ツクシ(スギナ) 08.04.08




畦道そぞろ歩き



 4月に入り、南但馬自然学校も随分暖かくなりました。浴室棟のウメは、花の盛りを過ぎて既に散り始めていますが、今でもいい香りを漂わせています。それでは、里の様子はどうでしょうか。南但馬自然学校を下りて、田んぼの周りを散策してみました。

 まず目に付いたのは、ツクシです。畦(あぜ)の上にずら〜っと行儀(ぎょうぎ)よく並んだ姿はかわいらしいものです。まだ春も早い時季から芽を出していたのでしょう、丈はグンと伸びて、中には卸(お)ろしたての鉛筆ほどに成長したものもあります。

 ツクシの側では、みずみずしい葉を茂らせたキツネノカミソリが、名前の由来(ゆらい)となった切れ味シャープな葉っぱに朝露を光らせています。この葉は、不思議なことに花を咲かせる夏にはすっかり姿を消してしまいます。

 他にも、大きく成長したフキノトウ。赤い葉っぱを積み重ねたヒメオドリコソウ。田んぼを埋め尽くすタネツケバナなど、辺りは春でいっぱいです。

 草花に目を奪われていると、「ガサッ、ゴソッ」田んぼの畦に美しい錦をまとったキジが現れました。顔の周りにある大きく垂れ下がった赤いトサカは、繁殖期(はんしょくき)を迎えたオスのシンボルです。日向(ひなた)の畦では、柔らかな春の陽に包まれたキジバトがゆったりと餌を探していました。

 山際(やまぎわ)まで足を進めると、岩肌にへばりつき、花を咲かせたスミレが右へ左へと風に揺れています。ショウジョウバカマがピンク色の花をパアッと開かせた、山へ続く斜面の上に、下を向いて一輪だけ咲いたキンキマメザクラの花と目が合うと、「もう春だよ」と語りかけられているような不思議な気分にさせられます。隣の枝では、明日にでも開きそうなつぼみが、同じように下を向きながら、花の話にそっと聞き耳を立てていました。

文責 増田 克也

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