎藤にうながされて俺と杉沼もフル武装で
東堂の消えた闇の森の中へと入っていった・・・・。
月明かりは見守ることをやめ、すこしづつ雲のなかへと消えて行く・・・・。

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