ガラパゴス諸島旅行記

兵庫県立御影高等学校       安岡 久志

旅程:8/7関西国際空港 → 8/7デトロイト(合衆国) → マイアミ(合衆国,1泊) →
     8/8キト(エクアドルの首都,2泊)
   8/9  キト周辺の観光(終日)・・・オタバロ,コタカチ,カルデロン
   8/10 キト → (グアヤギル経由,エクアドルの商業都市) → バルトラ島
                                 (ガラパゴス諸島)
   8/10 午後アンバサダ?号へ乗船(3泊4日のクルーズ)
        バルトラ島 → ノースセイモア島 → 8/11エスパニョラ島スワレス岬 →
          エスパニョラ島ガーナビーチ → 8/12サンタ・クルス島ダーウイン研究所 →
          サンタ・クルス島ドラゴンヒル → 8/13バルトラ島
     8/13キト(1泊) → 8/14マイアミ(1泊) → 8/15デトロイト →
   8/16夕方 関西国際空港着

 さる8月7日(木)〜16(土)に10日間の日程でガラパゴス諸島に行ってきました。
メンバーは約20名でChECの会員でもある西宮市教育センターの小林先生はじめ,主に
西宮の小・中学校の先生方やプロのカメラマンの方なども同行されました。
 当日は15:25関空発デトロイト行のノースウエスト航空に搭乗し,約13時間の飛行
の後,デトロイトに到着。さらに合衆国時間の18:40に同じくノースウエストでマイア
ミへ。この間約3時間。13時間の時差と移動の疲れのため,その日はマイアミで一泊。一
同マイアミは,夜特に治安が悪いということで空港内のホテルでおとなしく休養。
 翌8月8日(金)(勿論合衆国時間)夕方,エクアドルのサエタ航空に搭乗。南米への出
発ロビーに入った途端,アメリカでありながら,スペイン語の表示やアナウンスが主流とな
り, 「セニョール,セニョリータ」の世界。表示も読めず取り敢えずエクアドルの首都キトへの
飛行機に搭乗。機内では,スペイン語と英語で乗務員は対応しますが,舌を巻いたような英
語をしゃべるので全く英語には聞こえずお手上げ状態。さらには,「water,please」というと,
受け取ったコップから泡が出ている。気圧が低いのかなと思ったがそんなことはないのでワ
ケワカメ状態(後で炭酸水とわかったが・・・)。言葉のわからぬ不安な約4時間の飛行の
後,無事にエクアドルの首都キトに21:30(マイアミより時間は1時間遅れている)到
着。但し,ここは標高2800m,日本でいえば立山の雄山の上に突然着陸したようなもの,
機内を出るや否や肌寒さを感じたが,思ったよりは寒くなく,それぞれ高山病にかからぬよ
う静かに走らずゆっくりと移動。
 空港を出ると,日本でもお会いしたエクアドル人のヒメナさんが迎えに来ていただいて一
同一安心。ついでにヒメナさんのことを紹介すると日本語,英語,スペイン語,フランス語,
そしてインディオの言葉の5カ国語の会話ができ,旦那さんは駐日の外交官と申分なし。そ
のヒメナさんの案内で専用バスに乗り,ホテルへと向かう。まだ,ガラパゴス諸島は,そこ
から西へ約1000(km)の赤道上,まだ着いていない。  翌日8月9日(土)はキト周辺の観光に終始。この観光ではキトのスペイン風のたたずま
いの中を抜け,一路北方のオタバロの土曜市に専用バスで向かう。途中,ピチンチャ山
(4825m),カヤンベ山(5800m)や乾いた台地の間をすり抜け雄大な景色を満喫。
更には,赤道を南半球側から横断したり,インバブラ山(4600m)とサンパブロ湖にま
つわるインディオの伝説を聞きながら目的地に向かう。
 車窓から見ると,路上や周辺の畑にインディオの姿を目にするようになる。まさに,教科
書やテレビで見た通り赤や青の民族衣裳を身にまとっている。背中に薪を背負っている者,
牛乳を絞ったバケツをもって歩いている者など。さらに,注目すべきことは,小学生の低学
