ASARUT ・ COMPAILA
アサルト ・ コンパイラ

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第八章

「THE POINT! 妖精はまだいるか?」

  あっ、なんか、ぼーぅっと影のようなものが出てきた。こいつがスタッパーだな。
「それ、どうゆうことかしら? あの洞窟がどうなったってのよ?」
「別にどうにもなってないさ、外見はな…」
「じゃあ、妖精達はどう…なのよ……」
「さあな。敵対してなければどうもしないが、立てついていたら、皆殺しだな。」
  まさに、絶句! である。
 つまり、事の要点はこうだ。俺達が知っている限りでは、その洞窟はもともと邪気の発生源で、度々魔物や怪物と呼ばれるものを生み出していたという話だ。しかし二十年ほど前か…人間と妖精が手を結び、その発生源である洞窟の入り口という入り口、すべてに結界を施して、害を及ぼすものたちが外の世界に出て来れないようにしたということだ。だが、その妖精達がこいつらの手に落ちたとなると、どこかの結界が破られる危険性があるという事だ。そうなると、人間達に危険が及ぶということだ。
「まさか…、もう結界やぶちゃった訳?」
「いや、今出てきてるのは私を含め、上級のもの数名だけだ。結界を破ると言っても、結界が消えうせた訳ではないからな。まだまだ効力は残っている。他の上級のものが出て来れる様になるには、あと三日はかかるだろうな。」
「そう、それを聞いて安心したわ。で、こんな大それた事を仕出かすからには、なにか企んでるんでしょ。」
「しかり。我々は一つの提案をして回っている。」
「提案? なんなのよそれは?」
「要旨はこうだ。我々の代表とお前達の代表が戦いを行い、勝った方が洞窟の治安維持をするという……」
「はい、却下。」
  は? なんでいきなり…
「ど、どういうことだ? この申し出は、お前らにとって不満はあるまい。」
「いーえ。あるわ。でも、お互いの代表って事は、双方ともに最強同士の戦いになるわ。そうしたらお互い無傷ではすまないでしょ。じゃあ、そんな状況下で、もし、下っ端の奴らが暴走したらどうやって食い止める訳? ま、これはあなた達が負けたときの話しだけどね… 結局のところ、こっちが不利だってことには変わらないわ。」
「なるほどな、そうも取れるが……、しかしながら、私がどうこうできる問題でもない。上の奴らが考えたことだからな。ま、一応そう伝えておくが、そうそう、この話とは別だが、お前達に関連することで別の仲間が何やら不穏な動きを見せている。どうしても洞窟に来るというなら注意していた方が良いだろう。」
「なによそれ? 気になるじゃない。どうゆうことよ?」
「そんなことは知らん。ただ気になってた事だから忠告しておいてやっただけだ。どうせ、この申し出を断るのだろう? ならばそれなりの覚悟はすべきだと思うがな… ま、この作戦はもう発動している。現地につけばわかることだが……、これについての返答は後日しよう。」
  で、きびすをかえしてさっさと帰ろうとする……
「ちょおっと待ちなさいよ。」
「なにか用か?」
「結局、最初のナーガはなんだったのよ?」
「ふっ… デモンストレーションだ。いかすだろ?」
 …………
 と、言って、消え去った。
「ぷぷぷ、デモンストレーションだ、だってー。」
「笑わせますね。今どきそんなことする人っているんですねー。」
 まさに。あいつ、一見ダンディーで頭の切れる奴風だけど、実は結構気分屋なのかもしれないな… 別に聞いても無いのに、ルビアさんに忠告までわざわざしていったし。
「なんか、どんどんややこしくなっていくわねえ…」
「ルビアさんがややこしくしてるんじゃないですか。余計な事に首突っ込んで…」
「そ、そんなことはないわ……たぶん…」
  一難さったとおもったら百難転がり落ちてくる感じだなあ…
「ねえ、お姉ちゃん。あいつがわざわざ出向いて来たってことは、あっちはまだ手勢が少ないって事でしょ? じゃあ今のうちにこそこそって行って叩き潰すってのはどうかしら?」
