

ニホンヒキガエル(幼体) 06.06.27
上陸開始
以前、この「自然のページ」でニホンヒキガエルの産卵の様子を紹介しましたが、その卵からオタマジャクシがかえり、そして子ガエルへと変態し上陸しました。
3ヶ月間を水の中で過ごした彼らは、湧き出るように一斉に上陸します。今年もその様子を見たいと何度か産卵場所に通いましたが、残念なことに見逃してしまいました。それでも辺りを丹念に探してみると、数匹の子ガエルを見つけることができました。
上の写真がその子ガエルですが、見れば見るほど不思議な色と形をしています。色は一見すると黒色ですが、よく見ると金粉を散りばめたような模様をしています。形も私たちがよく見かける、アマガエルやトノサマガエルとは違って、一風変わった形をしていますね。
他のカエルとの決定的な違いは移動の方法です。カエルと言えば、“ぴょんぴょん”とジャンプするものですが、ニホンヒキガエルは前足と後足を交互に動かし“のそのそ”と歩きます。驚いたことに、変態したばかりの子ガエルも親ガエルと同じように歩きます。では、子ガエルのユーモラスな“のそのそ歩き”を見てください。
次に横顔を見てみましょう。まだ幼い姿をしていますが、後ろ足の指などは頑丈にできていますね。これも親譲りです。目は青みがかった大きなまんまる目です。この吸い込まれそうな目を見つめていると、映画で登場する宇宙人のようにも見えてきます。後で写真をよく見ると、彼の目玉に私の姿が映っていました。彼には私がどんな風に見えていたのでしょうか。
私は3年前の6月に、今回と同じ産卵場所で、数え切れないほど多くの子ガエルが、上陸している最中に出くわしたことがあります。黒い小さなものが、列をなして少しずつ陸にはい上がってきます。ふと見ると、他にも列を作っているものがありました。アリです。アリが上陸したばかりの子ガエルたちを片っ端から引きずっていきます。
卵からかえり、水中で生活したオタマジャクシの時代も、イモリやヤゴ等の危険から逃れながら3ヶ月間を過ごし、やっとの思いで子ガエルになって、陸にはい上がるやいなやアリに連れ去られるとは・・・
彼らは「食べられるために生まれてきた」とは決して思いたくありませんが、1度の産卵で1万個以上という大量の産卵数は、他の生物に食べられてしまうことを見越して、ニホンヒキガエルたちが自然から割り当てられた数なのでしょう。また、子ガエルたちは食べられることによって、他の生物の生命を支えているとも言えるのです。
体長7oの子ガエル。手のひらに乗せるとこんなにも小さく見えます。この子ガエルが朝来山で大きく成長し、再びこの産卵場所に戻ってこられる確率は限りなく低いものですが、「またここで会おうな」とエールを送らずにはいられない私でした。
文責 増田 克也