年程の子供達が熱心に手伝いをしている。日本では考えられない光景である。また,このイ
ンディオの小さな子供達が何と可愛いことか。日本の小学生のように塾に通うこともなく,
懸命に働いているのである。彼らの吹くオカリナやケーナの美しい響きが今でも耳元に聞こ
えて来そうである。ただ,貧しいことにはかわりないが,その純真さに心を打たれるものが
ある。
 そうこうしているうちにやっと,オタバロに到着。何と賑やかなまちであろうか,市場に
は,衣料品,工芸品,食料品など多数の市がたち,主に欧米の観光客で賑わっていた。私も
西宮の中学校の先生といっしょにバスから降りて買い物にいざ出発。あらかじめホテルで現
地通貨スークレ(砂糖という意味らしい)に換金。1us$=約4000S/.。純毛のアルパカのセ
ーターで25000〜40000スークレ,何と安いことか。日本円で900〜1200円ぐらい。缶ジュース
8本で20000円くらいのセーターが買えるのである。言葉が通じないため電卓を持ちながら価
格の交渉をするのだが,値切るのが申し訳ないぐらいの安さである。我々のグループは手に一
杯の買い物をして約2時間の買い物を楽しみました。当初の予定時間をオーバーしてしまいま
したが今までの移動疲れを一気に吹き飛ばすような楽しい買い物になったのです。この後,皮
製品で有名なコタカチの町や,お祭り一色のパン人形で有名なカルデロンを訪れ楽しませてい
ただきました。
 さて,いよいよ8月10日(日)はガラパゴス諸島への出発の日です。朝7:00キトのホ
テルを出発して8:30発のグアヤギル経由バルトラ島(ガラパゴス諸島)行きのタメ航空で
約2時間30分の飛行です。
 そもそもこのガラパゴス諸島というのはどこにあるのかというとエクアドル(南米大陸の北
西部太平洋に面しています。)から約1000(km)の沖合いにあり,赤道を挟んで約20の島々
からできています。この諸島の成因はかって色々な説があったのですが,日本列島のように大
陸の一部であったのではなく,ハワイ諸島と同じ様に海底火山の吹き出しによって生じたと推
測され,南米大陸とは地殻の上では全く関係がないのです。しかし,そこで生息する動植物は
南米大陸のそれを起源とするが,この諸島で独特の進化を遂げたのです。諸島の成立は約40
0万年だといわれています。
 人類が最初にこの諸島に足を踏みいれたのは,1535年伝道師フレイ・トマス・ベルラン
ガといわれていますが,ちなみにチャールズ・ダーウィンがビーグル号でこの諸島を訪れたの
はそれから300年後の1835年になります。この諸島には当初70万頭ものゾウガメが生
息してたと言われています(そのことから「ガラパゴス」とういのはスペイン語のカメという
意味です)。しかし,これだけいたゾウガメも保護はされているものの現在1万6千頭あまり
何と減少してしまったことでしょうか。この原因は,ゾウガメの肉が非常に美味であったゆえ
に,ベルランガ以降この諸島を訪れた海賊や捕鯨船団が食料として乱獲したことによります。
 いよいよ空港のあるバルトラ島に到着です。乾季(5〜12月)であるというのにあいにく
の雨です。ことしはエルニーニョの影響で天候不純で雨が多いそうです。約1時間ほど手続き
で時間を取られてしまいましたが,この後,バスに5分程乗車してこの島の港に向かいました。
そうそう書き忘れましたが,ガラパゴス国立公園へ入るためには80ドルも取られてしまいます。
ちなみにキトの空港使用料が25ドルで関空よりも高い(1ドル=120円,関空約2600円)。
外国人にとっては負担の多い公園です。
 港に着くといよいよ我々が乗船するアンバサダ?号(2573トン)が停泊しています。港には
グンカンドリやカッショクペリカンなどが上空を旋回しています。我々はさっそく約20名乗
りのボートに乗り,沖合いのアンバサダ?号に乗船です。  いよいよガラパゴス諸島3泊4日のクルーズのはじまりです。私にとってこの船はまさに豪