「………へ? あ、ああ、そうね。」
「…………ちょっと、何ぼうっとしてるのよ?」
「え、そんなことないわよ。」
  まったく。さっきからルビアさんは何か考えごとをしてるような顔をしてるけど… その顔がまた、へんな顔なのだ。意識が飛んでるようなうつろな目をしてるのだ。ちょっと深刻そうだが……
「ルビアさん。どうかなされたんですか?なにか悩みでも有るんですか?」
  ナッシュ! いきなり聞くかー? こういったのは重傷だからしばらくほっといたほうがいいんじゃないか?
「いやね、ちょっと気になる事があってね。…あの洞窟にね、ちょっと知り合いがいるのよ。まあ、さっきのネクロマンサーを見る限り、あんまりメチャクチャやろうって感じじゃなかったから心配無いと思うんだけど……。」
 なるほど。そうゆうことなら憂うつにもなるだろうな。
「そうでしたか。…あっ、では少し前のお手紙はその方からの?」
「まぁね。」
「なんだよ? 手紙って? ナッシュ、おまえまた隠し事してるだろ。」
「ちっちっち、テリーさん。私は別に隠してた訳じゃありませんよ。」
「じゃあ、どうゆうことなんだよ?」
ただ、公にはしなかった。というだけです。」
「…………。」
「どうかしましたか?」
「なあ、それを、隠してるって言うんじゃないのか?」
「そうなんですか?」
  こいつう……
 知ってていってるなー。おそらく人をおちょくって、遊んでるんだろう。後で、注意しておかないとな。
「でさ、お姉ちゃんの知りあいって……、もしかして、お・と・こ?」
「違うわよ。女よ。」
「なんだ。面白くない。せっかくお姉ちゃんにも春が来たのかな、って思ったのに。」
 春か………。お前には一生来んだろうな…
「ところで、ルビアさんは意中の方はいらっしゃらないんですか?」
  ををを? いきなり何を聞くんだナッシュ? お前がそんな立ち入った事を聞くとはな……、奇想天外とはこのことだな。
「今はちょっとね。…二十歳ぐらいの頃かしら、その時にはいたのよ。好きな人。でもね、その人、殺されたの。私と同じ外交の仕事をしてた、平和協定の締結時に某国の過激派に斬られたの。私の目の前で……。それ以来どうしても好きな人は作れない。また、こんなのが起こると怖いから…… まあ、過去の話よ。」
 ……………は。
 なんかシリアス…。
  だ、だれか、この状況をなんとかしてくれぇ!
「あ、ああ、あちらに居られるお友達ってどんな方なんで…すか?」
 ナイス! でも、ナッシュ。おまえ動揺してるのが声に表れてるぞ…
「へ…、あああ、ど、洞窟に居る子でしょ?」
 ルビアさん……。話をした張本人のあんたも動揺しててどうするんだ?
「どっから話したらいいものか……」
「どっからでもいいですよ。」
  ………そうゆう問題ではないと思うんだがな、ナッシュ。
「そ、そうねー。どっからでも良いって言われても……、よけいに困るわ。まあ、取り合えず、船に乗ってからにしましょうよ。」
  なーんと、俺達はもう海岸まで到達していたのだ。で、ここはとある港町。
「うーん。潮の匂い。あっ、海の塩分って肌に悪いのよねー。なんかクリームでも塗ろうかなぁ。」
「アリス。そんなへちゃむくれ顔で、そんなこと言っても説得力がないわね。」
「な? へちゃむくれですって? いくらお姉ちゃんでも暴言が過ぎるわ! いくら自分が美人だからって、美人だからって……それを棚に上げて…、わああぁぁあん!」
 あっ! アリスが泣いた。
どうやら、自分の姉が絶世の美女であることを否定できないのがくやしいらしい。ルビアさんもあまりのリアクションにビックリしておろおろしている。
「あ、あのね。別にあなたがどうだって事じゃないのよ。それに、ちょっと言いすぎた。ごめんね。ああ、それにね、私より美人のひとは腐るほどいるのよ……」
  いや、それはない。
 俺の人生で、ルビアさんより美人な人は見た事が無い。自分が美人では無いというならそれはアリスへの冒督だ。


