広葉樹林のアカショウビン


 梅雨が終わりに近づいた夕方のこと、大木の横枝にとまるアカショウビンに再会しました。バタバタと降る大粒(おおつぶ)の雨に煙(けむ)る森に、2度、3度と声を響(ひび)かせると奥へ消えていきました。
 
 数日後の早朝、先日アカショウビンに出会った森に出向くと、今度は比較的(ひかくてき)低い場所に後ろ向きにとまり、尾羽を上下させては、水色をした腰(こし)のワンポイントをしっかり見せてくれませた。
 やはりアカショウビンは、広葉樹の森に映える野鳥です。前回の出会いは、本校近くの人工林でしたので、感激は一入(ひとしお)です。

 しかし、お似合いの広葉樹林も日が高くなると、木漏(こも)れ日のスポットライトが邪魔(じゃま)をして観察しづらく、加えてこの時季には葉が茂り、見通せる場所がほとんどありません。こんな悪条件でも「なんとか見たい!」と思わせるほど魅力的(みりょくてき)なのがアカショウビンです。

 ブナの枝にアカショウビンがやって来ました。この個体は、羽に白斑(はくはん)が見られるので、先ほど、腰のワンポイントを見せてくれたものとは別個体です。
 写真を拡大すると、丸で囲んだ肩(かた)の辺りと後頭部、そして矢印で示した喉(のど)の辺りに白い部分が見てとれます。喉にある針のような突起(とっき)は、ストロー状になっており、中に新しく生えてきた羽が入っている、筆毛(ひつもう)と呼ばれるものです。

 しばらく大人しくしていたアカショウビンが、突然、小声で鳴くと羽を広げ始めました。どうやら周辺にいると思われるパートナーに合図を送っているようです。
 その後、一度だけ近くにとまり写真を撮らせてくれました。それにしても立派なくちばしです。くちばしの先端に付いた土が、先ほどまで獲物(えもの)を狩(か)っていたことを物語っています。

 「パシャパシャ」シャッター音に気付いたように飛び立ち、なんと私の真上にとまりました。アカショウビンを下から見上げるなんてこれまでにない経験です。機材の重みを額で受け止め、エビぞりになって撮ったうちの1コマに、どうにか見られるものがあり、タイトルの写真としました。
 広葉樹の葉を透過(とうか)した光に包まれたアカショウビンは、やはり美しいものでしたが、下から見上げた姿はどことなく幼く感じたのはどういう訳でしょうか。

 早春からアカショウビンを育んできた広葉樹林は、今、エゾハルゼミの大合唱に包まれ、鳥から虫へ、主役の交代を告げているようでした。

文責 増田 克也


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