華客船の感があり,キャビンは2名ですが,バス,トイレつき,船内はすべて冷房が完備され,
売店,喫茶室,バー,プール,ダンス・映画のできるホール,それにゴージャスな食堂と大変
満足のいく船でした。乗船後,今後の予定についての説明があり,乗客はさまざまな国の人達
で構成されていました。乗客は,約20名毎に班分けがされ,各班に1名国立公園のレンジャ
ーがつき,各島の案内をしていただきます。但し,説明がスペイン語,英語,フランス語のど
れかでしかできませんので,前に登場したヒメナさんが日本語で説明していただきました。こ
れらの班の名称は,諸島に生息する動物の名前がつけられており我々の班はアルバトロス班
(アホオウドリ)です。
 いよいよ,船は最初の訪問地ノースセイモア島に向かいす。雨はやみ,空はまだ少し曇って
いますが快適な船旅です。いよいよ16:30上陸開始です。各班ごとにボートに分乗し,こ
こはドライランディングです。島の沖合いではグンカンドリ,カッショクペリカン,アカハシ
ネッタイチョウ,クロアジサシなどが飛び交い,上陸地点には,アシカ,アカメカモメ,ウミ
イグアナなどがお出迎えです。
 この島には,実は2種のグンカンドリ(アメリカグンカンドリ,オオグンカンドリ)とアオ
アシカツオドリの多数のコロニーがあり,現在繁殖の真っ盛りです。オスのグンカンドリは,
大きな真っ赤な喉袋を潅木の上で膨らまし,上空を旋回するメスを誘っています。また,オス
のアオアシカツオドリは,ヒューと鳴くや否やメスの前で嘴と尾を空に向かってまっすぐ伸ば
し,小さな枝を口に加え,足をゆっくりとした動作で高く上げメスの回りを回りだします。メ
スはそれに答えるようにグァーと鳴きブービーダンスをしています(booby=カツオドリ)。ど
の鳥,いやどの生き物も人がいようがどうしようが全くお構いなし。逃げる素振りさえ見せま
せん。天敵がいないと生物はここまで変わってしまうのかと驚嘆するばかりです。動植物に触
れたりするのは禁止されていますが,鳥でも手で捕まえようと思えば手の届く範囲に居ます。
他の地域では考えられないような光景が目の前で展開されています。日が沈み行くのも忘れて,
まじかでさまざまな生物と対面していると,その生物達の気持ちが伝わって来そうです。そう
そう書き忘れてしまいましたが,上陸すると決められた観察路をレンジャーの指示に従って行
動しなければなりませんので個人の勝手な行動は厳禁です。そして,レンジャーからは,動植
物についての解説と自然保護の大切さを学びます。日も沈みかけ約2時間の観察後,班ごとに
ボートでアンバサダ?号に戻りました。
 アンバサダ?号は,その日の深夜,次の訪問地エスパニョラ島に向かって出発。エスパニュ
ラ島は,ガラパゴス諸島の南東端にあり,最も長くカギ状の嘴をもったマネシツグミや赤い体
色をしたウミイグアナが有名な島です。
 8月11日7:30エスパニュラ島スワレス岬にドライランデイング。小雨のぱらつく生憎
の天気でしたが,カメラのシャッターがきれない程ではない。上陸するや否や,アシカの親子
と赤いウミイグアナのお出迎え。しばらくすると,マネシツグミが,飛ばないで走って我々の
方に駆け寄ってくる。まさに,好奇心の固まりのような鳥です。マネシツグミは,群れている
ようで常に数羽で行動し,餌を探しているようです。
 早速,スワレス岬の観察です。海岸部は,火山島でもあるので玄武岩質の溶岩が露出してい
ます。そこには多数の赤いウミイグアナやガラパゴスオオイワガニが張り付いています。特に
ウミイグアナは,ピクリともせず,体を寄せ合って気持ちよさそうに日向ぼっこを決め込んで
います。ちょと,内陸に入ると,潅木と下草が茂っており,数種のダーウインフィンチやガラ
パゴスカナリヤが飛び交っています。ここのダーウインフィンチは,どちらかといえば地上に
降りて採食しているものが多いようで,地上フィンチの方が多かったように思います。また,
観察路上の至る所では,ノースセイモア島と同じ様にアオアシカツオドリがブービーダンスを
