キツネノカミソリ 07.08.28




田んぼの畦道見て歩き



 間もなく9月を迎えようかというのに、まだまだ暑い日が続いています。田んぼの稲は黄色く色づき始めているところもあり、着実に「実りの秋」を迎えようとしています。では、他の草花はどうでしょう。そこで、田んぼの周辺を見て回ることにしました。

 まず、目に飛び込んできたのは鮮烈なサーモンピンクの花を朝日に輝かせる“キツネノカミソリ”です。ここには、これから開くつぼみや、既に花を終え、雌しべをふくらませたものなど、いろいろな姿を見ることができました。キツネノカミソリというこの名前の由来は、春に出る葉っぱの形がカミソリに似ていることからきているようですが、花に顔を近づけてのぞき込むと、なかなかどうして花びらもカミソリのようにシャープな形をしています。この畦も一月後には、「キツネノカミソリ」からバトンを受けた「キツネのかんざし(ヒガンバナ)」に彩られることでしょう。

 田んぼの畦から山裾に目をやると、ナデシコ科の多年草、“フシグロセンノウ”が揺れています。薄暗い山中で遠目に見るこの花は、木漏れ日に間違えそうになるほど艶やかです。見事に咲いた花の隣には、朝日を浴びて徐々に花びらを開かせようとしているつぼみもありました。

 フシグロセンノウが咲く近くの林では、大きな実がいくつもぶら下がっていました。当初、「これはカラスウリの実だ」と思っていましたが、今、カラスウリは花の時季ですので、この大きな実はいくらなんでも成長が早すぎます。気になって調べてみると、大きく切れ込んだ葉っぱが決め手となり、“モミジカラスウリ”だと判明しました。来年は是非、夜に開くレースのような白い花を見てみたいものです。

 少し寄り道をしてしまいました。さあ、田んぼに戻りましょう。こちらにはカーネーションに似た花が咲いています。これは秋の七草に数えられる“カワラナデシコ”です。サンサンと降り注ぐ太陽の光を浴びて田んぼの畦から突き出した姿は、「ここに咲いているぞ」と自己アピールをしているようです。この花を上から見ると、線香花火が最後にパッと放った閃光のようです。

 まだ開ききらない“ヒヨドリバナ”にはベニシジミが何度も通い、その近くではかわいらしいベルをいくつも付けた“ソバナ”が風に揺れています。植物たちは厳しい残暑の中でも、しっかり秋に向かっているようですね。最後に“お月見だんご”のようにつぼみを積み上げた“ツルボ”の花を尻目に、容赦なく照りつける頭上の太陽を見上げて早々に退散しました。 

文責 増田 克也
 
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