 アリスが泣きやんだのは、十分後だった。
「エデューレイザー号っと、………あっ、あった。これだわ、この船よ私達が乗るのは。」
「げっ? でかい………。ていうか、豪華客船だ。」
「さっ、早く乗って。」
「え? いいのかよ。これってすごいやつだぞ?」
「いいの。大丈夫だから。」
  うわー。ドキドキするなー。
 でも、本当にいいのかなあ? 今回の船の旅賃はルビアさんが出してるんだぞ。俺達四人分。すっげーお金になるんじゃ……。
 だが、理由はすぐにわかったが…
「おい、これって、違法じゃないのか?」
「そんなことないでしょ。みんなやってることよ。それに、今とがめられてない事からして、これは合法になるのよ!」
  やけに語意を強めてる所から見ると、どうやらルビアさんもちょっとはドキドキしてるらしい。
 俺達の部屋の前に架かっていた名前は、
《ルビアトレシャーナ外務次官 御一行様》
「おい。これは内容にちょっと偽りが……。」
「いいのよ、半分合ってるから。」
「いやあ…、半分って……、人数を考えると、壱対参で……」
「おだまりっ! これが目には入らんか!」
「へ?」
  ルビアさんが出してきたものは、一枚のカードだった。えー、なになに?「セレスタ第一級外務次官 ルビア・トレシャーナ」とかいてある。
「これってルビアさんの免状ですよね?」
「そ、これがあれば、大概の所はフリーパスなの。ゲートだってたやすく通れるわ。ま、外交官ってのは、重要な任務を受けて各地をまわる人だからね。国際公務員ってわけ。だから、世界共通で、すばやく移動できるようにしてくれてるって寸法よ。」
「ああ! それはいけない事だろーが。公用で使うものを私用で使ったりして…」
「別にいいのよ。漁船での船旅になっても。」
  ……………
「へっへっへ。合いも変わらず、お代官様は悪ですなあ。」
「ふふ、そちこそ悪者よのう。ものは使いよう……、と言うではないか。」
はっはっはっはー!」(二人そろって)
  ということで、丸く収まった。まあ、収めてはいけないと言う声も飛んできそうだが、この際だ、気にしないでおこう。
「あの、ルビアさん。話しがずれちゃったんですけど…」
「あっ、そうね。じゃあ、話しましょうか。」
 そのころアリスは眠りこけていた。泣き疲れてだ。こどもか、お前は!
「そう、あれは、三、四年ほど前の話よ。私がはじめてあそこの洞窟に行った時の事だったわ。あの時はさすがにびびったわね、次から次へと見たことの無い怪物が現われるんだもの。それで、もうどうしようもないほどやられちゃって、もうダメかなって思った時、彼女に助けられたのよ。助けられたって言っても、彼女が結界を作って攻撃を防いでくれて、怪物があきらめてどっかに行っちゃうのを待ってただけなんだけど…。彼女の名前は、イフリート・J・ビーレディア。そうねー、背丈はアリスぐらい。水色の髪の毛をしてたわ。それで、彼女の家に連れていってもらって傷の手当てをしてもらったんだけど、実は彼女、洞窟に結界を張る妖精の一族だったのよ。それ以来、あっちに行った時は道案内をお願いしてもらってたの。まあ、今となっては私も結構、道とかを覚えてきたんだけどね。」
 なるほど。
「ところで、そいつは強いのか?」
「それがねー、防御結界とか封印結界とか、結界を作るのは得意なんだけど、いかんせん攻撃がねー。あえていうなら最弱ね。度胸はあるんだけど。華奢な体してるしねえ、一撃くらったら粉々って感じかしら。」
「なるほど、それで心配なさっていたんですか。」
「まあ、あの子は自分から向かっていくような性格じゃないからね、大丈夫だとおもうけど。なんにせよ、彼女達、妖精達がどんな状況かでこっちの行動は決まってくるわ。」
「そうですね。今は無事であることを祈りましょう。」
 ふう、なんかややこしくなったなー。ここで逃げておけば問題には巻き込まれないんだが、そんなことをしようものならルビアさんに手討ちにされてしまう。まさに、前門の虎、後門の狼。
 最近、いいことないなあ……。

ASARUT・COMPAILA 完結!


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