踊っています,平坦な下草のあるところでは,ガラパゴスアホウドリの雌雄がお互いに鳴き合
いながら営巣しています。さらには,スワレス岬に面した海岸部の岩の多いところでは,マス
クカツオドリの雌雄が営巣しています。ここでも全く逃げる様子は有りません。
 ガラパゴスアホウドリについてレンジャーのハイメさんの話によると,営巣の時期だけ,こ
のエスパニョラ島に来るそうです。生まれた雛が,営巣のためこの島に戻って来るのは,巣立
ちから7年程の期間が必要であるそうです。スワレス岬を望む岩場に立つと,上空は,多数の
グンカンドリ,アカメカモメ,ガラパゴスアホウドリ,マスクカツオドリが飛び交い,時折り,
長いを尾をはためかせてアカハシネッタイチョウが横切って飛んでいきます。おそらくアカハ
シネッタイチョウもこの島の断崖絶壁に営巣していると思われます。
 それはそうと,今まで全くゾウガメに触れていませんが,実は野生のままで生息しているゾ
ウガメのフィールドへは,我々は立ち入ることができません。従って,この島にもいるのです
がそれを見ることはできないのです。見ることが出来るのは,サンタ・クルス島のダーウィン
研究所で保護されているゾウガメのみを見ることができます。
 この後,スワレス岬の雄大なブローホールを臨む頃から少し雨足が強くなってきました。少々
足早に観察路を上陸地点に戻っていると小雨降る中,丁度20m程の岩の上に何やら猛禽類ら
しきものが止っています。早速,双眼鏡で覗いてみると,基部が黄色で先端が黒い嘴,足指は
黄色で,まさにガラパゴスノスリが目の前に止っています。慌てて400mmの望遠レンズを
つけてカシャカシャとシャターを押しました。しかし,何か変なのです。ガラパゴスノスリの
回りには,多数のマスクカツオドリとアオアシカツオドリが営巣しているのに全く逃げる様子
がないのです。その猛禽と一番近いカツオドリの距離は,数m程です。日本なら猛禽を見たカ
モはすぐ逃げてしまうのに・・・。やはり,ここはガラパゴス,普通の感覚では理解できない。
まあ,そんなことも束の間,ガラパゴスノスリにお会いできただけで私は上機嫌です。また,
足早に上陸地点まで急ぎました。
 一端,アンバサダ?号に引き上げて,昼食をとり,午後からはエスパニュラ島の東端,ガーナ
ビーチにウエットランディングです。また,ここの砂浜は,多数のアシカがハーレムを作ってお
り,アシカと一緒に泳ぐこともできます。早速,ビーチで泳げるよう準備を整え,いざ上陸です。
ウエットランディングといっても膝の当たりまで海水に漬かる程度で,泳いで上陸する程のこと
ではありません。ビーチには多数のアシカが,トド状態。気持ちよさそうにお昼寝です。このあ
まりにものんびりしている様子に時間をも忘れてしまいそうです。しかし,次の瞬間肝を冷やす
出来事もありました。私がハーレム内の雄に近づき過ぎたため,雄に数メートル追いかけられま
した。雄は異様に体が大きく,おでこが出っ張っています。オーオーと吠えながら追いかけられ
ると気分がいいわけありません。腰は抜けたりしませんが,一瞬のスリルを味わいました。ただ,
子供のアシカは,好奇心が非常に強く,ビーチで泳いでいた我々のグループの美しい(?)女性
軍にモーチャージ。初めは驚いていた彼女らも,しまいには楽しくアシカと遊んでいました。
 一方,ビーチの内陸寄りのところでは,相も変らず,マネシツグミが飛ばすに,群れて走り
まわっています。ある時などは数羽でヨウガントカゲを追い回しています。また,ダーウイン
フィンチは,スワレス岬と同じく,主に黒味を帯びた地上フィンチが潅木やビーチの間を飛び
回り,あるいは走り周って餌を取っています。ここでもヒトは全くお構いなしです。
上空に目を向けると,島の内陸部では,猛禽類が2羽旋回しています(おそらくガラパゴスノ
スリ)。ビーチ近くの海面上空では,グンカンドリ(識別は不能)が旋回し,海面には,カッ
ショクペリカンが浮かんでいます。
まさに時間が止っているようです。ただ,一度だけアシカのハーレムにグンカンドリとカッシ
ョクペリカンが多数押し寄せて来たことがありました。おそらくはっきりしたことは判りませ
んが,生まれたばかりのアシカのヘソの尾を餌にしようとしたのか,アシカの赤ん坊を直接襲
おうとしたのか判りませんが,一時ハーレムが騒然としました。グンカンドリとカッショクペ
リカンは,日本でいえばカラス,トビ,カモメと同じほど貪欲ですのでこういうことが起こっ
たのかも知れません。あれやこれやで14:00から17:00までこのビーチで楽しませて
もらいました。また,我々のグループの別動隊は,沖合いでシュノーケリングを楽しみ,様々
な熱帯魚に会うことができたそうです。
 さて,次の日,ガラパゴスでの3日目,いよいよ,サンタ・クルス島ダーウィン研究所のあ
るプエルトアヨラに上陸です。この日もエルニーニョの影響か,朝から小雨混じりの曇り空で
す。いつも通り,アンンバサダ?号からボートに乗り,プエルトアヨラに上陸です。さすがに
ここは研究所があることもあって,普通の町とさほど変りません。車も走っています。ホテル
やたくさんの土産物屋,喫茶店等ガラパゴスに来て初めて,動物よりも人の匂いを感じます。
上陸すると,バスが迎えに来てくれていましたので一路ダーウィン研究所に向かいます。途中,
バスから降りて研究所内を歩くと,ウチワサボテン,ハシラサボテンなどが林立し,背の低い
潅木の間をダーウィンフィンチやマネシツグミなどが飛び回っています。
 研究所では,いよいよゾウガメに対面です。ゾウガメは主要16島のうち11の島にに分布し
ていますが(15亜種),数が少なくなっているため野生のゾウガメは見ることができません。
そこで,この研究所では,各島から産卵した卵を捕獲してここで孵化させています。そして約5
年飼育した後島に返しているそうです。ともかくも,ここでは大から小のゾウガメを見ることが
できます。レンジャーのハイメさんよりゾウガメの特徴や生息状況の説明を受けた後,ゾウガメ
に対面です。ここには,ピンタ島の最後のゾウガメであるロンサムジョージ(このカメが死ぬと
ピンタ島の亜種は悲しいことですが全滅してしまいます。)や甲羅の形の違うゾウガメが飼われ
ています。説明によると,数を増やすためにメスが多数孵化するように温度調整をしているそう
です。というのは,29(℃)にするとメスが,28(℃)ではオスが生まれるそうです。また,ある
1頭の首をすぼめたゾウガメにハイメさんが近づき,首に触れないように掌で温もりを伝えるとヘ
ビ使いのように首が伸びてくるのです。 あれやこれやで,ゾウガメとの対面を楽しんだ後,約2
時間のフリーの時間ができましたので,早速,港の周辺にあるお土産屋に直行です。我々のグルー
プも三々五々お土産屋に繰り出し,アオアシカツオドリ,グンカンドリ,ゾウガメなどの絵のつい
たTシャツや絵葉書を買い求めたり,島にある郵便局から知り合いに絵葉書を出したり,また,港
の周辺のウミイグアナ,オオアオサギ,ヨウガンカモメやダイビングするアオアシカツオドリの写
真をとったり,遠くに望まれる海とスカレシアの樹林帯の雄大な景色を楽しむなど有意義な時間を
過ごしました。
 さて,午後からはガラパゴスの最後の訪問地であるサンタ・クルス島の北側にあるドラゴンヒル
に船で向かいました。ここには美しい砂浜やラグーン,そして,林立するサボテン類とスカレシヤ,
ちょうど天候も回復し素晴らしい景色のよい場所です。上陸すると砂浜にはウミイグアナやカッシ
ョクペリカン,ミヤコドリが我々を出迎え,ラグーンには,1羽のカモと1羽のチュウヤクシギら
しき鳥,数羽のコチドリらしき鳥が採食をしています。残念ながらオオフラミンゴに出会うことは
できませんでしたが,ラグーンの美しい景色に魅了されてしまいました。
 さらに,潅木の中をドラゴンヒルの方に向かって登って行くと,リクイグアの巣が地面に掘られ
ていたり,マネシツグミ,ミゾハシカッコウが美しいさえずりを披露しています。しばらく歩くと
ハイメさんが,数mさきの下草の中を指差しました。まさに初登場のリクイグアナです。体色はウ
ミイグアナより黄色味が強く,ウミイグアナより大きく見えます。一同カメラを構え,一斉にシャ
ッターの音が当たりに響き渡りますが,リクイグアナは,それを全く関知せずひたすらじっとして
います。この後,ドラゴンヒルの見える丘の上に登り,南側のサンタ・クルス島のスカレシアの樹
林帯を望み,北側に目を向けると青々とした海面が広がり,我々が乗船しているアンバサダ?号が
白い船体を浮かべています。ここちよい風を受けながら,腰を下ろし,ペットボトルの水を飲みな
がら見るこの光景は,本当に来て良かったという気分に浸らせてくれます。
 この丘からは,もう一度上陸地点の砂浜に戻りましたが,砂浜では,まだ,日没まで時間が有り
ましたので,海水浴や生物の観察など心行くまで最後の訪問地の自然を堪能しました。船に戻ると,
皆少し悲し気ではありましたが,この日のディナーでは3日間の思い出に華が咲き,その後の船内
での音楽鑑賞会やダンスパーティでも盛上がったそうです(ちなみに私はダンスパーティには照れ
臭くて参加していません。日本人の男性諸氏は殆ど参加しなかったようです)。
 翌日の朝,目がさめるとアンバサダ?号は,空港のあるバルトラ島の沖合いに停泊していました。
朝食を済ませ,10時の下船に間に合うように荷作りを始めました。十数本に及ぶフィルムが,こ
こでの思い出を記録しています。これだけは無くさないようにそっとザックの奥に仕舞い込みまし
た。
 バルトラ島の港からバスで空港に向かい,再び,タメ航空でエクアドルの首都キトに戻ります。
1時間ほど空港で待った後,飛行機に搭乗しましたが,機内から見えるガラパゴスの島々は来る時
と何ら変わることなく,悠久の時の流れの中に身を任せていました。

p.s
 この後,夕方からヒメナさんとご主人,その友人二人の案内でキトの市街地を見学し,エクアド
ル料理に舌鼓をうち今回のすべての旅程は終了しました。翌日から往路と同じ2日がかり,飛行機
の搭乗時間延べ23時間の地獄の帰路でした。

フィールドノート

アカハシネッタイチョウ(Phaethon aethereus)
コアシナガウミツバメ(Oceanites gracilis)
クロアジサシ(Anous stolidus)
カッショクペリカン(Pelecanus occidentalis)
オオグンカンドリ(Fregata minor)
アメリカグンカンドリ(Fregata magnificens)
アオアシカツオドリ(Sula nebouxii)
ガラパゴスマネシツグミ(エスパニョラ,サンタクルス島2亜種)(Nesomimus spp.)
マスクカツオドリ(Sula dactylatra)
ガラパゴスアホウドリ(Diomedea irrorata)
アカメカモメ(エンビカモメ)(Creagrus furcatus)
ヨウガンカモメ(Larus fuliginosus)
アオメバト(ガラパゴスバト)(Zenaida galapagoensis)
オオアオサギ(Ardea herodias)
ガラパゴスササゴイ(Butorides sundevalli)
ミヤコドリ(Haematopus ostralegus)
ガラパゴスカナリア(キイロアメリカムシクイ)(Dendroica petechia)
ガラパゴスヒタキモドキ(Myiarchus magnirostris)
ガラパゴスノスリ(Buteo galapagoensis)
ミズハシカッコウ(Crotophaga sulcirostris)
ダーウィンフィンチ(主に地上フィンチ)(スズメ目ホオジロ科)
ミズナギドリsp
チュシャクシギsp
カモsp
コチドリsp
ウミイグアナ
ヨウガントカゲ
リクイグアナ
ガラパゴスアシカ
ガラパゴスオオイワガニ
ガラパゴスゾウガメ


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